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拝金主義にうんざり…ドイツは「NOスーパーリーグ」で一致団結

2019.07.29

ドイツサッカー誌的フィールド

皇帝ベッケンバウアーが躍動した70年代から今日に至るまで、長く欧州サッカー界の先頭集団に身を置き続けてきたドイツ。ここでは、今ドイツ国内で注目されているトピックスを気鋭の現地ジャーナリストが新聞・雑誌などからピックアップし、独自に背景や争点を論説する。

今回は、2024年以降に誕生かと報じられた新大会「欧州スーパーリーグ構想」について。新フォーマットで参加クラブの拡大とともに大きな変更点となるのが、週末開催の実施だ。狙いは、集客および放映権料のさらなるアップ、ひいては大会のブランド向上に他ならない。だが、国内リーグをないがしろにせんとする改革に対し、ドイツの各クラブは対決姿勢を明確にしている。

 新しいアイディアや変化は、伝統と儀式で凝り固まったドイツサッカー界に決まって憤りを呼び起こす。今では愛されているCLでさえも、導入された1992年当時に「金儲けカップ」と揶揄(やゆ)した時のドイツ代表監督ベルティ・フォクツが喝采を浴びていたくらいである。

 であるがゆえに、2024年からCLに取って代わるかもしれない「欧州スーパーリーグ構想」への反発も大きい。ただ、この反発は昔からの保守的傾向からくるものではなく、ブンデスリーガに傷が入ることへの恐怖からくるものである。

サッカー愛の核心

 「ブンデスリーガは、大きな敗者となるだろう」と危惧するのは『ビルト』紙だ。1部と2部の36クラブが所属するドイツサッカーリーグ機構(DFL)はカンファレンスで、スーパーリーグ構想を全会一致で否決した。CEOのクリスティアン・ザイフェルトは「今議論されているコンセプトは、欧州各国のリーグに受け入れがたい結末を招くだろう。多くの人たちにとって魅力的であり伝統的な国内リーグが傷つけられるのを、許すわけにはいかない」とコメントしている。

 しかし、それが現実のものとなる恐れは消えていない。

「週末は国内リーグのためにあるべき」 と以前からスーパーリーグ構想に否定的だったDFLのザイフェルトCEO(右)と、構想推進派と報じられてきたがDFLのカンファレンスでは否定派に回ったバイエルンのルンメニゲCEO

 ドイツサッカー界が、代表の主要大会や今年のCL準決勝のようなドラマに魅了されるのは確かだ。だが、人々のサッカー愛の核となっているのは、まったく別のものである。

 サッカーに対する情熱とは、ある意味“忍耐”である。慰めようのないスタジアムでの午後、時が止まってしまったかのような貧しいレベルの試合、冷たい秋の雨に打たれながら観た自分のチームの負け試合などは誰にでも覚えがあるだろう。立ち見席で、激怒した隣人にビールをかけられたり、ナーバスな隣の客に90分間煙草の煙を浴びせられたけれど、最後は一緒になって喜んだり悲しんだり。混み合って嫌な匂いがする各駅停車の電車に乗って行くアウェイゲーム、土曜日の夜にテレビで見る『シュポルトシャウ』(ハイライト番組)……。

 こうした光景は、ドイツの何百万もの人々の生活に根付いた“儀式”なのである。15時30分のキックオフもその一つであり、『南ドイツ新聞』はブンデスリーガへのオマージュで「ドイツ人の生活リズムをこれ以上強く刻むものはない」と書いた。

 もしCL出場資格を決めるのがブンデスリーガでの戦いでなくなれば、その魔法の一部が解けてしまうかもしれない。「この馬鹿げた決定がなされる前に、首脳陣は頭を使った方がいい」と『エクスプレス』紙は主張。

 CL自体の魅力も薄れる恐れがある。『ミュンヒナー・メルキュール』紙はCLでのバルセロナ対リバプール、トッテナム対アヤックスの素晴らしい準決勝2試合を受け、「今、欧州大陸のあらゆるところで、どれだけCLが素晴らしいかと称賛されている。それなのにUEFAは、この成功モデルをほとんど何も残らないくらいドラスティックに変えようというのか」と不思議がる。

一大ブームは終わった、でも…

 スーパーリーグ構想では2024年以降、3ディビジョン制に拡大され1シーズン合計647もの試合が行われることになる。現在は330である。また、直近4年間の成績で16強のチャンスがないチームを集めた大会を秋に開催するプランもある。この新フォーマットは「さらに金儲けになり、さらに退屈になる」と『ビルト』紙。オランダやポーランドなど、そこまで魅力的でないリーグはこのプランに前向きだというが、ドイツサッカー界の大半は抵抗しなければならないという意見で一致している。アヤックスやレギア・ワルシャワのようなチームにとっては、より高いレベルの試合と明らかな収入増を望めるかもしれない。だが、サッカー自体にとっての損失は計り知れないほど大きいものであろう。

AP通信の記者ロブ・ハリスがTwitterに投稿した、欧州スーパーリーグの新フォーマット概要図

 ドイツのスタジアム集客数は減少してきており、テレビで試合を観るためには有料放送といくつもの契約をしなければならない。移籍市場で動く途方もない移籍金も多くのファンたちの気に障る。「観客が何も考えずにスタジアムへ殺到し、ファングッズが売り切れになるような一大サッカーブームは、明らかに終わった」と現状を受け止める『シュテルン』紙は、「この流れを、国際試合を増やすことでせき止めようとするのは間違ったアイディアであり、UEFAもそれを理解してきた節がある」とも評しているが、果たしてどこへ向かっていくだろうか。

■注目記事
過激な改革

スーパーリーグ構想の概況をまとめた記事。3ディビジョン化する各リーグの内訳や昇降格の仕組みなど、各メディアによって報じられた内容を整理するとともに、リーガ会長ハビエル・テバスの「ほとんどの国の国内コンペティションを破壊する」という談話を紹介して「これは革命なのか、それともモダンサッカーへの適応なのか?」と問いかける。(『シュピーゲル』電子版 2019年5月10日)


Translation: Takako Maruga
Photos : Bongarts / Getty Images

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Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。