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南米流コンビネーションプレーの基本。単純でも奥深いワンツーの技術を言語化する

2023.05.15

「リレーショニズム」の登場で欧州サッカー界を中心に、あらためて注目を集めている南米流のコンビネーションプレー。その基本となるワンツーにおける技術を、明晰なプレー分析でお馴染みのfootballhack氏が解説する。

「リレーショニズム」の原点はストリートサッカー

 ジェイミー・ハミルトン氏の記事により世界中の戦術談論で一躍注目の的となった「リレーショニズム」。ペップ・グアルディオラが旗手となって浸透したポジショナルプレーに対するアンチテーゼとして、サッカー界に新たな潮流を生み出そうとしている概念だ。今回はリレーショニズムについて筆者なりの解釈を紹介しつつ、その中心を担うワンツーの技術について解説したい。

 まずリレーショニズムとは一体何なのか。一文で表現するならば「ピッチを均等に埋めるポジションの概念を捨て、選手間の距離を近くしながらワンツーやスルーなどのコンビネーションプレーで突破を試みるスタイルと、それを可能にするための組織的な配置を試みる戦術」と言えそうだ。

 その体現者として挙げられやすいのが、南米のクラブチームや代表チーム。特にブラジルやアルゼンチンのように圧倒的な個が集う後者では古くから突破が不可能に思える密集地帯を、理不尽に思えるほどの強力なコンビネーションで打開して得点を重ねてきた。ポジショナルプレー的な思考では理にかなっていないような選手同士の距離感でゴールまで到達してしまうのは摩訶不思議とされてきたが、それを理論体系化しようとしているのがリレーショニズムなのだろう。

 このようなプレーが南米で広く見られるのはなぜなのか。ペルーにルーツを持つ育成指導者の知人に話を聞いてみたところ、ストリートサッカーの文化に由来するそうだ。例えばペルーやチリでも“ピチャンガ”(Pichanga)と呼ばれるストリートサッカーが定着している。フットサルほどの広さのコートで行う5対5あるいは4対4のことで、審判はいたりいなかったりとルールは様々だが、どんなストリートサッカーでも変わらないのはお金を賭けるという特徴だ。だから遊びと言っても真剣勝負。大人も子供も関係なく罵り、削り合って勝利を目指す。

 やるかやられるか。そんな高いテンションとインテンシティの中、ボールロストを避けるために飛び交うのは“トカ(Toca/ワンタッチ)!”という言葉だ。ワンタッチを多用しながら生み出した隙間のスペースに味方が走り込む。そしてまたワンタッチで守備網を突破する。そうした日常的に行う本気の遊びの中で磨き上げられたスキルの一つがワンツーである。

ワンツーの受け手と出し手のテクニック

 そこでまず注目すべきは、壁になる受け手のテクニックだ。……

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Profile

footballhack

社会人サッカーと独自の観戦術を掛け合わせて、グラスルーツレベルの選手や指導者に向けて技術論や戦術論を発信しているブログ「footballhack.jp」の管理人。自著に『サッカー ドリブル 懐理論』『4-4-2 ゾーンディフェンス セオリー編』『4-4-2 ゾーンディフェンス トレーニング編』『8人制サッカーの戦術』がある。すべてKindle版で配信中。

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