SPECIAL

5連勝でプレミア首位!覚醒したアルテタ・アーセナルの4つのリニューアルポイント

2022.09.02

昨シーズン、アルテタ率いる若いチームが躍動し、CL出場権に迫ったアーセナル。復活への道を歩み始めた名門が、今シーズンのプレミアリーグ序盤戦を引っ張っている。昨季わずかに足りなかった部分が改善され、チームの完成度が向上しているのだ。そのリニューアルポイントを分析してみよう。

 アストンビラ戦に勝利し、18年ぶりのリーグ戦5連勝を達成したアーセナル。「対戦相手がイージーである」などと揶揄される声もちらほら聞こえるが、いわゆる「イージー」な対戦相手に対しても屈し続けてきたここ数年を考えれば、開幕から首位をひた走っている姿は感慨深いと言えるだろう。

 今回はアーセナルの開幕5試合で見られた好調の要因について検証してみたい。

①ジンチェンコ加入で左サイドの流動性が増加

 まず、昨季と比べての大きな変化はビルドアップのルートである。昨シーズンまではアンカーのトーマスが封じられると前進の手段がなくなってしまい、両サイドのウイングにロングボールを当て続けるサッカーに終始していた。その課題を解決するため、今季はアンカーを経由せずともショートパス主体で前進をすることにトライしている。

 主役となっているのはマンチェスター・シティからやってきたジンチェンコだ。左SBとしての上下動だけでなく、インサイドに絞りながらMFのようなタスクも行うことができる。今までトーマスの補助といえばもっぱらセントラルMFとして横に並ぶジャカの仕事であったが、これをジンチェンコと分担できるようになった。

 ジンチェンコの優れているところは1つのポジションに留まることなく、ピッチ上のあらゆる空いている場所に顔を出しながらプレーができること。昨季までのアーセナルのショートパス主体の組み立ての難点はシステマティック過ぎることだった。土台を作る時期であったこともあるだろうが、幅取り役、中盤から最終ラインに降りる役など選手一人ひとりに与えられていた役割をこなしていた部分があった。よって、初期の配置にプレスをはめられると手詰まりになりがちだった。

 ジンチェンコが入ったことでアーセナルの左サイドはポジションチェンジの頻度が大幅に増加。彼自身が動くだけでなく、マルティネッリがハーフスペースの低い位置まで降りてきたり、ジャカが大外や前線に出ていくなど、既存戦力が昨年までは見られなかったプレーを見せることが非常に多くなった。これはジンチェンコ加入による相乗効果と言えるだろう。

 ジンチェンコがもう一つもたらしたものはキック精度である。少ないモーションで長く正確なキックを蹴ることができるという点でも、これまではトーマスが唯一無二の存在だった。ジンチェンコはその部分でもトーマスを助けることができる。長いキックを難なく蹴れるという点でもジンチェンコのスキルは抜きん出ている。ピッチを広く使いながら攻めるために必要不可欠と言えるだろう。大きな展開を担える存在が増えたことでトーマスの負荷が軽減されることになる。

シティから移籍したジンチェンコ。すでにチームに欠かせない存在と思わせるほどのパフォーマンスを披露した

 それだけでなくビルドアップに関与していたサカ、ウーデゴールのような2列目の選手が前方のタスクに集中できる。最前線のジェズス(彼の大活躍ももちろん今季のアーセナルの絶好調の要因だ)はゴール前だけでなく、左サイドに流れながらチャンスメイクを行うことも多い。右サイドの選手たちはこれまで以上にゴール前に飛び込むことが求められるだろう。ウーデゴールはボーンマス戦で早速そうしたゴール前までの飛び込みから得点という結果を出している。

 後方のビルドアップ手段の充実は、こうしたスコア手段の増加にまで貢献しているのである。

②新境地の開拓とバランサー、2つの顔を見せるジャカ

……

残り:2,819文字/全文:4,381文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

アーセナル

Profile

せこ

野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。

RANKING