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エース離脱の町田を救った「#止めらんねぇ」藤尾翔太。飛躍の要因は“フィジカル改革”

2023.10.22

レンタル選手の現在地2023 #3
藤尾翔太(セレッソ大阪→FC町田ゼルビア)

バル・フットボリスタでも取り上げた「ポストユース問題」。J1でプロ契約した高卒選手がその後どのように試合経験を重ねていくかは、日本サッカーの発展を考える上で大きな課題だ。J2やJ3への期限付き移籍はそれを解決する1つの手段だが、修行先でも厳しい戦いが待っている。試練を乗り越えて活躍する若手選手たちの「現在地」を徹底レポート。第3回は、セレッソ大阪からFC町田ゼルビアにレンタルされている藤尾翔太を取り上げる。

 ゴール前のルーズボールに鋭く反応した藤尾翔太は、体を折りたたみながら強引にシュートに持ち込み、チームの窮地を救った。ヴァンフォーレ甲府に先制された第38節のホームゲームは、この藤尾の同点ゴールをきっかけに「息を吹き返した」(藤尾)町田が前半のうちに逆転に成功。後半は終盤に一度逆転されたが、土壇場に宇野禅斗のゴールで追いついた町田が九死に一生を得る勝ち点1をもぎ取った。

 藤尾にとっての甲府戦は、U-22日本代表の米国遠征出発直前の試合。結果的にケガのため代表の活動からは離脱したが、代表選出時のリリースには「必ずゴールを決める」と記していたため、“有言実行”のゴール奪取だった。

甲府戦でのゴールシーン

 エリキが大ケガにより長期離脱を強いられて以降、チームの勝ち点獲得を左右する存在として藤尾は君臨してきた。エリキが初めてリーグ戦の先発メンバーから外れた第32節モンテディオ山形戦では2得点の大活躍。またエリキが長期離脱する前に対戦した当時2位のジュビロ磐田との上位対決でも2本のPK奪取に貢献し、チームを勝利に導いている。特に1本目のPK奪取に繋がるボックス内でのドリブル突破は、U-22代表のチームメートである鈴木海音とブラジル人CBリカルド・グラッサの間を抜いていった形。当時の衝撃度は大きく、どんなに屈強なDFでも藤尾を止められない状況から、SNS上では「#藤尾無双」「#藤尾止められんねぇ」などのハッシュタグが踊った。

2ゴールを挙げた山形戦のハイライト動画

 第38節終了時点の得点数は「8」。昨季の徳島ヴォルティスで記録した10得点も射程内に入った。エリキが離脱以降、勝ち点獲得のペースを落としている町田だが、むしろ藤尾の覚醒がなければ、もっと“J1昇格ロード”は苦戦していたに違いない。このようにエリキなきチームでエース級の活躍を果たしている藤尾。しかし、加入当初から順風満帆のシーズンを過ごしてきたわけではない。

「使いものになるとは言いがたかった」からのスタート

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Profile

郡司 聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。