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福山シティ監督に聞く、天皇杯・秋田戦の真実【小谷野拓夢×五百蔵容(前編)】

2021.03.02

昨年の天皇杯でジャイアントキリングを連発し、6部クラブながら準々決勝進出の快挙を達成した福山シティ。その準々決勝のブラウブリッツ秋田戦で見せたパフォーマンスに、『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の著者である五百蔵容氏が感銘を受けたことから、指揮官の小谷野拓夢監督との対談が実現。

前編では、福山が目指すポジショナルプレーの解釈、J3王者・秋田のストロングポイント、そして試合の裏で起きていた興味深い駆け引きを当事者に直撃した。

軍事論から見たポジショナルプレー

――まずは、福山シティ対秋田戦をテーマにお話しさせてください。かなり準備して試合に臨まれたのでしょうか?

小谷野「正直なところ、昨季は分析ができるコーチングスタッフが自分しかいませんでした。なので、秋田戦(12月23日)の前に福井戦(12月20日)がありましたけど、福井戦に臨む準備をしながら同時進行で秋田戦はできませんから、準備期間としては福井戦が20日の15時に終わってから中2日だけでしたね。ほとんど寝られなかったです」

――移動の時間もありますし、練習時間も限られますよね。

小谷野「そうですね。得点の6割がセットプレーというデータが出ていましたし、秋田さんは本当にセットプレーが強いので。そこをどう対策するか、CK、FK、ロングスローをいつもより時間をかけて徹底的にやりました。うちに対してロングスローをやってきたチームはこれまでなかったので、初めての対応でした。試合でロングスローからの失点はありませんでしたが、重要なキーファクターと捉えて準備しました」

五百蔵「むしろ秋田の方が福山シティを分析している印象がありました」

――今回の対談は五百蔵さんが秋田戦に感銘を受けたことがきっかけですが、具体的にどういう部分が気になりました?

五百蔵「まず福山シティに対しての感想ですが、フルマッチで見たのは秋田戦が初めてで、それ以前の天皇杯の試合はハイライトしか手に入らなかったのですが、正直ハイライトを見ているだけでも、ビルドアップは相当洗練されているなと感じました。特に凄いと思ったのは、ただ単にポジショナルプレーの配置的優位をうまくやっているだけではなくて、J1やJ2のポジショナルプレーをやっているクラブでも苦労する個々の選手のコーディネーション、必要なボールの持ち方や体の使い方がかなりできていて、ビルドアップが想定通りにスムーズにいっているという印象を受けました。逆に明らかにビルドアップに優れたチームなので、秋田はそこをとにかく消しにくるだろうなと。

 話は少し逸れますけど、僕が今書いている本に関連するのですが、ナポレオンはポジショナルプレーを軍事史上初めて具体化した人でした。ナポレオンの軍隊の強みは、相手が間に合わないような決戦場になる場所への集結が相手より速く、多くの部隊が間に合うこと。逆に負けた戦いは数回しかないんですけれど、ナポレオン側が決戦場に集結するのが間に合わなかった時には負けている。ポジショナルプレーを成功させた時は勝って、成功しなかった時は負けているんですね」

――そのナポレオンの戦い方がどうポジショナルプレーに結びつくのでしょうか?……

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戦術福山シティFC

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。