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本職MF2人をCB起用。ナーゲルスマン時代より極端かつ大胆なホッフェンハイムの「リベロ」システムを紐解く

2022.02.22

第23節終了時点で、4位から9位までの6チームが勝ち点3の中にひしめく大混戦となっているブンデスリーガ。その中で、戦術的にひときわ異彩を放っているのが5位につけるホッフェンハイムだ。かつてはユリアン・ナーゲルスマンがその理論を存分に披露し躍進を遂げた彼らが今挑んでいる、ナーゲルスマン時代以上という「リベロ」システムのメカニズムを分析する。

 チームを降格の危機から救い、CL出場権を手にするまでに成長させたユリアン・ナーゲルスマン監督がクラブを去ってから3シーズン目を迎えているホッフェンハイム。今季は第23節終了時点で4位RBライプツィヒと同勝ち点の5位と好順位につけている。

 現在チームの指揮を執るのはセバスティアン・ヘーネス。バイエルンの元会長ウリ・ヘーネスの甥にあたるヘーネスは、ナーゲルスマン時代のエッセンスを残しつつより攻撃志向の強いサッカーを展開している。最大の特徴は、11番を背負う本職セントラルハーフのフロリアン・グリリッチュをCB起用している点だ。5バックの中央に位置する彼は現代版「リベロ」として高い位置での役割もこなし、ビルドアップにおいて他チームではほとんど見られない特異な輝きを放っている。

 今回はその特徴的なリベロの機能性を中心に、ホッフェンハイムの戦術を紐解いていく。

特徴的なビルドアップの仕組み

 リベロのグリリッチュは、ホッフェンハイムのビルドアップの中心を担う。DFラインの中央でボールを受けると、前だけでなく横方向にもドリブルを行うことで、まずは受け手に頼るのではなく自分自身でパスコースの創出を目指す。パスコースが出来上がればシンプルにボールをさばき、自身はそのままCBの位置を離れて前進。相手の守備のファーストラインを通過することを目標に、下記へとポジションを移す。

1. 局所的な数的優位を生み出せる位置
2. 相手の守備のファーストラインとセカンドラインの間のスペース

パスを展開したグリリッチュは前方のスペースへ。右CB→右ウイングバックと渡ったボールを再び引き取り崩しの局面へと加わっていく

……

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ケビン・フォクトセバスティアン・ヘーネスフロリアン・グリリッチュホッフェンハイム

Profile

とんとん

1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。

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