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超過密日程で露呈。セビージャ、モンチ不在の「空白の2年」

2019.08.01

セビージャのヘスス・ナバス

18-19 Playback For The Coming Season#1

8月に入り、5大リーグ開幕の足音が近づいてきた。プレシーズンマッチを重ねチーム作りを進めている各クラブは、順調に歩みを進められているのか。その進捗を測るうえでは、昨シーズンのチームが抱えていた課題を正確に把握しておくことが欠かせない。

この昨シーズンの振り返り記事で課題を再確認することで、来たる19-20シーズンに向けた準備は的を射ているのか、的外れになってしまってはいないか、判断する手がかりにしてほしい。

SEVILLA | セビージャ

 3月15日にパブロ・マチン監督が解任され、スポーツディレクター(SD)だったホアキン・カパロスが後任になった。そのわずか2日後、モンチが空位となったSDの座に就いた――。この2つの連続した出来事が、モンチがいなかった2年間のスポーツディレクションの空白を雄弁に物語っている。

 17-18シーズンは2度監督を交代した挙句、やっとEL出場権の最後の枠に滑り込んだ。しかし、これによって昨季は7月中旬から6試合の予選を戦う羽目になり、補強を急がせ、ピークを1カ月前倒しさせ、61試合消化の過密日程にさせ、ついでにプレシーズンの親善試合をキャンセルさせて財政にダメージを与えることになった。18-19は、この前季のツケを背負ってのスタートだったのだ。

 パブロ・マチンを選んだことが悪かったとは思わない。2トップへボールを送り込み、その間にチーム全体を押し上げて敵陣に殺到するサッカーは、当初はゴールを量産させた。3バックの利点であるショートパスによるボール出しと、エベル・バネガやヘスス・ナバスからのロングボールをミックスして相手のプレスに的を絞らせず、FWの大柄なアンドレ・シルバと小柄なウィサム・ベン・イェデルの相性も良く、ポゼッションとカウンターの良さを融合したかのようなスタイルで10月にはリーグ首位に立ちもした。

 だが、疲労が溜まりケガ人が続出すると後退が始まる。露呈したのは、プレースタイルに適合する選手が不足し合わない選手が余る、というちぐはぐ。右サイドはJ.ナバスの奮闘でカバーできたが、左はエスクデロもギジェルメ・アラナも長い距離を走れるタイプではなくFWのクインシー・プロメスをコンバートせざるを得なくなった。MFは、2ボランチ向きの守備的なイブラヒム・アマドゥ、マルコ・ログ、マキシム・ゴナロンはいてもバネガのようなパサーは不在。FWもルイス・ムリエルではロングボールのターゲットになれず、調子を落としたA.シルバの代役にはならない。冬の移籍市場でFW、MF、CBを1人ずつ獲って夏の失策を補おうとしたが、結局、結果を出したのはGKのトマーシュ・バツリーク、CBのセルジ・ゴメス以外はモンチ時代のメンバーだった。

 EL敗退をきっかけに、自分が連れて来た監督のクビを切って後継者になる、という苦渋の決断をしたカパロスは、持ち味の[4-4-2]に戻す、というカンフル剤で最初の数試合は結果を出したものの、CL出場権獲得はならずEL予選を回避する、という最低限の目標を達成したにとどまった。今は新監督ジューレン・ロペテギに疑問を抱きつつも、救世主モンチの選択だから、と納得しようとしている状況だ。

2-1で勝利した7月21日のリバプール戦でウッドバーンと競るバネガ。帰って来たモンチの下で大補強を敢行したチームはプレシーズン絶好調。台風の目となれるか、楽しみだ


Photos: Getty Images

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セビージャモンチ戦術移籍

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。