SPECIAL

なぜ今「ホームタウン制度改革」が求められるのか? Jリーグにも必要な「成長と分配の好循環」

2021.10.23

10月17日に報道され衝撃が走ったJリーグの「ホームタウン制撤廃」の報。すぐさまJリーグにより否定されたものの、その後「撤廃」ではなく「改革」を検討していることが明らかとなった。なぜ、Jリーグはこのタイミングでリーグの根幹を成してきた制度の変更へと舵を切ろうとしているのか。その背景事情や狙いについて、かつては楽天にて、現在はシティ・フットボール・ジャパンの代表としてJおよび欧州クラブのフロント事情や世界のスポーツビジネスシーンの最前線を知る利重孝夫が解説する。

 先週末、Jリーグが「ホームタウン制度を撤廃」するとの記事が掲載され物議を醸した。しかしそんな事実はあるはずもなく、即座に「ホームタウン制度は維持」される旨、記事内容を否定するリリースが公式に出され、さらに後日「ホームタウン制度の改革」を進めている旨が明らかとなった。

 地元以外でのマーケティング・営業活動を認めようとする今回の動きに対して、ホームタウン制度の撤廃?あるいは継続?といったレベルでの関心にとどめることなく、その内容や背景を正しく理解し、Jリーグの新たなイニシアティブを盛り立てていくことがとても重要だと感じている。

 大目的としてはJリーグ全体の事業規模の拡大であり、その礎となる新規ファンの獲得にある。そのために必要な各クラブによる営業推進、自助努力するクラブの営業機会創出のための規制緩和について活発な議論が行われているものと思われる。

 1992年の発足以降現在に至るまで、Jリーグは大きな発展を遂げてきた。その成長を支えた要因の一つが「地域密着」の基本理念、ビジネスモデルにあったことは疑う余地がない。「地域密着」の概念はこの30年間で完全に定着し、地域に立脚しながら基盤作りを行ったJクラブは全国に広がり、今日現在57クラブを数えるまでになった。

 しかし、その一方で明らかに業界全体の成長は鈍化してきており、現行ホームタウン制度の下でクラブ数を増やしていく裾野の拡大だけでは限界に近付いてきていることも事実である。直近ではJリーグから総クラブ数を上限60とする方針が示され、日々の現場においても、自らのホームタウンエリア(縄張り)では他クラブの活動を許さない閉鎖的な態度の応酬や、足の引っ張り合いも散見され、規制緩和の必要性を強く感じていたところだった。……

残り:3,880文字/全文:4,850文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

Jリーグビジネスホームタウン制度

Profile

利重 孝夫

(株)ソル・メディア代表取締役社長。東京大学ア式蹴球部総監督。2000年代に楽天(株)にて東京ヴェルディメインスポンサー、ヴィッセル神戸事業譲受、FCバルセロナとの提携案件をリード。2014年よりシティ・フットボール・ジャパン(株)代表も兼ねる。

RANKING