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生まれ変わった福井ユナイテッド。磐田を迎えて親善試合開催の意義

2019.07.22

福井からJを目指す「ユナイテッド」

 7月14日、福井県からJリーグを目指す「福井ユナイテッドFC」が、J1のジュビロ磐田を迎えて、親善試合「ハピネスマッチFUKUI」を開催した。

 福井ユナイテッドは現在、北信越リーグに所属している。前身のサウルコス福井を運営していた「福井にJリーグチームをつくる会」の経営難による解散後に、運営を引き継ぐために作られたクラブだ。その際に、ユニフォームカラーを緑から、日本海をイメージする青に変更。エンブレムは一般公募により、「f」と「井」をイメージしたシンプルでスタイリッシュなデザインを採用。ロゴの形が福井県の形に似せてあり、団結を意味する「ユナイテッド」の名の通り、“オール福井”の団結を表現している。

 対戦相手のジュビロ磐田は前日に主力メンバーがJ1の公式戦を行ったため、この日は控えメンバーが中心だったが、元日本代表FW大久保嘉人、ウズベキスタン代表MFムサエフなど経験豊富な選手が出場した。序盤に固さが見られた福井ユナイテッドは、16分に大久保嘉人にゴールを決められて先制を許す。その後も控えメンバー中心ながらJ1を戦う磐田に押され気味だったが、30分以降になると慣れてきた福井が試合を優勢に進め、36分にコーナーキックからキャプテンのDF橋本真人が同点ゴールを決めると、38分にはDF木村健佑のパスから、サイドバックの木村魁斗が逆転ゴール。41分にはカウンターからMF石塚功志も加点。後半はメンバーを大きく入れ替えた磐田にペースを握られるも、守備陣が粘り、後半はスコアレスで終了。試合は福井ユナイテッドが3-1でジュビロ磐田に勝利した。

 会場には2,712人と、J3の平均を上回る来場者数を記録した。試合前は大久保を始めJ1の選手への歓声も多かったが、福井のチャンスには会場が大きく沸き上がり、自然に福井ユナイテッドを応援する空気になった。相手がJ1ということもあり、普段は500人程度だという観客数の5倍に上る観客が訪れたが、やはり地元チームのひとつひとつのプレーには心が動かされていた様子だった。

 試合終了後にはゴール裏からメインスタンドまで観客とのハイタッチが行われ、多くの子供たちが選手と触れ合っていた。多くの地方ではJリーグクラブが存在しなかった90年代は、公式戦の地方開催がJリーグを味わう貴重な機会だったが、地方開催が希少になった現在では、こうした親善試合はJリーグの体感と、地元クラブの認知の意味で、取り組みの重要さを感じさせられる。

「J1クラブを迎えることで新たな刺激を」

 会場となったテクノポート福井では、90年代に毎年1試合Jリーグの公式戦が開催されており、ジュビロ磐田、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスなどがホームゲームを開催していた。2000年代に入るとJ2の試合が開催されたが、2014年3月29日のツエーゲン金沢対YSCC横浜戦を最後に、Jリーグ公式戦は開催されていない。そんな中で行われた「ハピネスマッチFUKUI」では、グッズショップ、スタジアムグルメ、キックターゲットなどが設けられ、J3の公式戦に近い規模での運営体制となり、普段Jリーグを味わうことができない地元福井の人々にとっては貴重な体験の機会となった。

 GMを務める服部順一さんは、FC東京で10年務めた後に、2006年にデンソーサッカー部の休部によってクラブチーム化されたFC刈谷の設立に携わり、FC岐阜、V・ファーレン長崎を経て、2019年1月から福井ユナイテッドFCのGMとなった。

 ハピネスマッチの開催について、服部さんは「福井ユナイテッドはJFLではなく、Jリーグを目指すクラブ。Jリーグを目指す上で、選手たち、スタッフ、県民などの意識を上げていくために、実際にJ1のチームを呼んで試合することで、体感してもらうようにと考えた。現状、長年北信越リーグにとどまり、大勝し続けているため、若干県民にも飽きが見られる状況。J1クラブを迎えることで、新たな刺激を与えたい」と試合前に語った。

 クラブの運営体制が変わって間もないため、資金が限られる今では、新たな施策は限られているという。たとえばチームバスや自動販売機のラッピングは前身のサウルコス福井時代のままなど、今後の課題も多い。しかし、6月には、eスポーツチームを設立し、ウイニングイレブン部門で茨城で行われる国民体育大会の県予選出場も予定している。今後はテクノポート福井以外での試合開催、県内の様々なスポーツとの連携も深めていく構想もあるという。

 「福井県民にとって『自分たちのクラブ』として思っていただきたい」と服部さん。サウルコス福井の経営破綻から生まれ変わった福井ユナイテッドは、エンブレムやeスポーツなど、新しさを取り入れながら、2022年のJ3昇格を目指す。


Photos: Shevkengo

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文化福井ユナイテッド

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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