モロッコ代表の躍進は偶然ではない。「ムハンマド6世アカデミー」を軸にした立体的な育成アプローチとは?
TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#23
『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。
第23回は、カタールW杯でベスト4入りしたA代表も、U-20W杯の優勝を筆頭に年代別代表も絶好調のモロッコ代表を支える、「ムハンマド6世アカデミー」を軸にした立体的な育成アプローチに迫る。
多くの才能を輩出してきたアフリカ大陸において、育成の整備を恐ろしい速度で進めているのがモロッコだ。
2025年にチリで開催されたU-20W杯では次々と強豪国を破り、FIFAの大会では初となる優勝を飾った。A代表も結果を残しており、2022年のW杯ではベスト4に進出。開催中のアフリカネーションズカップでも開催国である彼らは優勝候補という下馬評だ。順調に開幕戦でも勝利し、ホームの地で結果を残す準備は十分だ。マンチェスター・ユナイテッドでもプレーし、2022年W杯でチームの躍進を支えたソフィアン・アムラバトは次のようにコメントしている。
「アフリカネーションズカップを楽しみにしています。特にホームでの開催となった今回、我々は優勝を目指しています。モロッコのユニフォームを着る時は、特別な感情でプレーしています」
才能がある若手が多くプレーしていることで知られていたアフリカだが、過去に成功してきた国々において「育成組織」の整備がポイントだったことに疑いの余地はない。その中でも著名なのがガーナのライト・トゥ・ドリームだろう。マンチェスター・ユナイテッドの元スカウトだったトム・バーノンが創立した育成組織は充実したキャリア支援でも知られており、家族が安心してアカデミーに選手を預けやすくなっている。
同様にモロッコにおいても、2009年に開設された王立の育成組織「ムハンマド6世アカデミー」が近年の飛躍を支える基盤となっている。フットボール強化の国家プロジェクトとして1300万ユーロを投資して整えられた充実した設備とインフラは、彼らの育成を支えるだけでなく、国際大会の舞台としても注目を集めている。2030年にはポルトガル、スペインとの共催でW杯の開催も決定しており、ヨーロッパにも近い立地を武器にした彼らがフットボールの世界で存在感を高めていることは明白だ。
国際ユース大会の誘致と欧州との人材交流
A代表の国際大会を開催するインフラを整備しているだけではなく、モロッコが1つの武器にしているのは「育成年代の国際大会」を招聘することだ。
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Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。
