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リバプールに必要なのはデモではなく対話。現地サポーターが描く、オーナーと共存する未来

2021.05.22

スピリット・オブ・シャンクリー会長インタビュー後編

4月18日に発表された欧州スーパーリーグ(ESL)構想。その創設クラブとしてプレミアリーグからはリバプール、マンチェスター・シティ、 マンチェスター・ユナイテッド、 チェルシー、アーセナル、トッテナムのいわゆる「ビッグ6」が名を連ねたが、地元でクラブを支えるサポーターたちは猛抗議。わずか2日後には、全クラブがESL撤退へと追い込まれていた。

サッカーの母国イングランドではクラブごとに、「サポーターズトラスト」や「サポーターズユニオン」、「サポーターズグループ」と呼ばれるファン同士が集まって結成した組織がある。

例えば「シャンクリーの精神」と名づけられたスピリット・オブ・シャンクリー(SOS)は、クラブや大会の都合で不利益を被ったファンを守るリバプールのサポーターズユニオンだ。SOSの運営委員は問題解決を目指して直々にクラブと交渉の席に着き、ファンの率直な声を届けるという重要な役割を果たしている。

ファンとクラブの橋渡し役も担っているサポーター集団は、今回のESLをめぐる騒動をどのように受け止めているのか? SOS会長のジョー・ブロット氏にオンラインで詳しく話を聞いた。

後編では、リバプールサポーターがデモを行わなかった理由、クラブに対するアクション、そして「レガシーファン」の是非について掘り下げる。

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リバプールファンがデモを行わない理由

SOSのメンバーのうち89%がオーナーとの話し合いを望んでいる

――リバプールが4月18日夜にESL参加を発表した後、SOSは翌19日午後に他の5クラブのサポーターズトラストとだけではなく、アンフィールドに掲げるバナーやフラッグを作成しているSpion Kop 1906、LGBT支援を行っているKop Out、障害のあるファンやその家族を支援しているLiverpool Disabled Supporters Association、Liverpool Women Supporters Club、LFC Supporters’ Committeeらリバプールのファングループとも共同声明を発表しています。「ESLは金銭欲の追求のためにフットボールの競争原理を踏みにじり、クラブの歴史と名声を亡きものにし、リバプールの名前を汚すものです」とFSGを厳しく非難しました。

 ですが、チェルシーファンが見せたような抗議デモには至っていませんよね。ESL撤退表明後には、アーセナルファンやマンチェスター・ユナイテッドファンも、大規模なデモ活動を行っています。11年前にはSOSも前オーナーに対して抗議デモを行っていましたが、今回実施しなかったのはなぜですか?

 「SOSは民主的な組織です。どういうアクションをとるべきか、まずはメンバーの声を聞いています。今回はFSGと話し合っていくべきだという意見の方が多かったのです。全メンバーにアンケートを取りましたが、オーナーの撤退を望む人は17%と少なく、89%が今後もFSGとの話し合いを続けていくことを希望しているとわかりました。私たちファンとオーナーの関係は、完全に壊れてしまったわけではありません」

――リバプールの公式サイトには、フロレンティーノ・ペレス(レアル・マドリー社長)、アンドレア・アニエッリ(ユベントス会長)、ジョエル・グレイザー(マンチェスター・ユナイテッド会長)のコメントが掲載されただけで、FSG社長のジョン・ヘンリーやクラブCEOのビリー・ホーガンの言葉はなく、4月19日になってもクラブ上層部から何の説明もありませんでした。一方同日夜にリバプールはアウェイでリーズとの試合を戦ったため、ファンやジャーナリストから批判が噴出する中で監督のユルゲン・クロップがESLについて話さなければいけませんでした。試合後には、副将のジェイムズ・ミルナーも質問されていましたが、彼らをご覧になってどう思われましたか?……

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スピリット・オブ・シャンクリーリバプール文化欧州スーパーリーグ

Profile

田丸 由美子

ライター、フォトグラファー、大学講師、リバプール・サポーターズクラブ日本支部代表。年に2、3回のペースでヨーロッパを訪れ、リバプールの試合を中心に観戦するかたわら現地のファンを取材。イングランドのファンカルチャーやファンアクティビストたちの活動を紹介する記事を執筆中。ライフワークとして、ヨーロッパのフットボールスタジアムの写真を撮り続けている。スタジアムでウェディングフォトの撮影をしたことも。