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再開後も公式戦4勝1分と急浮上中!セティエン率いるビジャレアルが突破した「最初にして最大の関門」

2023.01.19

シーズン途中での監督引き抜きに遭ったビジャレアルが絶好調だ。キケ・セティエン新体制では、発足後1分3敗の過去25年間におけるクラブ史上最低のスタートを切ったものの、直近7戦は無敗。W杯中断明けも公式戦4勝1分と勢いづく“イエローサブマリン”急浮上の理由を、現指揮官に2度取材しているスペイン在住の木村浩嗣氏が分析する。

 キケ・セティエンは途中就任に向かない。それは選手にスタイルを合わせる監督ではなく、スタイルに選手を合わせる監督だからだ。

 ベティス時代にインタビューした際にもそう言っていたし、今もそう言っている。そのやり方だと、スタイルに合わない選手が出てくる。補強に関わっていれば合った選手を連れてくることができるが、途中就任だとそうはいかない。合わない選手は使われず不満分子になりかねない。

 しかも、戦術的に妥協がない。前監督からの移行期だからと中間的な戦術を採らない。なぜなら、妥協は指揮官の迷いを選手に伝えることになり、逆にマイナスになると考えているからだ。初日から自分の信念に忠実に、ラディカルに(根源的に過激に)変える。

 途中就任に向かないことを証明したのが、リオネル・メッシと衝突し短命に終わったバルセロナ時代だった。

 今回も選手たちはウナイ・エメリからセティエンへの変化を素直に受け入れたとは言い難い。CL準決勝進出とEL優勝をもたらしたエメリは成功した監督であり、退任はアストンビラが契約解除金を払ったからであり、成績悪化によるものでなかったのだからなおさらだ。

ビジャレアルの新監督として招へいされたセティエン

「死なない」エメリ式プレスとの摩擦

 W杯前の監督交代当初、選手たちの混乱は「ボール出し」と、その後の「前進ルートとスタイル」、「ボールロスト後の振る舞い」に顕著だった。

 まずボール出しでは、エメリはプレスをかけられるとGKヘロニモ・ルリの足技を頼りに1列飛ばしてSB(特に左SB)へ蹴らせていた。このCBの頭上を越えたパスが通れば成功で、失敗してもスローインを与えるだけ。その他CBパウ・トーレスが左サイドの裏へ蹴るパターンもあった。

 対して、セティエンはCBとGKにパス交換&サイドチェンジさせて、セントラルMFまたはインサイドMFがボールを持てれば成功。セティエン式の特徴は、ボール出しの初期にSBが関わらないこと。SBは高い位置取りをして相手のMFを下げさせ、できたスペースを味方のCBとMFが使う。

 どこまでショートパスにこだわるか、どのタイミングでSBを使うかの判断に喰い違いがあった。

 2つ目のボール出し後の前進ルートは、エメリは外。サイドならばロストがカウンターに結び付く可能性が低い。リスク回避のためにサイドにボールを動かすのがエメリ流なのだ。この時特に重要なのが、縦の意識が強く大外を走り上がるSBである。対して、セティエンは内。MF3人を後方かつ内側のルートにいるSB2人がサポートし、偽CFも下がって来ることで数的有利を作って前進する。

 ここでの混乱は、早目にサイドに展開してシンプルなワンツーか2対1でサイドをえぐりたいエメリ式と、数的有利ができるまでパスとサイドチェンジを繰り返すセティエン式の間で起きていた。

20-21にクラブ史上初のEL制覇、21-22には16年ぶりのCL4強入りへとビジャレアルを導いたエメリ前監督。アストンビラへと去った功労者と後任セティエンの戦術的志向は正反対だ

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キケ・セティエンビジャレアル

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。