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韓国戦、1-0以上の完敗を象徴する「ボランチのシュート0」

2019.12.20

スタッツで振り返るE-1分析#3

韓国の地で開催された「EAFF E-1 サッカー選手権」(E-1選手権)決勝大会。3大会ぶりの東アジア王者を目指した日本代表は、 事実上の“決勝戦”となった韓国戦に敗れ悔しい準優勝に終わった。チーム全体でシュートわずか3本、効果的な攻めを繰り出せなかった要因はどこにあったのか。現地で大会を取材した河治良幸さんにEAFF E-1サッカー選手権 オフィシャルWebブラウザ 「Brave」で更新されるスタッツを交えつつ分析してもらう。

 1-0という結果以上の完敗だった。前半は[4-3-3]の韓国にハイプレッシャーから攻撃で位置的優位を取られた上で、そこから左右のウイングを起点に押し込まれたため、[3-4-2-1]の日本は5バックの時間が長く続く状況となった。

 そうした流れから28分に、大会MVPを獲得したファン・インボムの先制ゴールを許したのは当然の流れだった。むしろバイタルエリアでの韓国のミスに助けられたから、そこまで引っ張れたとも言える。先制されてからもしばらく韓国の優勢は続いたが、後半になり韓国が引いてブロックを作る戦い方に切り替えたことで、日本も高めの位置でボールを持てるようになった。

 しかし、そこから相手を崩してシュートに持ち込むシーンがなく、唯一の打開策は後半スタートから左サイドに投入された相馬勇紀の個での突破からのクロスだった。そうした流れで難なく逃げ切られてしまった日本。この試合を象徴するデータがボランチのシュートだ。

  スタートは田中碧と井手口陽介。62分から井手口に代わって大島僚太が入り、川崎フロンターレのボランチコンビがそろうこととなった。しかし、前半は前半の、後半は後半の問題を抱えたまま、彼らがシュートを記録するシーンは一度も訪れなかった。

“出負け”し持っていかれた前半

 「前半は特に立ち上がり、相手がすごい(圧力を)かけてきて、トゥーロンのブラジルの時もそうだったんですけどそこに対して慣れるまでの時間があって、結果的にその時間に押し込まれて、失点という。やっぱりそのタイムラグというか、そういうものを理解する時間は短くしなきゃいけない」

 そう振り返るのはU-22世代で今回初のA代表を経験した田中碧だ。[3-4-2-1]と[4-3-3]という非対称な関係の両チームにおいて、ボランチが主導権を取っていけるかは生命線になる。韓国の左右のウイングが高く張り、SBのキム・テファンとキム・ジンスも高い位置を取ってきたのに対し、日本はウイングバックの橋岡大樹と遠藤渓太がほとんど低い位置で構える形になった。

 「相手の3トップがいて張ってくる選手もいて少し後手に回るじゃないですけど、5枚が並んでるしまうのはしょうがないことなので。ただ、そこで自分たちが主導権を握られてやるんではなく、いかにしてウイングバックを出して、自分たちがハメに行けるかっていう作業が少し足りなかった」

 そう田中は振り返る。守備でそうした形になっていても攻撃で中盤がボールを持つ間にサイドがポジションを上げ直せればいいが、田中と井手口のところでファン・インボム、ソン・ジョンホにプレッシャーをかけられ、無理な1タッチパスも増えた中でフィニッシュやCKまで持ち込めないままボールを失えば、ボランチの2人も後ろに引っ張られてしまう。

 監督会見で森保一監督は「韓国が圧力を持って激しさ、厳しさで押し込んでくることは予想していた。そこを上回っていけなかった」と語る一方で、本音か建前か、その要因に関して「戦術的に後手を踏んだというふうには思っていません。選手も個々のケアは対応している中で強度が足りなかった」と振り返った。

 しかしながら、パウロ・ベント監督が「日本を完璧に研究していた」と語るように、位置的優位とフィジカル的な圧力の両面でそうした状況を作られたことは明白だ。その中でボランチの選手たちが状況を整理して周囲の選手と共有することができなかった要因として、韓国の強度に“出負け”したまま持っていかれてしまった側面も軽視はできない。

ナ・サンホと激しくマッチアップする橋岡大樹

“クロスしかなかった”後半

 そうした状況がほとんど続いてしまったのが前半なら、後半はブロックを作って縦を切ってくる相手に対して、サイドから相馬がドリブルで仕掛けてクロスを上げるぐらいしか攻略の糸口を見出せなかったことが、ボランチのシュートが0本という数字となって表れた格好だ。強いて挙げる60分に田中が中盤でパスをカットし、そのまま縦にボールを運んでフェイントからバイタル深くまで侵入したシーンは一番惜しかったが、これは意図的な崩しの成果ではなくイレギュラーなチャンスだった。

 「自分たちがどうやって敵のゴールに迫るのかというのが、やっぱりクロスだけになっている。それだけだと正直、運的な要素もあるんで、どうやって相手のペナルティエリアに侵入していくのかっていうのは、もっとチームとして突き詰めきゃいけない」(田中)

 後半は韓国が疲労やリスク管理を見越して意図的に引いた部分はあるにしても、日本がボランチからボールを動かすシチュエーションにはなっていただけに、そこから相馬の推進力を起点に、森島や田中が絡んでバイタルに入るシーンを増やせれば、自然な形でボランチがシュートに持ち込むシーンは韓国相手にも作れただろう。

 後半の途中に投入された大島は韓国の引き込んだところからのディフェンスに対して、アンカー気味のポジションでボールを受けてから相手のマークを1つ外して、ワイドに配給する役割を担い、同時にカウンターのケアもしていた。それを考えると、大島が攻め上がってシュートを撃つというのはあくまでオプションに過ぎず、田中にはより効果的な攻撃参加が求められた。

 もちろん、引いた相手に対しては、よりメインのフィニッシャーである1トップ2シャドーが相手の脅威になることで、ボランチの攻め上がりが有効になるという段階的な流れもあり、田中がそうした判断をする前提段階を作れなかったことも、攻撃が停滞した要因ではある。

中国戦でゴールを挙げ期待された鈴木武蔵はシュート1本に終わった

 今回のE-1を経験した若い選手たちそれぞれがレベルを高めることも大事だが、A代表でスタンダードの[4-2-3-1]、今回使われた[3-4-2-1]の使い分けも含めたビジョンを監督から選手に伝え、共有した中で相手に対してどう向かって行くかといった準備は必要になってくる。ただ、森保監督もあえて現在は選手の判断の領域を大きくしているかも知れず、そうした視点も持ちながら東京五輪、最終予選に向けた兼任監督の代表活動を注視していきたい。

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Photos: Getty Images

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大島僚太戦術田中碧

Profile

河治 良幸

『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。