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体制変更のあった鹿島対G大阪は現在の構図なら…ホームで横浜FMを迎え撃つ神戸に立ちはだかる2つの壁。鳥栖のビルドアップvs 広島のハイプレスが激突! J1リーグ第34節プレビュー

2022.11.04

数々の激闘が繰り広げられてきた2022シーズンのJ1リーグも、ついに最終節を迎える。優勝、残留……すべてが決するJ1第34節の中から3試合をピックアップし、戦術に明るい西部謙司さんに展開とスコアを予想してもらった。絶賛発売中のスポーツくじ『WINNER』でスコア予想をすることで、筋書きのないドラマを存分に楽しんでほしい。

【J1リーグ】鹿島アントラーズ×ガンバ大阪 予想:1-2

 どちらもシーズン中に監督を交代している。鹿島はレネ・ヴァイラー監督を解任して岩政大樹監督を据え、G大阪は片野坂知宏監督から松田浩監督に交代した。

 効果が出ているのはG大阪の方だ。8月の監督交代からの9試合で4勝2分3敗。ここ2試合は横浜FM、磐田に2-0で勝利している。松田監督の戦術は堅固なゾーンディフェンスによる[4-4-2]で、非常に整理されているので浸透が早く、残留争いをしているチームにとって即効性がある。宇佐美貴史が負傷から復活し、レアンドロ・ペレイラやパトリックと2トップを形成。食野亮太がスーパーサブ的な働きをする。

 鹿島はヴァイラー監督の下でハイプレスと縦への速い攻め込みを戦術の軸に据え、一時は暫定首位にも立ったが、このタイプのチームにありがちな60分以降の強度の低下と陣形の間延びをどう解決するか、糸口を見つけられないまま下降して解任となった。コーチから昇格した岩政新監督は前任者よりもボール保持力を高め、押し込むことでプレッシングの効果を出そうとしたが、実はこの方法は昨季にザーゴ監督の下で試みて失敗している。結果的に同じ轍を踏むことになり、監督交代以降は福岡戦に勝利しただけ。前節(清水戦)でようやく2勝目を挙げている。

 順位は鹿島が5位、G大阪が残留争いの15位だが現時点での力は均衡していて、むしろ戦術の浸透が早くシンプルにプレーしているG大阪の方が有利かもしれない。ホームの鹿島には負けられない重圧があるが、残留争い真っ只中のG大阪も必死だ。

 典型的な[4-4-2]でミドルゾーンにブロックを構えるG大阪に対しては、ゾーンの隙間にパスを入れてバランスを崩す攻撃が定石。前節に勝利したメンバーなら、ウイングの仲間隼人、松村優太、インサイドハーフのディエゴ・ピトゥカ、船橋佑が「間受け」のキーマンになる。ここにボールを収めて素早く展開できれば鹿島のペースだが、G大阪も相手の攻め方は当然承知なので、縦パスを狙い撃ちにしてカウンターへ繋げればG大阪のペースと言える。

 鹿島はパスワークが今季のボトルネックになっていたことを考え、この構図ではG大阪のチャンスが大きいと予想した。

J1での前回対戦となる第1節のハイライト動画。このほかにルヴァンカップ(2試合)、天皇杯でも顔を合わせすべて鹿島が勝利しているがいずれも体制変更前であり、どういった展開になるかが予想のカギを握る

【J1リーグ】ヴィッセル神戸×横浜F・マリノス 予想:2-4

 降格圏から脱した神戸は大迫勇也が復活し、夏に加入した小林祐希の活躍が光る。大崎怜央がボランチに定着して山口蛍と組み、武藤嘉紀と汰木康成のサイドアタックも強力だ。もともと個々の選手の能力は高く、戦い方が定まった現在の神戸は最下位に低迷していたときとは違うチームと言っていい。

 連敗の後の浦和戦を快勝した横浜FMは勝てば優勝、得失点差が2位の川崎とは11も離れているので引き分けでも優勝できる。負けなければいい試合になるが、これまで通り攻撃的な試合をするだろう。

 神戸がどう出るかで試合の色合いは変わるが、降格の可能性がなくなっているのでホームで普段通りの戦い方を選択するのではないか。そうなると、横浜FMのハイプレスを外せるかどうかが第1のポイントになる。神戸はビルドアップの巧いチームなので、これに関してはクリアできるかもしれない。もし、横浜FMのハイプレスの餌食にはならず押し返せるとするなら、試合は攻め合いの様相になるだろう。

 そこで第2のポイントとなるのは攻撃力と決定力だ。神戸はここ6試合を無得点で終わったことがなく着実に得点しているが、横浜FMの破壊力には及ばないだろう。神戸が勝つには2つの壁を越えなければならず、優勝の懸かった横浜FMの勢いを止めるのは難しいのではないか。

前回対戦となる、ACLラウンド16のハイライト動画。この時は戦前の下馬評を覆し、神戸が3-2で勝利を収めている。有利な状況ではあるものの、横浜FMにかかる優勝争いの重圧もポイントになりそうだ

【J1リーグ】サガン鳥栖×サンフレッチェ広島 予想:1-2

 GK朴一圭がフィールドプレーヤー化する「偽GK」とも呼ぶべき画期的な戦法の鳥栖のビルドアップに対して、ハイプレスを最も機能させたチームである広島という興味深いカードだ。

 広島は2シャドーの森島司、満田誠のプレッシングが非常に速く、この2人の鋭い寄せを合図に全体が前がかりにプレスを仕掛けていく。鳥栖がこのハイプレスを外せるかどうか。GKのプラス1というアドバンテージがあるだけに、鳥栖が広島のプレスを無効化できる可能性は高いのではないか。

 さらに、前がかりになった時の広島はしばしばDFが相手のFWと同数になることがあり、鳥栖はGK朴のロングパスでそこを突いていくはずだ。ただ、広島の3バックは対人守備に強く、それがハイプレスの保険になっている。この1対1のバトルで有利になれば鳥栖にチャンスがある。終盤に調子を上げている宮代大聖、フィジカルの強い垣田裕暉の活躍があれば鳥栖にアドバンテージがある。

 一方で、広島のハイプレスが何度かハマって高い位置でボールを奪えれば、朴が前に出ていてガラ空きのゴールを狙えるかもしれない。

 広島はボランチのポジションを勝ち取った川村拓夢がダイナミックな動きを見せている。攻撃に人数を投入する鳥栖は、中盤の広いエリアを小泉慶がカバーしているが、川村はスペースを通過する走力があるので、鳥栖はそれを抑えられないと厳しい状況になるだろう。

前回は開幕節でぶつかった両雄。この試合含め過去5度の対戦中4度がドロー、うち3試合がスコアレスと拮抗したゲームを演じているが、今回はどういった展開になるだろうか

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※この記事は『日本スポーツ振興センター』の提供でお届けします。本記事は日本スポーツ振興センターから委託を受けて制作しており、日本スポーツ振興センターが内容の信憑性を保証するものではございません。

Photo: Getty Images

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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