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運動未経験で女子サッカーの世界へ 異色の「東大女子」の探究 の旅は続く…

2019.09.04

2018年5月に創設されたフットボリスタのオンラインサロンフットボリスタ・ラボ」。国外のプロクラブで指導経験を持つコーチに部活動顧問といった指導者から、サッカーを生業にこそしていないものの人一倍の情熱を注いでいる社会人大学生、現役高校生まで、様々なバックグラウンドを持つメンバーたちが日々、サッカーについて学び合い交流を深めている。この連載では、そんなバラエティに富んだラボメンの素顔とラボ内での活動、“革命”の模様を紹介していく。

今回は、運動未経験で東京大学ア式蹴球部女子サッカー部に飛び込み、学連のトップである幹事長まで務めた異色の経歴を持つ横堀ミラノさん。知られざる女子サッカーの世界とサッカー×学問の孤独な戦いについて語ってもらった。

文化系女子、サッカーに出会う


──まず自己紹介からお願いします。


 「高校まではずっと岡山にいて、生徒会とか文化系の活動ばかりしていました。大学で東京に出て来て初めてサッカーに出会い、今に至ります


──ご両親がサッカーが好きだったってことはないですか? 名前がミラノなので。


 「いやまったく(笑)、両親がイタリア好きで、趣味で付けられちゃったという(笑)」


──じゃあサッカー自体に出会ってプレーし始めたのが、東大のサッカー部に入ってからってことなんですか?


 「そうです。でも東大女子サッカー部は初心者ばかりなので、そういう意味ではマイノリティではないです」


──そもそもなんで大学でサッカーを始めたんですか?


 「入学当初、運動未経験でもできそうなサークルを探していたんですが、結局どこにも入らなくて。そんな中、大学の体育の授業の選択科目にサッカーがあって、どうせやるなら気になるやつをやろうと飛び込んで。いざやってみたら楽しくて、すぐサッカー部に連絡したという経緯です」


──今まで運動経験がないとなると、大変だったんじゃないですか?


 「怖いもの知らずというか、運動してなかったからこそ、サッカーの大変さをわからないまま飛び込めたところはあって、たぶん周りの教える人の方が大変だったと思います(笑)」


──なるほど(笑)。ちなみに、どういう環境なんですか?


 「週4練習なんですが、うち2日は純粋に東大女子サッカー部だけの練習で、残りの2日は文京LBレディースという社会人チームとの合同練習です。東大としての練習は、最近男子部のOBの方がコーチになって変わりましたが、以前は上級生が練習を引っ張ってメニューも考えて、下級生に教えるという形でした。残りの2日一緒に練習する文京LBレディースですが、これは東大女子サッカー部を母体として作られた社会人チームで。文京区に関わる中学生から社会人、ママさんも、様々な年代や経験の人たちが一緒にボールを蹴っています。こちらは創設当初からコーチがいて、11対11のゲームもできる環境です」


──横堀さんは大学女子サッカーの大会運営もやっていたんですよね?


 「はい、いわゆる学連の活動です。東大女子サッカー部が所属しているのが関東大学女子サッカーリーグの3部で、1部から3部までの関東全体のリーグを取りまとめる組織が、関東大学女子サッカー連盟です。組織内には、競技の運営、審判との連携、スポンサードやプログラムの取りまとめなどの仕事を行う部署があります。私のやっていた幹事長は、それを統括する役割で、全体の進行の管理や、定期的に行う会議の取りまとめなどが主な仕事です」


──それをやりつつプレーもしていた?


 「そこは男子との違いですね。男子だとスタッフとして部に入って、スタッフ内で学連担当という形も多いですが、女子はスタッフはほとんどいなくて、9割以上が選手です。普通にスタメンレベルの人もいたりします(笑)。みんな練習を休んで来たとか言いつつ集まってくる感じです(笑)。あと関東の学連は、関東のリーグだけでなくインカレ(全日本大学女子サッカー選手権)の運営も担っています。そっちは関東学連の中でも有志の少人数でやります。JFAの方々や当時中継してくださっていたフジテレビさんとも連携しながら、事前企画からSNS 企画、当日の設営やオペレーションまで、いろいろな仕事をしていました。当時はJFAに通い詰める日々でした」


──女子サッカーって小学校の時に男子と一緒にプレーしたりするじゃないですか。エリート層じゃない子はその後どういうキャリアをたどっていくんですか?


 「小中高大のプロセスの中で断絶がすごいあるというのはいろんな話を聞いていて思います。小学校では男子と一緒に混ざってやれてたけど、中学に上がるとやれるチームがないとか」


──そうですよね。僕の周りにプレーしている女子がいなかったので実感としてわかります。


 「中学、高校に環境がないから、続けたければ外のクラブチームに行かざるを得ない状況に、という話は聞きます。東大女子サッカー部の創部メンバーの1人は、高校まで男子と一緒にプレーしていたそうです。こういう環境が良いからこっちに行こう、ではなくて、サッカーしたいんだったらこれしかない、みたいな選択をしているパターンが多いイメージがあります。あとはやる競技自体をサッカーから他に変えちゃうパターンとか」


──昔、宮間(あや)さんや澤(穂希)さんが、私たちが頑張らないとこの競技の未来がないというような発言をされていましたが、今もそういう空気はあるんでしょうね。


 「大滝麻未さんや熊谷紗希さん、他にもなでしこのプレーヤーの方とかとお話をした機会があったんですが、そういう意味の危機感は今もすごくあると思います。もう一度W杯を獲りたい、このままじゃダメだ、みたいなことをおっしゃっていて」


──横堀さんから見て、男子サッカーとは違う女子サッカーの特殊性だったりとか、特徴って何でしょう?


