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【北中米W杯の5つの戦術トレンド】「ボールプレーヤーの復権」:固定配置を超える「関係性」のサッカー

2026.07.07

北中米W杯の5つの戦術トレンド#2

クラブサッカーが戦術の最先端を切り開く一方で、4年に一度のW杯はその潮流を映し出すだけの舞台ではない。選手の組み合わせや準備期間、そして一発勝負ならではの環境は、クラブとは異なる”勝ち方”を生み出していく。では、北中米W杯ではどのような傾向が見られているのか。本特集では5人の識者が、それぞれ最も印象に残った「戦術トレンド」を1つずつピックアップ。5つの視点からW杯の論理を掘り下げる。

2つ目のテーマは「ボールプレーヤーの復権」。全員が走り、守ることが前提となった現代サッカーにおいても、ボールを持って違いを生み出す才能は色あせていない。むしろ北中米W杯では、リオネル・メッシやハメス・ロドリゲスを中心に据えたアルゼンチンやコロンビアが、固定された配置よりも選手同士の関係性を重視した攻撃で存在感を示した。その背景には、固定配置ではなく「関係性=リレーショナル」を重視する発想と、それぞれの国らしさを戦術へ昇華しようとする試みがある。

欧州化の時代に生まれた「多様性」

 北中米W杯におけるトレンドについて考える前に、トレンドとスタンダードについて前提を共有していきたい。トレンドといえば流行、新しいものというニュアンスがサッカー界にはある。

 例えば、フランチェスコ・トッティが蘇らせたゼロトップが一般化したように、戦術の再定義が革命を起こし、気がつけば多くのチームにとってスタンダードになっていく。この流れを理解することがトレンドが何かを考える大きな意味になるのではないだろうか。

 近年で最も顕著な流行は偽SBやサリーダ・ラボルピアーナ(ボランチがCBの間に降りるプレー)であることは言うまでもない。4種年代ですら、この2つの戦術的行為は見かけるようになっているのだから、トレンドからスタンダードになったと言えるポピュラーな事象なのではないだろうか。

 近い将来にスタンダードになっていきそうなトレンドが北中米W杯においてあるか?と観ていると、そこまで新しい何かがW杯で披露されている気配が今のところはない。もしくは、自分が観測できていないというのが正しいのかはわからない。

 スタンダードになるかどうかはおいておくと、猫も杓子も[3-2-5]の時代から、徐々に各チームの色が出てきていることは現代サッカーの流れと合致した大会になっているのではないだろうか。この流れを加速させている要因の1つには、欧州で育った選手たちが各国に散らばっていっているからだろう。世界中が欧州化していく中で、ディアスポラ(元の国家や民族の居住地を離れて暮らすコミュニティ)たちの存在は大きい。異なる文化の融合が多様なサッカーを生み出していると言えるだろう。

 そんな中で、今大会で目を引いたのは「ボールプレーヤー」を中心に据えたアルゼンチンとコロンビアだった。

ハードワーク全盛時代の「ボールプレーヤーの活かし方」

 リオネル・メッシと愉快な仲間たちでW杯を制したアルゼンチンは、まさかの“もう一回”を企んでいる。コロンビアは南米らしいコンビネーションを使ったサッカーで、見事な躍進を遂げている。両チームに共通して言えることはメッシ、ハメス・ロドリゲス、フアン・キンテーロととにかく上手だが、運動量があまりない選手が活躍しているところだ。全員でハードワークが当たり前の時代にボールプレーヤーをどのように組み込んでいるかは、新しい策の参考になるかもしれない。

 両チームのサッカーは欧州の文脈に照らし合わせると、一時期のリバプールの取り組みを思い出させるサッカーになっている。マンチェスター・シティと覇権を争っていた当時のリバプールは、だんだんとマンチェスター・シティのようなサッカーをするようになっていた。しかし、マンチェスター・シティのコピーをするには目の前の選手をおざなりにしすぎることになる。その結果、当時のリバプールはモハメド・サラーの立ち位置を自由にすることで、ポジションチェンジを活発化させていた。サラーの立ち位置を基準に周りの選手の立ち位置が決まっていく策で、リバプール式のポジションチェンジでマンチェスター・シティに対抗した。

 サラーほどの基準点を持たないものの、コロンビアは移動の自由が担保されている。

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Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。

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