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「面白くないですか? 40歳で、とりあえず飛び込んでみるって」――松井大輔がベトナムに行く理由

2021.03.29

Jリーグ復帰から3年、男は再び世界に飛び出した。5月には40歳を迎える2021年、日本を含め6カ国12クラブ目となる新天地は、ベトナム1部リーグのサイゴンFC(Saigon FC)だった。1月17日のデビューから約2カ月。その挑戦の背景や現状、そして自身も「想像していなかった」というサッカー人生について、初の海外移籍となったルマン時代(2004〜08年)を振り返りつつ、ホーチミンからオンラインで応じてくれたインタビューを前後編でお届けする。

僕は決まったらすぐに行っちゃう

こっちの方がいろんな体験ができるんじゃないかって

――ベトナム1部リーグへの参戦が発表されたのは昨年12月3日のこと。今回の移籍はサイゴンFC からオファーがあったのでしょうか?

 「そうですね。もともとサイゴンFCとFC東京が提携していて(2020年4月に締結)、Jリーグから経験のある選手を獲得しようとなった時、何人かの候補の中に自分の名前も挙がったそうでして。『海外といったら松井だろう』ということで話をくれたんです」

――この移籍のニュースを聞いた時には、松井選手らしいな、と。

 「面白くないですか? 日本での現状も自分の中でわかっていました。今39歳で、今年はもう(5月11日で)40歳になる。40でまだ国内でやれるのもいいんですけど、なかなか試合に出られなかったりするのも嫌だし、こっちの方がいろんな体験ができるんじゃないかって。楽しみやワクワク感の方が大きいから、とりあえず飛び込んでみるのが面白いかなと思ったんです」

――ご家族の反応は?

 「僕は決まったらすぐに行っちゃうんで、毎回(笑)。『やめて』とはあまり言われたことはないです。奥さんは鹿児島の出身でもあって、どっしりしているというのはありますね」

――現在、ベトナムは入国制限も厳しいと聞きますが、移動は大変だったのでは?

 「入ってから2週間隔離なので大変でしたよ。ホテルを取ってくれて、トレーニング器具なども持ってきてくれたんですが、あの時が一番大変でした。まず外に出られない。外の空気が吸えないんです、窓も全部閉め切りで。実質15日間、あれはすごく大変でした。いったん全部、筋肉が落ちましたね」

――食事は?

 「外から持ってきてくれるんです。朝・昼・晩の3回、ピンポ~ンって。ドアを開けるその時に、ほんの少しだけ、外界と接触できるという(苦笑)」

――アスリートの筋肉が落ちるほどというのは、かなり大変ですね。

 「いやぁ~もう〜、ほんっとに大変でしたね、そこからコンディションを上げていくのは。すぐに試合があって、もう2週間後だったんです。走れないとダメなので1週間はずっと走って、ずっと2部練をやって、いたるところがだんだん痛くなってくるんですけど、筋肉を戻すために筋トレもして」

――年齢とともに、どのくらいリカバリーに時間がかかるか、どこまで体を追い込めるかといった部分も変わってきますか?

 「落ちたのはすぐにわかりますね。走ってないと、すぐ息が切れちゃう。だから(鍛えることを)止められないですよ。35歳を過ぎたら止まっちゃダメですね。Jリーグや海外のクラブでも、普通は開幕に向けて6週から8週は合宿をやりますし、2週で体を作るのは無理なんです。30を過ぎると4週でも無理。ベトナムだったから良かったですけど、日本だったら走れないし、全然ついていけなかったと思います」

――ベトナムだったから、というのはサッカーのレベル的に?

 「レベルもそうですし、ポジション的にも。最初は2トップの一角というか、トップ下でプレーさせてもらったんです。もう『守らなくていい』ということで、こっちも『ボールを入れてくれれば決めるよ』みたいな感じで」

――年齢が上がったらコンスタントに試合に出た方がいいんですね。疲れを溜めないように休みながらの方がいいのかなという印象でしたが、逆だとは。

 「毎回出ていた方がサイクルがしっかりできて、筋肉も試合用の筋肉になるので、僕はその方が長く続けられると思います。絶対、やらないと。止まっちゃダメ。きつい練習をした方がいいですね」

会長の考えに興味を持った

「サイゴンに恩返ししたい、国に貢献していきたい」……

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サイゴンFC松井大輔

Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。