REGULAR

リカルド監督も熱望した柏レイソルのラストピース。小西雄大は恩師の下でJ1の頂点を目指す

2025.08.14

太陽黄焔章 第27回

7月。柏レイソルに新たな実力者が加わった。小西雄大。徳島ヴォルティス時代に4シーズンにわたってリカルド・ロドリゲス監督に師事し、ともにJ2優勝を経験。その後はモンテディオ山形でも才覚を発揮していたレフティは、「J1優勝への意欲」と「サッカー観の合致」を理由に、再び恩師と共闘する道を選択した。柏デビューとなった湘南ベルマーレ戦では、さっそくアシストを記録するなど、周囲からの期待も高まる俊英のいまを、本人の言葉も交えて鈴木潤が綴る。

リカルド監督、小西獲得の経緯を語る

 左サイドでボールを奪った細谷真大が推進力を活かして突破した瞬間、小西雄大は広大な敵陣のスペースへ猛然と駆け上がった。細谷からのパスをフリーで受けた小西は、利き足ではない右足のインサイドキックでゴール前へ折り返す。ファーサイドからゴール前に入った柏の選手は三人。細谷と瀬川祐輔の前を抜けたボールは、大外にいた中川敦瑛が豪快にゴールに突き刺した。柏レイソルにとっては、勝利を決定づける貴重な追加点となった。

 小西が得点場面を振り返る。

 「走っているときから逆サイドのノブ(中川)が見えていたので、それに合わせて入れたんですけど、三人のうちの誰かが触ればゴールというボールを入れました。奥でノブがしっかりと決めてくれたと思います」

 7月25日に、モンテディオ山形から完全移籍で加入したばかりの小西にとっては、この湘南ベルマーレ戦が柏でのJリーグデビュー戦となった。79分から途中出場でピッチに立った小西は、初出場であったにもかかわらず、リカルド・ロドリゲス監督の起用に結果で応えたのである。

 今季の前半戦、原川力、手塚康平、熊坂光希と、ボランチの選手に故障者が相次いだ。しかも手塚と熊坂にいたっては手術を要する大きなケガである。原川には復帰の目処が立っているとはいえ、シーズンを戦い抜くうえでは手薄となったボランチの補強は急務となっていた。

 したがって、まずは小西獲得の経緯を、リカルド・ロドリゲス監督の言葉を用いて説明しておきたい。

 「強化部から提案があった形で話がスタートしました。布部陽功フットボールダイレクターを中心に、強化部がこの夏に獲得でき得る選手の名前をリストアップし、その中に雄大の名前がありました。徳島ヴォルティスで4年間、私は彼とともに戦ってきたので、彼がすぐにチームに適応してくれるだろうと思い、今回の補強ではその部分を加味しました。

 雄大は、私が求める戦術コンセプトをすべて理解しています。攻守において安定した選手で、ボランチとして守備能力、組み立ての能力も高い。試合の展開によってはシャドーでプレーすることもできる。そしてシュートも良いものを持っています。そういった複数の要因から、このタイミングでの補強になりましたが、特に短期間でチームに適応できるであろうというポイントを重要視しました」(リカルド・ロドリゲス監督)

「あのサッカーをもう一度やりたいという正直な気持ちがありました」

……

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Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。

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