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まるでマフィア?ナポリがボール支配率でもセリエA首位を独走する理由

2023.03.10

第6節からセリエA首位をキープして2位インテルに勝ち点15差をつけているナポリ。独走態勢に入っているのは順位表上だけではなく、ボール支配率でも次点のフィオレンティーナを4%上回る単独トップに立っている。結果と内容ともに圧倒的な数値を叩き出している秘密を、戦術ブロガーの猫煮小判氏に探ってもらった。

 セリエA第25節。断トツのリーグ首位であり、平均ボール支配率(61%)と総得点数(58ゴール)でもトップを独走するルチャーノ・スパレッティ率いるナポリが、ホームにかつての指揮官マウリツィオ・サッリ率いるラツィオを迎えた。ボールポゼッションを重視した攻撃的サッカーという意味で、スパレッティとサッリは似た哲学を持っていると思われがちだ。しかし実際にラツィオと比較してナポリを見てみると、むしろこんな感想を抱くのではないか。

 「ロングボールも多い、ダイレクトなサッカー」

 実際にこの試合でも、ナポリは65%のボール支配率を叩き出している。この数値だけを見ればサッリのような他とは一線を画すビルドアップをするのかと、そんな期待を抱いてしまうのだが、そうではない。サッリのチームは深い位置から丁寧に繋ぎ優位性を作っていくのに対して、スパレッティのチームのDFラインは非常に高く、組み立てが特別システマチックでもなければ、組織的に優位性を作るというわけでもない。むしろ大胆にオープンな展開に持ち込んで小細工なしに攻めてくる。ボールポゼッションにこだわりを見せているわけではないが、フルタイムで見るとイニシアチブを握る場面が多く、縦への速さを見せながら、大体の時間を敵陣で過ごしている。起点作りの概念が違うのか、「自陣でのボールプレーには興味がない」と言えばよいか。

試合前に交流するサッリとスパレッティ

 ボール支配率が高い割にダイレクトなサッカーに見えてしまうロジックは相手を奥深くに押し込み、それに伴う強度の高いトランジションによる前線でのボール奪取率の高さにある。いわゆる、攻守の切り替えを主体としたハーフコートサッカーであり、論理的に相手を崩すのではなく、トランジションで上回りオープンに攻め込む。ボールを自分たちで握るというよりも、ボールを相手に渡さないという狙いでポゼッションをしているからだ。

ハーフコートサッカーのメカニズム

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ナポリ戦術

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猫煮小判

静岡県静岡市…いや、静岡県清水市に生まれ育った自称次郎長イズムの正統後継者。好きな食べ物はもつカレー、好きな漫画はちびまる子ちゃん、尊敬している人は春風亭昇太師匠。そして、1番好きなサッカーチームは清水エスパルス!という、富士山は静岡の物でもの山梨の物でもない日本の物協会会長の猫煮小判です。君が清水エスパルスを見ている時、清水エスパルスも君を見ているのだ。

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