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セネガル戦、恐れるべきは3バック変更。河治良幸×五百蔵容

2018.06.01

短期集中連載:ハリルホジッチの遺産 第5回

4月9日、日本代表監督を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチは日本サッカーに何を残したのか? W杯開幕前にあらためて考えてみたい。引き続き河治良幸氏と五百蔵容氏が、本大会ではもはや見られなくなった『ハリルホジッチ・プラン』を想像しつつ、コロンビア、セネガル、ポーランドへの対策を話し合う。今回は第2戦のセネガルについて。西野ジャパンのヒントは、ハリルホジッチの遺産の中に隠されている。


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間違いなく消耗戦になる


――続いて、第2戦のセネガル戦はいかがでしょうか。


河治
「セネガルは、すごく当たりが強い。コロンビア、ポーランドの比じゃない強さですね。コンタクトプレーではほぼ勝てないでしょう。ただデュエルの勝率が40%を切ると、戦術で上回ってもしんどいと思います。

 試合中で、デュエルは200~300回あると言われます。回数を200回まで落としたとしても、30%しか勝てなかったら試合には負ける。なんとか40%ぐらいまで勝率を高めつつ、接触プレーを減らしたい。ただ、セカンドボールの勝負は避けられません」


――セネガルの試合ではいつもセカンドボールが大量に発生するんですね。


河治
「圧倒的にセカンドボールの奪い合いが多いです。そして、彼らはそこにすごく強い。MFはつなぎが上手いわけではないし、雑なところも多い。けども、セカンドボール奪取力は非常に高い。監督もそれを意識してチームを作っています」


五百蔵
「中盤のスペースをくれるチームですね。でも、スペースがあっても走力があるからボールホルダーに間に合う。規律が高いからそれを何度も繰り返せるし、セカンドボールを取れる。走力があるから先に拾える。そこからスルーパスを出す回数も多い。成功率は高くないけど、ボールを失ったら何度も戻れる。きつい相手です。

 『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の中でも、セネガル戦は『デュエルが1番きつくなる試合。まず耐えること。中盤にスペースがある状態で裏に放り込まれ、ボール確保はできるけど向こうの帰陣も早い、そういう光景の繰り返しになる』とシミュレートしています」


河治
「西野さんがハリルホジッチよりボールを回していこうとしても、セネガルがフィジカルを使ってくる限りデュエルが200回ぐらいは発生するわけですね」


――相手はそう意図しているわけですからね。


河治
「ハリルホジッチがやってきたことって、セネガル戦みたいな相手に完敗しないことでもあります。勝ち切るのは不可能でも、差を少しでも埋めることによって完敗しないことはできる。少しでも早くボールを入れたり、身体の使い方を工夫したり。大島僚太が得意なんですけど、わざと遅れて入って相手のボールコントロールしたタイミングで潰したり。

 セネガルにデュエルで完敗しないところまで準備し、さらに日本の機動力を活かす。単純なスピードでは勝てないけど、1つの局面に対し2人3人と入っていく、斜めの動きに3人入っていく、というケースを生むことで勝てる場面が増えると思います。


――それにしても、消耗戦になりますね。


五百蔵
「ワイドの選手はとにかく走るし、走られたらラインは下げざるを得ない。中盤にスペースが生まれる。彼らの得意なセカンドボールを巡るデュエルに持ち込まれやすい局面を戦略的に作られる、という仕組みです。だから、河治さんの仰るとおり、そこのデュエルで勝てないまでも負けないこと、大島みたいな選手を使って向こうのデュエルを外して展開することができるといいと思います。

 ただ、セネガルが3バックを試しているのがすごく嫌ですね。4バックだったら、中盤のデュエルで勝てば、相手はワイドを走らせるためにサイドバックも上げて来るからそのスペースを使えた。3バックにするのは、そこを封鎖する意図だと思います」


――相手が3バックだと、センターバックがずれる現象が起こらないですね。


五百蔵
「3枚でがっちり中央を固めているから、規律の高さを利用して選手が帰陣する時間を作れるんですね。さらにもっと嫌なのが、サディオ・マネを0トップ気味に使ってくること。マネがワイドのランナーでそれをケアしさえすれば、と思われているかもしれませんが、彼は戦術理解力が相当高くて、0トップのタスクをこなしながらワイドに流れて本来のプレーもする、といったことを繰り返せています。これはかなりやばいなと思っていて、ここで勝ち点を取れない可能性はありますね」


河治
「もし3バックで来た場合は、山口がマネをマンマークする手もあると思います。山口って、そういうことをやらせたら相当能力が高いですから。あと、セネガル戦は思い切って長谷部を休ませてもいいと思っていて」


――3試合を考えた時に、ポーランド戦で使い物にならなくなるのは避けたいと。


河治
「セネガル戦は、無理にベテランを使わなくても良いと思っています。ただし、年齢に関係なく人に対する強さの部分で槙野智章は必要ですね」

皆、セネガルを過小評価している(五百蔵)


