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「称号」ではなく「運転免許」。河内一馬が教えるCONMEBOL PROライセンスの実態

2024.05.27

【特集】「欧州」と「日本」は何が違う?知られざる監督ライセンスの背景 #5

日本の制度では20代でトップリーグの指揮を執ったナーゲルスマンのような監督は生まれない?――たびたび議論に上がる監督ライセンスについて、欧州と日本の仕組みの違いやそれぞれのカリキュラムの背後にある理念を紹介。トップレベルの指導者養成で大切なものを一緒に考えてみたい。

第5回は、アルゼンチンでCONMEBOL PROライセンスを取得した河内一馬氏に、南米のサッカーライセンスの仕組みと現地のサッカー監督養成学校での貴重な経験で得たものを共有してもらおう。

 CONMEBOL PROライセンスとは、南米サッカー連盟「CONMEBOL(コンメボル)」が管理するサッカー監督ライセンス制度の最上位ライセンスのことで、私は2020年末にアルゼンチンにて取得しました。アルゼンチンに渡った2018年当初は、アルゼンチンのサッカー監督ライセンスは「ATFA(アタファ)=アルゼンチンサッカー指導者協会」が管理している状態でしたが、私がライセンススクールの2年目を終えるタイミングで、南米全土において監督ライセンス制度が統一化され、名称はもとより、制度やカリキュラムが変更されました。

 この記事の中で、私はCONMEBOLライセンスについて解説する任務を与えられたわけですが、いくつか事前にことわっておきたいことがあります。1つは上記した通り、私はちょうどアルゼンチンのライセンス制度が変更されるタイミングで現地にいましたので、その当時の様子を伝えることはできますが、一方で切り替わりのタイミングということもあり、制度が整い切っていない状態だったのではないかと容易に想像がつきます。

 加えて、2020年といえば、思い出すのも少々億劫ですが、コロナ・ウィルスが世界中に感染を拡大させた1年目の年です。アルゼンチンは世界で最も長くロックダウン(生活に必要な外出以外は認められない状態)を続けた国としてニュースになりましたが、そのような状態だったので、3年目(最終年)はほとんど全ての授業がオンラインにて行われました。私は15人くらいの同居人がほぼ全員実家に帰った家の中で、母国に帰れなくなったベネズエラ人とメキシコ人の女の子と3人でロックダウンの大半を過ごしましたが、男女比1:2の数的不利、また2人のラテン系テンション(料理しながら歌ってるし、なんか勝手に照明ピンクに変えちゃうし)に苦しめられながら、“アルゼンチンで”オンライン授業を受け続けるという苦行を達成したわけですが、その話は長くなるのでこの辺にしておきます。

 話を戻すと、つまり私の例はイレギュラーであるということです。それから3年の月日が経った今、もう少し制度が整えられているのではないかと思いますので、制度に対する「正確性」という意味ではあまり自信がありませんが、とはいえCONMEBOL PROを保持している日本人も多くないと思いますので、私が提供できる情報を、実体験をもとに書いていければと思います。

「順番待ち」はなく、誰でも取得可能

 CONMEBOLライセンスは、1年目に「CとB」、2年目に「A」、3年目に「PRO」という順番で取得をしていきます。……

Profile

河内 一馬

1992年生まれ、東京都出身。18歳で選手としてのキャリアを終えたのち指導者の道へ。国内でのコーチ経験を経て、23歳の時にアジアとヨーロッパ約15カ国を回りサッカーを視察。その後25歳でアルゼンチンに渡り、現地の監督養成学校に3年間在学、CONMEBOL PRO(南米サッカー連盟最高位)ライセンスを取得。帰国後は鎌倉インターナショナルFCの監督に就任し、同クラブではブランディング責任者も務めている。その他、執筆やNPO法人 love.fútbol Japanで理事を務めるなど、サッカーを軸に多岐にわたる活動を行っている。著書に『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか』。鍼灸師国家資格保持。