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“一体、俺たちは何をやらされているんだ?”

2015.02.14

パート2:ファン・バステン監督とのすれ違い

アヤックスやリバプール、ウルグアイ代表で活躍し、現在は強豪バルセロナに所属するルイス・スアレス。三度の噛み付き、ハンド、ダイブ、人種差別発言……本人がウルグアイでの幼少時代からバルセロナ移籍までの半生を赤裸々に語った初の自伝。昨年末に英国で出版された話題作が早くも日本上陸!

2008-09シーズン、アヤックスの監督に就任したレジェンド、ファン・バステンとの間に勃発した“冷戦”について、3月12日発売の「ルイス・スアレス自伝 理由」より特別公開!

 アヤックスでの1シーズン目が終わると、クラブは翌シーズンに向けて大物招へいに動いた。ファン・バステンの監督就任が発表されたのは2008年7月のことだった。その2008-09シーズン、彼の下で俺は43試合出場で28得点という数字を残すことになる。前シーズンの42試合22得点を上回ることができたわけだ。でも、チームとしてはリーグ3位にとどまった。そして、自分にとっては夢の監督であって然るべき人物との関係は、最初から最後まで芳しくなかった。

 現役時代には偉大な名手として知られ、しかもサッカー史上屈指と言われた元ストライカーの指導を受けられると考えると、俺は興奮を覚えずにいられなかった。実際、監督としての第一印象も良かった。厳格なタイプの指揮官は望むところだった。彼は言うべきことがあれば包み隠さずに言っていたし、就任当初からチーム全員の意識を集中させることにも成功していた。

 ただ、俺向きの監督ではない。週を追うごとに、そう思うようになっていた。戦術にはあまり柔軟性が感じられず、自分は彼が要求するシステムの中で持ち味を発揮できないことがあった。

 彼は、集団としての連帯感を強めるための手段として、平日の「課外活動」を重んじる監督でもあった。俺が思うに、チームはピッチ上で一致団結していればそれでいい。ピッチの外でまで仲間意識にこだわる必要はない。ファン・バステンにはそれを無理強いされていると俺は感じた。選手に対し、不必要に多くを求め過ぎているように思えた。

■死んだ方がましだと思いながら参加していた

 彼のやり方には賛成できなかったし、彼にもそれはわかっていた。新監督のチーム操縦法に異議を抱いている選手が俺だけではないことにも気付いていたはずだ。練習後には、チームメイトとの連帯感よりも、家族との絆を深めたいと願う選手は他にもいた。ある時などは、アート系のワークショップで絵を描かされた。結果として選手間に共通の感覚が芽生えるには芽生えたけど、それは「一体、俺たちはここで何をやらされているんだ?」という疑問でしかあり得なかった。

 最近になって、当時アヤックスで一緒だったダリオ・ツビタニッチと同じフライトに乗り合わせたことがある。昔話とファン・バステンに参加させられた「課外活動」の話で盛り上がったよ。俺たち選手は、2回に1回は死んだ方がましだと思いながら参加していたんだから信じられない話さ。

 問題の「アートクラス」では、無作為に抽出された単語から想像したものを絵にしなければならなかった。5、6人で、自分たちの内面に眠るファン・ゴッホを呼び覚まそうと悪戦苦闘したけど、目指すは芸術界ではなくサッカー界の“オランダの巨匠”であるべきで、俺に言わせればお門違いもいいところだ。まったくその気になれなかった。

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戦術の国オランダが生んだ知的なストライカーと
本能のストライカーの間には大きな価値観の違いがあった。
内面のファン・ゴッホを呼び覚ます「アートクラス」に続いて
スアレスが今でも忘れられないと語る「課外活動」とは?

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