河治
「セネガルが[4-3-3]で来るのか、[3-4-1-2]で来るのか。もし3バックで来るなら、長友に休んでもらってポーランド戦に備えたい。ブワシュチコフスキとのマッチアップに必要なので。

 もう1つ怖いのは、セネガルが試合中にやり方を変えて来ること。シェイク・クヤテは3バックの場合リベロにもなるんですけど、アンカーもできる選手です。『ハマらないな』と思ったら前に出てくる。試合中に、アンカーやダブルボランチにすることもできる」

セネガルの可変システムのキーマンとなるクヤテ


五百蔵
「セネガルはみんなちょっと過小評価していると思うけど、本当にきつい相手だと思いますね。4バックでも3バックになっても彼らにとってリスクテイクしているポイントが変わるだけで、プレーモデルはほとんど変わらない。

 日本にとっては3バックの方がやばいと僕は思うんですけど、マネが0トップのときは彼が中央で仕事しながらも、全体でやる仕事は[4-3-3]とあまり変わらない。その状態でマネが外に流れて、ワイドの選手が内側に絞ってFWの仕事をやるわけです」


河治
「仮にセネガルが[3-4-1-2]で入って、マネが0トップ気味のトップ下で来たとして、日本がうまくハメたとします。しかし、山口がマネをマンマークしても、途中から[4-3-3]に変えてマネを右のウイングにする可能性もある。やっかいなことに、ケイタ・バルデという選手は2トップもできるし左ウイングもできる。可変に耐えられる選手がそろっているんですよね」


五百蔵
「インサイドウイングができる選手も2、3枚いる」


河治
「ただ、可変する部分はコロンビアに比べてはっきりしていると思うので、とにかくデュエルで完敗しないことですよね。デュエルなしに終わらせることは無理」


五百蔵
「無理ですね。基本戦術が、相手のボールホルダーにがっちりハメてくることなので。そうなるよう戦略的にも準備されている」


――グループ突破には最低勝ち点4が必要とすると、1敗するとしたらセネガル戦なのでしょうか?


河治
「僕は、コロンビア戦は善戦しながらも勝ち点ゼロで終わる可能性があると思っています。ここでゼロだとまずい」


――勝ち点1は、なんとしてでも取らないといけない。


河治
「突破するには、セネガル戦で勝ち点ゼロはまずい。1だとしても、コロンビア戦が0だとほぼ望みがなくなります。0→1と来てポーランド戦で絶対勝たないといけない状況になると、それこそブラジルW杯のコロンビア戦の二の舞になる。

 ポーランドに引き分けで突破できる状態に持っていけたら理想、そのためにはセネガル戦に勝ちたい。引き分けなら、コロンビア戦も勝ち点1は取っていたいですね。それだと、どのみちポーランド相手に勝ち点3を取らないといけなくなるけど」


五百蔵
「結局は、コロンビアかセネガルどちらかに勝たないといけない」


――本当に苦しいグループですね。


五百蔵
「苦しいです。僕は、このグループは勝ち点4じゃ上がれない可能性があると思っています。さっき言ったように、コロンビアが下手を打つ可能性がある。集中砲火を浴びて、コロンビアが3連敗する可能性だってなくはない。そうすると、勝ち点4じゃ上がれません。日本が3連敗する可能性が一番高いけど、コロンビア戦とセネガル戦が終わってグループ突破が見込めないと無理だと思います」


河治
「セネガルは、ノルマということで言えば勝ち点3を取らないといけない」


五百蔵
「僕は逆で、コロンビア戦で勝っとかないとセネガル戦がきついなと。両方キツイ相手なのですが、結局、セネガルは自分たちが一番苦手とするデュエルで戦わないといけない相手ですから。セネガルは90分走れ、90分デュエルできるチームなので」

コロンビア戦で勝たないと、日本は苦しい


五百蔵
「ハリルホジッチは、コロンビア戦で勝ち点3を取れると考えていたと思うんですよね。セネガルの方が、スペックの差を如実に出される可能性が高い。戦術じゃどうにもならないところがある。

 セネガルの戦略がそういう、自分たちの身体的な優位性を最大化する意図を持った戦略なんです。たまたまそうなっているだけかなと予選を見ていて思ったんだけど、3バックシステムの使い方を見たらたまたまじゃなかった。走力で相手を圧倒して、規律の高さで守り切るチームです」


