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2023年は日本代表にとって“転換”の年になるのか。攻撃型へと舵を切るために必要なこと

2023.02.08

この記事は『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』の提供でお届けします。

2022年、ドイツ代表、スペイン代表と強豪相手に勝利を収め、その戦いぶりに日本中から称賛が送られた日本代表。一つの区切りを終えて迎える2023年、期待が高まる中でチームはどういった方向性へと進んでいくのか。今後について展望する。

アタッカーの賞味期限

 西野朗前監督から日本代表を受け継いだ森保一監督率いるチームのアタックラインは、それまでと一変した。大迫勇也はそのままだったが、トップ下に南野拓実が入り、右に堂安律、左は中島翔哉。ほんの数カ月前まで主力だった香川真司、乾貴士、原口元気が外れ、スーパーサブとして活躍した本田圭佑、岡崎慎司もいなくなった。

 新しい攻撃陣はいきなり素晴らしい個人技とコンビネーションを披露し、今後4年間はこのままで良いとすら思えた。むしろそれまでのメンバーがすでに賞味期限切れだったのを、無理して使ってきたのではないかと疑ったものだ。

 しかし、実際に4年経ってみるとこの時のメンバーも様変わりしている。新しい攻撃陣の賞味期限も4年間はもたなかったのだ。堂安は残ったが、右のレギュラーは伊東純也になっていた。南野のポジションも鎌田大地が取って代わった。左は三笘薫と久保建英が分け合う形になっていた。大迫もおらず、あの華々しかったカルテットは跡形も残っていない。

 今、日本代表の攻撃陣はあの頃以上に充実している。ブライトンで大ブレイク中の三笘はかつての中島のように絶対的だ。鎌田はブンデスリーガで地位を築き、リバプールへ移籍した時の南野以上の市場価値がついている。伊東、堂安、久保もそれぞれのクラブで活躍中だ。さらにセルティックの古橋亨梧、前田大然を加えた攻撃陣はかつてない充実の時を迎えている。

リバプール撃破を遂げたFAカップ4回戦での三笘のゴールシーン

 だが、数年後にどうなっているかわからない。アタッカーの賞味期限は我われが思うより短いのだ。吉田麻也、酒井宏樹、長友佑都の3人が変わらず君臨してきた守備陣とは対照的に、攻撃陣は大きく入れ替わった。「攻撃は水物」とよく言われるが、4年間変わらない攻撃陣というのは世界的にもあまり見ないし、半年や数週間で変化することもある。現在のアタックラインが4年後も維持されている可能性はかなり低いと考えていい。

日本は攻撃型になるべきか?

 森保監督の続投が決まり、コーチングスタッフにも入れ替えがあった。新たに入閣した名波浩、前田遼一の両コーチ、さらに噂のあった中村俊輔、中村憲剛という人選から読み取れる狙いは攻撃力の強化である。

 相手に引かれた時の攻撃力に課題があるのは明白なので、そこを何とかしたいという思いがあふれ出ている感じだ。しかし、本当にそれでいいのだろうか?

 攻撃力を強化したいのはよくわかる。誰が見てもそれが課題であり、選手たちからもより攻撃的なプレーを望む声も出てきている。ただ、ここではっきりさせておくべきことが2つあるように思う。

 まず、選手たちの言うような「ボール保持」は必ずしも攻撃強化に繋がらないということだ。それは日本が戦ったスペイン代表を見ればわかる。80%以上の保持率を記録したスペインだったが、日本に敗れた。つまり、「保持の先」をどうするのかというイメージがないまま保持力だけを上げるのは極めて危険なのだ。「保持の先」にどういうアイディアを持つのか。伊東、三笘の突破だけならこれまでと同じなので、保持力を上げたところで攻撃力も得点力もさして上がらないと考えられる。保持する前に、「保持の先」にメドをつけておくべきだ。

 もう1つは、日本がベスト16という成果を出せたのは攻撃的なプレーによるものではなかったという事実である。徹底して守備的な戦いをしたうえでドイツ代表、スペインに勝ち、クロアチア代表に引き分けたのであって、日本は決して攻撃的にプレーしていない。攻撃的にプレーしたコスタリカ代表戦は負けている。つまり、日本は守備とカウンターを得意とするチームであり、攻撃的なプレーはむしろ弱点なのだ。弱点を強化したいのはわかるが、弱点をメインにして長所を捨てるのはどう考えても理に合わない。攻撃力増強ばかりに傾倒しているようだが、森保監督がしっかりコントロールして守備的な戦いをメインに据えられるかどうかは大きなポイントになるのではないか。

