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“96ジャパン”を彩る独特のキーワード

2013.10.26

 U-17W杯のGSで3連勝を飾り、首位で決勝トーナメント進出を決めた“96ジャパン”ことU-17日本代表は海外のメディアや関係者にも衝撃を与えている。彼らの代名詞となっているのが、流動的なパスワークからの崩しだ。

 吉武監督は“共鳴”と“全員攻撃・全員守備”を合言葉に、試合における実戦力を植え付けている。「無理ですけど、ポゼッション80%を目指している」と語る指揮官が目指しているのは、単にボールを持つ時間を長くするのではなく、常に主導権を握って能動的に相手の守備を崩す準備をすることだ。

 “96ジャパン”が相手の守備を崩す時にまず重視するのが「相手をよく見る」こと。吉武監督は試合において「ファーストインプレッションが大事」と語るが、それは選手が実際のピッチで感じ取るべきもの。ボールを回しながら相手が守っていないところを見極め、そこを全員で狙って突いて行くのだ。

 ただ、その時その時で選手が描いている攻撃の絵はすべて同じ、というわけではない。相手の守備を崩すにはチームとしての共通イメージが必要となる。そこで用いられるキーワードが選手同士で「相談する」こと。パスを交換しながら、声やアイコンタクトを使い、そこから攻めるべき場所、タイミングを共有するのだ。

 その過程においてよく使われるのが「ノープラン」というメッセージ。これはその瞬間に、縦に攻めるべきスペースが空いていないということを意味する。その時は強引に縦パスを出そうとするのではなく、近い距離の仲間とショートパスを繋ぎ、その間に一人の選手がマークを引き付けて動き、生じるスペースにまた別の選手が侵入して、そこでタイミング良くパスを受ける。

 この時にパスを交換する選手たちもポンポンとパスを繋ぐだけでなく、状況に応じてボールをキープし、あるいは持ち運んで相手の守備を引き付けて、スペースと時間を作り出そうとしている。意図さえあればシンプルに繋いでも、ボールをキープしても構わないが、曖昧な行動は連動する周囲のイメージまで狂わせてしまう。“96ジャパン”の選手たちは誰が出し手で誰が受け手という明確な役割分担がない。そのため、意図のないパスやキープがいかに周りに迷惑をかけるかを、身を持って知っているわけだ。

SBが得点王

 そうしたパスワークを繰り返しながら、“ワイドトップ”と呼ばれる左右のウイングを“フロントボランチ”と呼ばれるインナーハーフが追い越し、そこに相手のマークが来たところで、今度はSBが追い越してディフェンスラインの背後やバイタルエリアに飛び出して行く。ただ、その時にゆっくり行っても結局、相手に再びマークされてしまうため、選手たちが“ジャッと行く”と表現する、それまでの流れの中で生み出した斜めや裏のスペースを鋭く突くフリーランを、崩しのキーワードとしている。

 相手の守り方や配置によって“守っていないところ”を見つける作業は異なるが、この“ジャッと行く”状況をどれだけ作り出し、実際に突くことができるかは、すべての試合に通じるメインテーマとなっている。こうした攻撃スタイルに関連してもう一つ「SBが得点王」という言葉がある。攻撃のほとんどは中盤を経由するが、多くの起点はSBであり、パスワークに応じて攻め上がりながら、最後に“ジャッと行く”のもSBということだ。

 もちろん、よりゴールに近いワイドトップやフリーマン(中央のやや下がり目のFWで、バルセロナのメッシのようなポジション)がフィニッシュに行くケースは多いが、SBがスペースに飛び出して得点を奪う形は一つの理想だ。左SBの坂井が決めたチュニジア戦の同点ゴールは、まさに象徴的な得点と言っていい。

 “96ジャパン”の特徴は、そうした吉武監督のスタイルをチーム全体で共有し、多少うまく行かないことがあっても、ブレずに継続できることにある。ここからさらに強い相手になり、日本を研究してくることから、間違いなくGSより厳しい戦いが待っているはず。しかし、その中で選手がどういう“ファーストインプレッション”を持ち、持ち前のパスワークを発揮して守備を崩していくのか。「やってきたことへの確信」と吉武監督が語る“96ジャパン”らしい攻撃に期待したい。

<日本のGS結果>
第1節 ○0-1 vs ロシア
第2節 ○3-1 vs ベネズエラ
第3節 ○2-1 vs チュニジア

Photo: FAR EAST PRESS/AFLO

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U-17ワールドカップコラム吉武博文日本代表

Profile

河治 良幸

『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。