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ダービー3部落ちも、男を上げた監督ルーニー。未来のユナイテッド指揮官ここにあり【現地ルポ】

2022.04.26

経営破綻に伴う勝ち点「−21」は重く、チャンピオンシップ(イングランド2部)からの降格が確定したダービー・カウンティ。しかし、そのチームを指揮した36歳の青年(見た目は中年)監督――スタメンの半数以上が21歳以下の若い集団を率いて、ベンチ前で意外なほど冷静な姿を見せながら、古巣マンチェスター・ユナイテッドに爪の垢でも煎じて飲ませたいほどの一体感を作り出し、ポイント剥奪処分がなければ残留できただけの結果を残したウェイン・ルーニーには、称賛の声が集まっているという。3部落ちが決まった4月18日のQPR戦を、ロンドン在住の山中忍さんが現地で取材した。

「−21」の逆境でも、選手とファンに「誇り」を

 4月21日、『BBCテレビ』のニュースでは、来季からマンチェスター・ユナイテッドで指揮を執ることが決まったエリック・テン・ハーフが「攻撃的なサッカーを志向し、若手の力を最大限に引き出す監督」と紹介されていた。同じ表現が当てはまる“未来”のユナイテッド監督がもう1人。歴代得点王としてクラブとの縁もあるウェイン・ルーニーだ。その3日前に、ダービーを率いてチャンピオンシップ(2部)からの降格が決まったばかりではある。しかし、昨年1月から正監督を務める36歳は、リーグ1(3部)に落ちるクラブで男を上げた。

 個人的には、チャンピオンシップの今季最優秀監督に選びたいぐらいだ。経営破綻に伴い昨年9月に管財人の手に委ねられ、フットボールリーグ(2〜4部)から計「21」に上る2度のポイント剥奪制裁を受けたダービーは、残り4試合(全46節)の時点まで微かな望みが残されていたこと自体が成果だと言える。そのことを理解しているサポーターたちは、アウェイで降格の運命を突きつけられた4月18日の第43節QPR戦(●1-0)でも、試合後にゴール裏のスタンドで総立ちのまま指揮官の名を連呼してチームの健闘を称えていた。

 単にビッグネームの元選手であることによる「ウェイン・ルーニー!」コールではなかった。プレミアリーグ昇格を争っていた18-19シーズンにも当時の監督だったフランク・ランパード(現エバートン)のチャントを歌っていたが、向かい風が強まる一方の残留争いでチームの先頭に立った現監督とは、より距離が近く、より信頼が強いように感じられた。心の中に「諦め」が芽生えても不思議ではない逆境の中で、選手にもファンにも戦う意欲と希望、そして大切な誇りを持たせ続けた存在がルーニーだったのだ。

QPR戦後、健闘を称えるファンの声援に応えて

 ランパード体制下での1年は、プレミア昇格を狙った経営面での無理が祟(たた)り始める前のラストシーズンだった。2019年5月の昇格プレーオフ決勝でピッチに立ったダービー選手14人のうち、今も残っている選手は、控えGKのケレ・ルースとFWのトム・ローレンスしかいない。運命のQPR戦でも、先発イレブンの6人が、3人のティーンエイジャーを含む21歳以下。今季前半戦では、攻撃に主眼を置くチーム後方の“保険”として、37歳のカーティス・デイビスと39歳のフィル・ジャギエルカ(現ストーク)が大ベテランCBコンビを組んでいたが、補強禁止処分も下っていたクラブは年明けに契約が切れた後者との再契約が許されず、ユースから引き上げられた20歳のエラン・キャシンが起用されるようになっていた。残留争いのプレッシャーはもちろん、1軍戦での経験自体が乏しい集団が、剥奪処分さえなければリーグ戦43試合で勝ち点52(13勝13分17敗)を獲得し、降格圏から18ポイント分離れた24チーム中17位という安全圏に到達していたことになる。

「監督には向かない」を大きく裏切って

 指揮官の若さを考えれば、なおさら特筆に値する仕事ぶりだ。ルーニーの見た目は、現役当時から肉づきの良かった体が軽くひと回りは大きくなり、恰幅の良い中年風。腕組みをして戦況を見つめる後ろ姿などは、隣のテクニカルエリアに立つQPRのマーク・ウォーバートン監督(59歳)にも負けない貫禄を漂わせていた。だが、その実態は現役引退2年目の青年監督に他ならない。……

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ウェイン・ルーニーダービー

Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。在住も20年を超えた西ロンドンが第二の故郷。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。