「水戸の未来を左右する戦い」へ。J1基準が導いた大型補強、その先の融合
水戸ホーリーホック昇竜伝#11
J2の中でも少ないクラブ予算ながら一歩一歩積み上げてきた水戸ホーリーホックは、エンブレムにも刻まれている水戸藩の家紋「三つ葉葵」を囲む竜のようにJ1の舞台へたどり着いた今も、さらに高みを見据えている。困難な挑戦に立ち向かうピッチ内外の舞台裏を、クラブを愛する番記者・佐藤拓也が描き出す。
第11回のテーマは、「水戸ホーリーホックの未来を左右する」(樹森監督)戦いのために準備した補強戦略を分析。J1基準を知ったからこそ、大胆に動いた。経験、サイズ、選手層――百年構想リーグで露呈した課題を埋めるため、クラブ史上最大とも言える大型補強を敢行。しかし、新たな戦力を加えるだけでJ1は戦えない。宮崎キャンプで浮かび上がったのは、「融合」という新たな課題だった。
百年構想リーグで突きつけられた「J1基準」
クラブ創設31年目にして、J2を優勝して、悲願のJ1昇格を果たした水戸ホーリーホック。いよいよ、クラブ初となるJ1リーグに挑む。
シーズン移行により、今年2月から半年間にわたって開催されたJリーグ特別大会「百年構想リーグ」では開幕戦の東京V戦こそ、「J1の強度に圧倒されて」(樹森大介監督)1-3の完敗を喫したものの、その試合で「そこで選手たちはJ1基準を理解して、逃げることなく、向き合ってくれて、次の試合から体現してくれた」と指揮官が振り返るように、徐々にJ1の戦いに慣れていき、ボールを保持しながら攻撃を組み立てていくサッカーを繰り広げながら、順調に勝ち点を重ねていった。第9節鹿島戦から3連勝を挙げるなど、試合を重ねながら自信を手にしていった。
しかし、リーグ後半戦に入ると、水戸の戦い方を分析されて、対策を練られてしまう。さらに強度の高い試合を繰り返したことにより、ケガ人が増えたことに加えて、J1の強烈なアタッカーに対応しきれずに退場者を多く出してしまうなど、苦戦を強いられて、プレーオフラウンドを含めて、6連敗という屈辱的な結果でシーズンを終えた。「チーム力の差」を痛感させられた。
「経験」「サイズ」「層」——課題を埋める大型補強
だからこそ、J1のシーズンに向けて、補強は必須となった。
百年構想リーグ前はJ1のチームがあまり選手の入れ替えを行わなかったため、鳥海芳樹(甲府)、真瀬拓海(仙台)、山下優人(いわき)といったJ2チームの主力選手を中心に補強を敢行して、チームの底上げを図った。それぞれ力を発揮して、チームに貢献したが、それでも半年間J1チームと対戦を続けて、明らかになったのは「個の能力の差」であり、チーム全体の「経験不足」だった。そのため、チーム全体の層を高めるために、J1経験のある選手を中心に8人の新戦力を加える積極的な補強を行った。「彼らは今までの水戸に足りなかった部分をプラスして、チームに還元してくれるはずです」と森直樹FDは期待を口にした。
チームとしての最大の課題として浮かび上がったのは、リーグ最多失点を喫した守備。
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Profile
佐藤 拓也
1977年生まれ。神奈川県出身茨城県在住のフリーライター。04年から水戸ホーリーホックを取材し続けている。『エル・ゴラッソ』で水戸を担当し、有料webサイト『デイリーホーリーホック』でメインライターを務める。