河治
「引き分け・引き分けで行ったとしても、ポーランド戦で勝ち点3を取らないといけないとなった時にかなり辛いですね」


――そうなると、コロンビア戦で勝たないと苦しい。


五百蔵
「前回のアルジェリア代表でも、ハリルホジッチは初戦を負けて勝ち上がりました。でも今回は、ああいうグループにはならないんじゃないかなあと」


河治
「僕は、ハリルはセネガル戦で勝ちに来ると思っていました。彼は元々アフリカで指揮を取っていて、アフリカ勢に慣れていると思うので。あとはオプションの選択肢を考えた時、途中から入って来る選手がそれまで出ていた選手よりも上とは限らない。70分しのげば、残り20分で日本はカードの切り方によっては勝ちに行ける」


五百蔵
「それはそうかも」


河治
「コロンビアのペケルマンは、それをやらせてくれないんですよね。ブラジルとやっても、それを上回るようなカードを切ってきますから。最初は負けていても切っていくカードでブラジルを上回るぐらいなので。

 セネガルのアリウ・シセ監督のマネジメントは素晴らしいと思いますけど、采配はペケルマンほどではないし、マネ、ケイタ、ソウあたりが先発したら、ベンチにはレギュラーを上回るアタッカーが見当たらない。一方でペケルマンの戦略や日本への研究の高さを考慮するとコロンビアに勝ち切るのは難しい。勝って入れたら理想ですけど、勝ちを狙いに行って引き分けなのか、惜しい負けなのかでも違う。

 初戦のコロンビアに善戦して負けるのか、ありえない差で負けるのかは全然違いますね。とにかく、良い形でセネガル戦に入れるかどうか。セネガル戦は、デュエルでの勝率40%を切らないところまで頑張ってほしい。

 セネガルは、中盤のスタメンはあまり変えてこないんです。彼らは体力はあるけど終盤では多少なり間延びしてくるので、セカンドボールで勝てる局面も出て来ると思う。原口みたいに90分疲れない選手もいますから。後半に日本が上回る感じに持って行ったら、勝てなくはないかなと。

 ただ、これはハリルジャパンでのシミュレートです。特にアフリカ情勢に明るくない西野さんだと、相当厳しくなったと思います。コロンビア戦では裏抜け担当に浅野を置きたい。本田じゃないよなっていう感じですね。

 本田を入れるとしたらセネガル戦だなと。トップ下に置いて、クヤテを見張らせたい。相手が3バックか4バックかで変わって来ると思うんですけど、4バックならクヤテはアンカーに入って来るのでそこでゴリゴリやってもらい、周りの選手にスペースを作ってもらいたい」


五百蔵
「そこは攻撃のところですよね。守備だと、本田には走力がない」


河治
「本田ってどっちかというとマンツーマンよりもゾーン気味に守ったほうが活きる選手なんです。運動量はそんなにないけど、サボらない。パチューカで見ていてもちゃんとポジションを取っていくんですよ。穴を開けない。

 体は強いけど、本来ガツガツ奪ったり運動量で守り倒せる選手じゃなく、バランスを取りに行く選手。相手のアンカーに対して、トップ下で起用するならありかなと。相手のアンカーって、[4-3-3]の時には攻撃に出てこないので」


――ただ、そこをかいくぐってもクリバリというバケモノがいます。

圧倒的なパワーとスピードでセネガルの最終ラインに君臨するCBクリバリ


五百蔵
「やばいですね。3バックにされるとクリバリの有効度がすごく上がるんです。『なんてことを考えるんだ』と思って(笑)」


河治
「日本も2トップだとまずいですね。3トップにして、左サイドから原口や乾を仕掛けさせたとしても、クリバリがいる限り空かない。クリバリをうまく釣り出せると良いですけどね。でもそれは試合終盤ですね。なんとかやられないで0-0、もしくはセットプレーでお互いとって1-1とかでしのぎたいですね。セットプレーでのクリバリの得点力はすごいですから」


――あの195cmの、戦車みたいなやつが突っ込んで来るんですからね……。


河治
「西野さんがセットプレーをどれだけ考えているかわからないですしね。点を取るより、守るほうがやばい。ハリルはオーストラリア戦で、超アジア級のメンバーに対して本田をマーカーに入れ、小林悠をストーンにしてしのぎました。長友がケガしてなかったらどういう起用法だったかわからないけど、左サイドバックに槙野を使ったのは戦術的ヒットだったと思います」


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第1回:ヴァハよ、元気か?息をしてるか? その後のハリルホジッチ(文/長束恭行)
第2回:日本代表にゾーンDFは必要か? 河治良幸×五百蔵容 対談(1)
第3回:ハリル解任の真の悲劇はW杯以後。日本代表は「解任基準」を失った(文/結城康平)
第4回:コロンビア戦には大島僚太が必要。河治良幸×五百蔵容 対談(2)
第5回:セネガルの「3バック変更」が怖い。河治良幸×五百蔵容 対談(3)
第6回:対ポーランド、要注意人物はミリク。河治良幸×五百蔵容 対談(4)


Photos: Getty Images, Ryo Kubota

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澤山 大輔