FEATURE

PKを止められるのは「基本技術の高さ」と「勘の良さ」をハイブリッドで合わせ持っているGK。南雄太インタビュー(前編)

2026.04.25

【特集】“もう一つのサッカー”PK戦の深層#7

90分で決着がつかなくても、試合は終わらない――2026年の百年構想リーグでJリーグは、リーグ戦としては異例のPK戦導入に踏み切った。W杯過去2大会で日本のベスト8を阻んだ壁。それがPK戦だった。Jリーグの日常に新たな景色が加わったこのタイミングで、“もう一つのサッカー”とも言えるPK戦の深層を多角的に考える。

第7&8回はJリーグ通算666試合出場を誇る南雄太のインタビューをお届けする。プレーヤーとしても1999年のワールドユースでPK戦に勝った実績を持ち、現在は流通経済大柏高校のGKコーチを務め、一昨年度の高校選手権決勝では指導者としてPK戦も経験した日本サッカー界が誇る名守護神が、GKとPKについての思考を巡らせる。

“良いキーパー”と言われるキーパーはPK戦にもちゃんと勝っている

――最初にお伺いしておきたいのですが、PKは運ですか?それとも実力ですか?

 「僕は実力だと思います。もちろん運もありますけど、全部運かと言うとそんなことはなくて、特に世界的にも見ても“良いキーパー”と言われるキーパーは、PK戦にもちゃんと勝っているイメージはあります」

――PK戦で勝ちを持ってこられるキーパーは、どういうところにポイントがあるのでしょうか?

 「いろいろな要素があると思います。もちろんスカウティングで止める場合もありますし、現場の勘やその時のひらめきで止めている場合もありますけど、結局は反応のスピード、シュートストップやセービングの技術が高くないと難しいですし、やっぱりたまたま身体に当たっているわけではなくて、みんなきちっと手に当てに行っているので、キーパーの技術がPKストップにも繋がっていると思います。

 キッカーのレベルが高くなればなるほど、早く動くと逆を取られてしまいますし、最後まである程度我慢しなくてはいけないですけど、我慢した中でもより距離を出せるセービングや、適切な手の出し方が最終的には必要になってくるわけで、だからこそ良いキーパーがPK戦に勝つのも、納得かなと思います」

――今年のJリーグ百年構想リーグにはPK戦が導入されていますが、ここまでのリーグ全体の印象はいかがですか?

 「『PK戦が多いな』と思いました。PK戦があるから無理をしなくなっている部分もあるのかもしれないですね。PK戦で負けても勝点1は獲れるわけで、終盤に勝点3を獲りに行くことに全振りして、前に掛かることはしなくなるでしょうし、PK戦で勝てば勝点2を獲れるので、それなら失点せずにクローズしてという意識がある分、引き分けになりやすいのかもしれませんね」

――実はJ1に関して言うと、6節終了時(※取材時)で58試合のうちの18試合がPK戦になっています。

 「ああ、3分の1ぐらいですね。凄いなあ」

――でも、実は去年も6節終了時の58試合のうち、17試合が引き分けだったんです。

 「へえ。そんなに変わっていないんですね。PK戦があるからそう感じているだけなのかあ」

――僕もPK戦が多い印象があったのですが、数字的にはそれほど変わっていませんでした。

 「なるほど。それだけ引き分けが多いということですね。それは意外でした。たぶんPK戦がなくて、そのまま引き分けだったら、『引き分けが多いな』とは感じないですよね。PK戦があるから『PK戦が多いな』と思っているだけなのか。ただ、1節で6試合ぐらいPK戦のあった節がありましたよね。そういうインパクトが強いのかなあと」

百年構想リーグ開幕前にはJリーグ公式YouTubeチャンネルの座談会にも出演していた南雄太(右から2番目)

ストイチコフが基準になった現役時代のPK対応

――J1百年構想リーグのPK戦には、どういうイメージを持って見ていますか?

 「キッカーの質は一昔前に比べたら相当高くなっているなと感じます。これはプロだけではなくて、育成年代でもそう感じますね。とにかくみんな上手ですよ。蹴る技術もそうですし、狙ったところにキチッと蹴れるとか、そのあたりは日本全体のレベルが上がっていると思います。昔の方がもっとアバウトでしたし、蹴るコースも甘かったですよね。今は『そこに蹴ったら取られちゃうでしょ』みたいなコースにボールが行くことは、だいぶ少ないんじゃないかなと思います。

 よくキーパーも見られていますよね。これは極論ですが、PKはキッカーにゆっくり助走されて、メチャメチャ見られたら、キーパーは早く動けないんです。一歩のステップで、サイドネットに強いボールを蹴れれば、絶対にキーパーは取れません。これは僕の持論です。最後まで蹴るのを待っていては、キーパーはサイドネットまでは届かないんです。

 特に(柏)レイソルでチームメイトだったストイチコフは本当に上手かったです。練習でもPKを外したのは見たことがなかったですね。彼がなぜ上手いかというと、もちろんキーパーも見れますし、逆も取れるんですけど、キーパーが動かなかった時には、サイドネットにとにかく強いボールを蹴れるんですよ。僕はストイチコフとPKの練習をやった時に、『ああ、これは取れないな』と思いました。『これができるんだったら、PKは外さないな』って」

柏レイソル時代のフリスト・ストイチコフ

――凄い選手が基準になっているんですね(笑)。

……

残り:4,286文字/全文:6,477文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!

RANKING