 「よく言われるのは、良くも悪くも真面目で真っ直ぐでクリーン。あとは、男子とは絶対的な身体能力やパワーの違いがある、でもレギュレーションは同じという条件なので、男子とは違うゲーム構造が生まれる面白さがあると思います」

サッカー×学問に目覚めて


──そんな横堀さんがなんで『フットボリスタ・ラボ』に入ろうと思ったんでしょう?


 「サッカーを始めて2、3年経って、そろそろプロの試合を積極的に見てみようと思い始めて。それでいろいろ見ていくと、徐々によくわからないワードが目や耳に飛び込んできて。それこそ偽サイドバックってなんだ、みたいな。それで戦術のことをもっと知りたいと思って調べていたらフットボリスタのWEB記事にたどり着いて、すごい面白くてのめり込んでいって。で、そういうのが高じてというか、去年林舞輝さんがゲームモデルの講習会をやられていて」


──女子大生があれ行ったんですか(笑)。


 「結構勇気が必要だったんですけど。参加者はガチな指導者しかいなかったので、林さんにも突っ込まれました(笑)。そこでやっぱりサッカーって面白いなとなりまして。これ以上学びを深めていくためにはどうしたらと思っていたところでちょうどラボのことを知って、飛びついたっていう」


──入った当初から、サッカー×学問のテーマで積極的に活動されてましたよね。どうして学術的にサッカーを見るのが好きになったんですか?


 「私は学問をしたくて大学に入ったので、大学に入ってからも学問の追求というのはまず軸としてあって、サッカーは最初はあくまでもサブの活動というか、それはそれで大学4年間は頑張ってやろうくらいの感じだったんです。でもこんな感じでどんどんサッカーの軸が太くなっていって。これどうするよ?ってなった時に、『別に分けなくてもいいんじゃないか』って」


──それで2つを結びつけたっていう。


 「そんな感じです」


──余計なお世話ですけど、周りに話が合う人がいるのかなって思うんですが(笑)。


 「(笑)。それぞれだと話が合う人はいます! ただ、私がいる環境はサッカーと勉強が分離した世界という感覚はありました。それこそ学連をやっていると、他大学のずっとサッカーをやってきたバリバリのスポーツウーマンの人も多くて、そういう人たちの中では、東大? マジで? みたいな感じでいじられたりする。でも大学の中のコミュニティだと、学者を目指せるほど頭は良くないけど、モチベーションはあるので混ぜてくださいみたいな(笑)、そういう立ち位置になるという……」


──ちなみに大学ではどういう学問をやってるんですか?


 「1、2年では、政治学のゼミに入ったり、思想や理論寄りの、政治思想、社会学系の授業を多く取っていました。3年になって法学部に入った今は、実学寄りのものを身につけたいという気持ちが大きくて、今学期は金融とか会計、会社法とかの授業を取りつつ、法学の必須の単位を抑えて、という感じです」


──今後はスポーツビジネス系のことをやりたいって感じなんですか?


 「すごく興味があります。もともとは社会を良くしたいというモチベーションで大学に入って、学問のスペシャリストとして、間接的にでも世の中に貢献したいと真剣に思っていたんですが、勉強しながら何かが違うなと思い始めて。もっと違うやり方で社会と関われないか、と。でもどうするかと言われるとあまり見えない。そんな中でサッカーと向き合う時間がどんどん長くなっていって。徐々に、サッカーを通して何かしら世の中のためになることができたら、自分にとっても幸福だし、それは健全な仕事のあり方なんじゃないかと思うようになりました。なので、人生のどこかの時点でスポーツ系の仕事をやりたいという気持ちはあります」


──最後に、今後ラボで実現したいことはありますか?


 「やっぱり普通にサッカーファンをしていたら気軽には接触できない人とコミュニケーションを取れるのがラボのすごくいいところだと思うので、そこの繋がりを今後も発展させていけたらと漠然と思います」


──僕は今後も編集作業を手伝ってほしいですね(笑)。ラボで友達を100人作るくらいの勢いで頑張ってください!

フットボリスタ・ラボとは?

フットボリスタ主催のコミュニティ。目的は2つ。1つは編集部、プロの書き手、読者が垣根なく議論できる「サロン空間を作ること」、もう1つはそこで生まれた知見で「新しい発想のコンテンツを作ること」。日常的な意見交換はもちろん、ゲストを招いてのラボメン限定リアルイベント開催などを通して海外と日本、ネット空間と現場、サッカー村と他分野の専門家――断絶している2つを繋ぐ架け橋を目指しています。

フットボリスタ・ラボ16期生 募集決定!

フットボリスタ・ラボ16期生の募集が決定しました。

募集開始日時: 9月6日(金)12:00 ~(定員到達次第、受付終了)

募集人数:若干名

その他、応募方法やサービス内容など詳細はこちらをご覧ください。皆様のご応募を心よりお待ち致しております。

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Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。