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お手本にすべきはアビスパ福岡?北中米W杯から始める“バイキング・ロー”、“Wonderwall”の日本版を探す旅

2026.08.09

社会から文化まで!北中米W杯スペシャルコラム#6

W杯の魅力は、ピッチ上の勝敗だけでは語り尽くせない。サッカーを通して見えてくるのは、それぞれの国が抱える文化や社会、歴史、そしてときに政治との関係性だ。世界中の価値観が交差する北中米W杯を、多彩なテーマとともに掘り下げる。“もう一つのワールドカップ”が、そこにある。

第6回では、北中米W杯を盛り上げた“バイキング・ロー”、“Wonderwall”を切り口にノルウェーとイングランドの応援文化を振り返りながら、それらの日本版を生み出せるかどうかについて考える。

 日本時間7月20日朝、極東に住む我われの39日間にわたる寝不足の日々が終わった。

 夜中キックオフの試合を見終わって数時間起きていればまた次の試合が始まる、文字通りサッカー漬けの毎日。こんなに楽しい時間は4年に1度と言わず毎年開催してほしいと願ってしまうが、4年に1度だからこそ大幅な世界の移り変わりを体感できるのも醍醐味だろう。

 今大会は4年前には広く浸透していなかったショート動画の隆盛を実感した。大会中に生まれるネットミーム、是非は問われるが精巧に作られたAI動画、そして各国の応援動画である。手の平の上でピッチ内にとどまらない現地の熱や地元の盛り上がりが再生されていく。

 特によく流れてきたのはオランダの横揺れ応援“Links Rechts”、スコットランドの“バグパイプ行進”、ノルウェーの“バイキング・ロー”、そしてイングランドの“Wonderwall”だ。

オランダの横揺れ応援“Links Rechts”

スコットランドの“バグパイプ行進”

 ああ純粋にうらやましい、なんて楽しそうなんだ。自分たちだってこんな応援がしたい!

 果たして日本でも同じような応援文化やアンセムは生まれるのだろうか?

 そもそもなぜ我われがここまで一体感のある応援を切望するかといえば、普段から孤独を嫌というほど味わっているからだろう。特に海外サッカーファンは、それを痛感しているのではないだろうか。欧州現地にいる人たちは18:45~21:00キックオフなど見やすい時間を中心に観戦ができているから、リアルタイムで喜びを共有しやすい。祖父の代から孫まで一緒にサッカーを見ている家庭も多くある。

 一方、日本は時差がある。我われは目覚まし時計を3:50、3:55、3:58と刻んで設定し眠い目をこすりながら4:00キックオフの試合を見る。睡眠を削りながらサッカーを見るのは一部の覚悟が決まった人間だけで、ここ日本においてはみんなが気軽に見られる時間帯の試合が少ない。当然ながら感情は共有されづらく、なんなら明け方からうるさいと同居人に疎まれる場合すらある。

 日本のサッカーファンも大人しく試合を楽しんでいる人が大多数であるが、世間からは時々「問題行動を起こす人たち」という目で見られることがある。自分たちを正しく理解されないこともまた孤独である。肩身の狭い思いをせず、より多くの人と感情を共有したいと願う気持ちこそが今回の応援文化を考える原動力だ。

アンセムとモチーフが重なった選手発表動画

 SNS上でも“Wonderwall”に代わる日本の歌はないか、という議論は盛り上がり、「老若男女みんなが歌える歌詞」を軸に意見が交わされていた。B’zの“ウルトラソウル”なら掛け声だけでもそろえられる。いや、めでたさと貫禄と外国人ウケを考えたら“マツケンサンバ”ではないか、など。

 しかし、どの歌も素晴らしいのに感情はしっくりこない。

 元は大会主催側が用意したBGMに過ぎなかった“Wonderwall”、結局客席みんなが誰かに促されるでもなく自然発生的に歌い会場全体の雰囲気をジャックした。

イングランドの“Wonderwall”

 歌いやすい歌詞でもない、国民全員に受け入れられるかといえばそれも怪しい。でも、あの歌をみんなで歌う時の抒情的な雰囲気と一体感って何なのだろう?

 先述の応援動画からノルウェーの“バイキング・ロー”、そしてイングランドの“Wonderwall”の2つを例に日本から一体感ある応援や国民的アンセムが生まれるかを考えていく。

 そもそも代表メンバー発表動画の時点から、この両国の熱量は高かった。

 ノルウェーは28年ぶりのW杯出場を国王のハーラル5世自ら祝い、自国の自然あふれる景色と生活様式を中心に展開、さらには選手全員でメイクと衣装を纏い古き時代のバイキング姿に扮した集合写真を発表する。

 一方のイングランドはBGMにビートルズの“Come Together”を採用し、1960年代のアメリカを想起させる映像の中に選手名とサッカー風にアレンジしたバンドモチーフを登場させた。当時ビートルズがアメリカを魅了したようにイングランド代表が今大会を席巻する願いを込めたように見える。

 これらの映像テーマはバイキングとイギリス音楽。奇しくも話題になった応援モチーフと被る。これは偶然でも未来予知でもない。サッカー協会・連盟、代表、サポーターそれぞれの打ち出す「自分たちが何者なのか」を語る手段としての文化が一致していたからだろう。

アンセムとは民族・共同体の履歴書である

……

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Profile

ささゆか

1988年東京生まれ、フェリス女学院大学卒。 外資インフラ広報経験を活かしたマーケティング考察やマスコット情報、サッカーを取り巻く社会問題を中心に執筆・イベント出演など活動中。YouTube「ささゆかチャンネル」では記事の印象とは違う素顔が楽しめる。夢は沢山の海外クラブストアを巡り、世界中のマスコットと会うこと。

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