攻撃型に舵を切るには千載一遇のチャンス

 2002年と2010年、日本は守備的な戦い方でベスト16に到達すると、その直後にどちらも攻撃型への転換が図られた。守備で結果を出しているのだから、それを続けるのが合理的なはずなのに、どちらもあえて攻撃型に転換している。そして、どちらも4年後にあえなく失敗している。そして今回も、同じことが起こりそうになっているわけだ。

 なぜ同じことを繰り返そうとしているのかというと、日本の目標がベスト16ではないからだ。

 ベスト16までなら、これまで成果を出してきたやり方を踏襲すればいい。しかし、ベスト8以上となるとそれだけでは難しい。守備的に戦って少ないチャンスを生かして勝つのではなく、ある程度攻撃的にプレーして勝つべき試合を勝つというチームでないとベスト8以上は難しいと、おそらくJFAは考えているのだろう。

 実際には過去にイタリア代表などの例もあるので、特定の一大会で守備的なチームが優勝するのはあり得ないことではない。ただ、毎回ベスト8やベスト4以上の結果を出すような強豪国になろうとしたら、確かに攻撃型への転換は必要だろう。

 攻撃型への転換にあたり、現在のメンバーでキーマンになるのは久保と鎌田だろう。三笘、伊東、堂安については守備的でも攻撃的でも必要なアタッカーであり、個の能力で勝負するタイプである。久保、鎌田は周囲との連係によって本領が発揮されるタイプなので、ある意味、守備的な編成では実力を出しにくい、いわば守備的戦術の犠牲になってきた2人だ。

強豪バイエルン戦でボールをキープする鎌田。フランクフルトの大黒柱となっている

 この2人の共通点は、相手の守備陣を操れること。どのようにボールを動かすと、DFはどう動き、どこに隙ができるか。それを感覚的につかんでいる。

 久保は2017年にU-20日本代表でプレーした際に、堂安や三好康児と組んで狭いスペースを突破するパスワークを再三披露していた。ユース年代といえども、すでにゾーンディフェンスが浸透していた世代である。規則的なゾーンの守り方において、DF同士の距離が近づき過ぎるのは好ましくない。久保たちは狭いスペースにパスを繋いで相手DFを圧縮させ、さらにそれ以上圧縮できずにいる隙をついて、DFの間をすり抜けていった。

MOMに選出される活躍を見せたアスレティック戦でドリブルする久保。波に乗るチームの中で光るパフォーマンスを披露し続けている

 こうした攻め方には、同じ感覚を持っている複数のアタッカーが必要になる。歴代のブラジル代表には必ずこの感覚を持っている選手がいて、現在ならばネイマールはその筆頭で若手にもロドリゴがいる。そのため、狭いスペースをバスワークとドリブルを使ってすり抜けていくのはブラジルのお家芸と言える。ただし、こうした攻め方は理論化されておらず、例えば世界的に浸透しつつあるポジショナルプレーにはこの手法は含まれない。5レーンでは成立しないからだ。唯一、ジョゼップ・グアルディオラ監督が理論化したが、結局のところ感覚的にこれを持っている選手がいなければ成立しないので、一部のチームに成功例があるだけになっている。

 圧縮させ、束にして、置き去りにする。昔からあるやり方なのだが、天才的な選手をそろえた時だけ現れる種類の攻め手だ。

 ところが、現在の日本には久保がいて、久保と連係できる堂安がいる。同種の感覚を持つ鎌田がいる。ドリブラーと思われている三笘にも、実はこの感覚がある。実は条件はそろっているのだ。

一躍時の人となった堂安。フライブルクを支える存在となっている

 歴代のブラジル代表監督も正しく理解していたかというと極めて怪しく、その代わり伝統的にそれが「ある」のは知っていて、どういう選手を起用すれば実現するかも知っていたに過ぎない。同様に、久保、鎌田、堂安、三笘を並べれば何が起こるかがわかった時、日本のプレースタイルは大きく変わる可能性がある。名波、前田、そして名前が挙がっていた中村俊輔、中村憲剛といった面々には久保や鎌田たちの良き理解者となり、彼らの後ろ盾になってくれる期待もある。

 単純に2026年を目標にした場合、攻撃へ舵を切るのは極めて危険だ。2022年をベースに攻撃力の改善をするという程度に収めるのが無難だろう。だが、もっと遠くを見た場合、どこかで転換を図らなければならず、それは人材のそろった今が絶好のタイミングかもしれない。2023年は、その意味で日本代表の重要な分岐点になるのではないか。

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<商品情報>

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Edition: Yuichiro Kubo
Photos: Getty Images

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サカつくRTW日本代表

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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