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ジュビロ磐田、J2からの逆襲。ハッチンソン新監督に託された「スタイル革命」

2025.02.04

2025注目Jクラブキャンプレポート#3
ジュビロ磐田

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第3回は、ジョン・ハッチンソン新監督の下でJ2から再スタートを切るジュビロ磐田。オーストラリア人指揮官は、鹿児島キャンプで新たなスタイルにチャレンジしている。新チームの挑戦を森記者にレポートしてもらおう。

 1月19日から2月1日まで行われた毎年恒例の鹿児島キャンプ。雪かきから始まった2年前とは対照的に例年以上に暖かい気候に恵まれた日も多かった中、14日間のトレーニングキャンプを打ち上げた。

 最終節までJ1残留という希望をつなぎ止めたものの、最終的にはクラブ4度目のJ2降格という形で幕を閉じた昨シーズン。シーズン終了後に辞任を決断した横内昭展前監督に代わって、自らのフットボールスタイルを「スーパー・アグレッシブ」と形容するオーストラリア出身のジョン・ハッチンソン監督を招聘した。

「主体的なフットボール」を求めた藤田SDがオファー

 「昨シーズンはJ1の戦いの中で、どうしても自分たちが主導権を握れず、相手にボールを与えてしまう時間が多くなってしまった。どうしても守備的になってしまい、そこで耐え切れずに勝ち点を重ねることができなかった。この反省をベースに、守備を構築していくことは大前提ですけど、自分たちがボールを握って、主体性を持ったフットボールを構築していくところを目指そうと。そこからスタートした時にジョン・ハッチンソン監督のスタイルが融合すると思って、オファーを決断しました」

 これは、1月7日に行われた新体制発表記者会見の場で藤田俊哉スポーツダイレクター(以下SD)が述べた言葉だ。昨シーズンは理想と現実の狭間に立たされ、現実的に勝ち点を積み重ねるためには守備的に戦わざるを得なかったのは否めない。しかし、その戦い方を選んでも守備の時間があまりに長過ぎたゆえに、選手たちは守備で疲弊してしまい、試合を通じて安定したパフォーマンスにはつながらなかった。

 そういった検証をもとにハッチンソン新監督を迎えた今季は、J2優勝、そしてJ1昇格という目標達成を大前提に、“新たなジュビロのフットボールを再構築する”シーズンと位置づけている。

 ハッチンソン監督が目指すフットボールはハイリスク・ハイリターンの超攻撃的なスタイルだ。

 攻撃局面ではGKが積極的にプレーに関わることで最終ラインからパスをつないで敵陣へ侵入するところからスタートし、ビルドアップの出口となるボランチやトップ下を経由して、高い位置を取り続けるウイングを起点にスピーディーな攻撃を仕掛けていく。

 相手にボールを奪われた瞬間には、プレッシャーをかけて即時奪回を目指し、守備局面でも昨季のようにリトリート重視で守備ブロックを構えるのではなく、プレッシングがベースとなり、状況によってはCBが高い位置までマンツーマンで相手を捕まえにいく。ハイライン&ハイプレスで高い位置でのボール奪回を目指す超攻撃的なフットボールだ。

 「ジュビロに来るということは非常に大きなチャレンジだということをよくわかっています。昨季はロングボールが多く、シュートが少ないという攻撃スタッツだった背景もあります。このスタイルを変えることは非常に大きなチャレンジで、チームとしてもいい時もあれば、悪い時もあると思っています。ただ私自身、チャレンジすることが非常に好きで、このスタイルを変えたいという話を聞いた時にここで仕事をするのが待ち遠しかったです」

ハッチンソン監督(左/Photo: Ryota Mori)

まずは「リアクションプレス」の原則を植えつける

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Profile

森 亮太

1990年生まれ、静岡県出身。主に静岡県で活動するフリーライター。18年からジュビロ磐田とアスルクラロ沼津の番記者としてサッカー専門新聞”エルゴラッソ”やサッカーダイジェストなど、各媒体へ記事を寄稿している。