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韓国に快勝。改善の先にあったのは“日本”が積み重ねてきたスタイルだった【E-1 日本分析】

2022.07.29

大会制覇のためには勝利が絶対条件となった韓国代表との決戦に勝ち、東アジアの王座に返り咲いた日本代表。このメンバーでの集大成となった一戦でのパフォーマンスを、らいかーると氏が分析する。

 勝たなければ優勝できない日本と、引き分けでも優勝できる韓国の姿勢の差がピッチに影響を与えたかのような序盤戦となった。パウロ・ベントが就任して以降の韓国を象徴するように、引き分けでも問題ない韓国はGKをビルドアップに組み込んで、普段から自分たちが志向するスタイルで試合を進めようと画策した。引き分けでも優勝できない日本は韓国にボールを保持させながらも、GKやCBから出たボールを奪い取ることで、一気に韓国ゴールに攻め込む意思を見せていた。

 1列目の町野修斗と西村拓真の献身性は、この試合へのチーム全体の想いを示すものとして十分過ぎるものだった。韓国のビルドアップを何度もやり直すことを許さず、相手の選択肢を削りながら、ボールの前進を時間制限のある状況に追い込むことによって、韓国のビルドアップの精度を落とすことに繰り返し成功していた。特に韓国のGKに対して、左足でボールを蹴らせるようにプレッシングをかけていた場面は効果的に機能。ちなみに、これは育成年代あるあるなプレッシングである。

相手と激しく体をぶつけ合う西村。攻撃面だけでなく守備面でも貢献した

 ビルドアップの出口が見つからない韓国はハイボールを選択肢に混ぜながらボールを前進しようと企むが、谷口彰悟を中心に高さ勝負でも劣らなかったこともあって、日本はまずはプレッシングから!というコンセプトを愚直にこなすことに成功する。ただし、ハイボールに競り勝ったとしても味方に有利な状況を作れる場面もあれば、そうでない場面も多かった。確実にマイボールにするためにどのように跳ね返すか?は今後も課題として残っていくだろう。

 ビルドアップの出口が見つからない韓国は、アンカーやインサイドハーフの選手の列を下ろして変化を生み出そうとするが、日本は色気を出さずについていくところはついていく、放置するとことは放置する約束事が機能していたこともあって、韓国は志向しているボール保持からチャンスを作れそうな雰囲気はほとんどなかった。横浜F・マリノスコンビの藤田譲瑠チマ、岩田智輝が強度勝負をまったくためらわなかったことも、日本にとって大きなポイントだったことは言うまでもない。

 ただし、チーム全体として激しくボールを奪いに行く姿勢が時には仇になることもある。例えば、相手が準備万端で待ち構えているところにボールを奪いに行ってもボールを奪うことは困難だろう。1列目のように選択肢を削ることやボールの誘導を目指す状況と、ボールを奪うのか、相手に前進させないかの状況判断は難しいものがある。よって、日本の強度が審判の基準と合わないと、そのボールの奪い方、相手へのチャレンジはファウルであると判断されることもしばしばだ。日本のファウルが最近多いことはある意味でチームの方針通りと言えるかもしれないし、無謀なボール奪取が多いとも言えるかもしれない。

改善されたボール保持時の役割分担

 韓国のボール保持が効果的でなかったことから、日本のボール保持に順番が回ってきそうなものである。しかし、8分までそのような場面はなかった。日本はボールを奪ったらまずは速攻のハイテンポなサッカーを実行し、その中心人物は相馬勇紀であった。相手の守備の配置が整っていないうちに、相馬の得意のスピードを活かして一気にゴールに迫ることは、個性を発揮する意味でも論理的であっただろう。サイドから相手陣地の深くに侵入することが多くなった日本は、自然とCKの獲得本数も多くなっていった。

 10分を過ぎると、日本のプレッシングの勢いも徐々に落ち着いたものとなっていった。西村がアンカーを見て、町野が相手のボール保持の方向を制限する形に落ち着いていくと、韓国は捕まっている中盤の選手よりも前線の選手を目がけてパスをする回数が増えていく。ゼロトップ風味の選手が増えてきている世界の流行は、マンマークに対する手当として段々と標準化していくかもしれない。論理的な韓国だが、論理的なのに効果的でないという現状はなかなか酷なものと言えるだろう。

 日本もボールを保持して試合を展開したいが、守田英正と田中碧のように列を下りて試合のテンポを遅らせるようなプレーを藤田、岩田コンビが行う気配はまるでなかった。この試合ではボールを保持する展開になれば受け入れるけれど、基本はカウンターと速攻で過ごしていくプランだったのだろう。まずは守備から。韓国のインサイドハーフが日本のセントラルハーフを捕まえている状況も相まって、町野へのシンプルなロングボールが目立つ展開でもあった。

 そんな展開を変化させるターニングポイントとなったのは、相馬がポストにぶつけたショートカウンターの場面だった。アンカー番の西村の執拗なプレッシングから相馬がボールを奪ってのカウンターは、韓国に悩みを抱かせるには十分だったのだろう。おそらくだが、ビルドアップがうまく機能しないことがリスクとなって現れたことや暑さもあいまって、韓国も徐々に撤退風味に変化。よって、20分以降は日本がボールを保持する展開が増えていくようになる。

 日本のボール保持は、藤田がインサイドハーフのように振る舞うことを合図に、W杯アジア最終予選で日本が積み重ねてきたスタイルに非常に似通ってきた。中国戦でどのポジションの選手がどのレーンを埋めるかで迷いに迷っていた状況を改善するために、基本的に西村は左サイド、セントラルハーフの片方の選手が右サイドと役割がはっきりとしていた。もちろん、それらがぐちゃぐちゃになることもチーム森保の特徴なのだが、最初の補助線としては間違いのない役割分担であった。

 ただし、後方支援を誰がやるのか問題はまだまだ阿吽(あうん)の呼吸で整備されていない状況だった。後方支援をやろうとする選手が不在だったり重なったり、セントラルハーフの選手が2人ともに上がってしまい、CBがさらされて危うい場面を作られたりと、急造のチームらしい場面も何度か見られたが、そのミスをゴールに繋げるほどのクオリティを韓国が示すこともできなかった。

韓国の問題点

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EAFF E-1サッカー選手権日本代表韓国代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ち。サッカー指導者にもかかわらず、様々な媒体で記事を寄稿するようになってしまった。ただ、書くことは非常に勉強になるので、他の指導者も参加してくれないかなと心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』