「THE10番」イスコらベテラン軍団の芳醇な香り。名将ペジェグリーニ7年目、ベティスの「成熟の中庸」
新・戦術リストランテ VOL.133
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第133回は、リーガでバルセロナ、レアル・マドリーに次ぐ3位につけるベティス。昨季はCL出場権も獲得したオトラ・リーガの雄は、名将マヌエル・ペジェグリーニが7年間熟成した芳醇な香りを放つ逸品だ。「最新」だけが正解ではない。古くても強いベティスの秘密に迫る。
特別でないからこその「特別感」
マヌエル・ペジェグリーニ監督が率いて7シーズン目。ベティスがリーグ3位につけています。4勝1敗は第6節を消化した2位レアル・マドリーと第5節時点で同じでした。
第4節ではホームでレアル・マドリー相手に白星。昨季5位だったのでCLにも出場しています。初戦はリールにアウェイで2-3勝利。今季6試合で敗れたのは第3節レバンテ戦のみです。
御年73歳のペジェグリーニはチリ人。ウニベルシダド・チリに始まって、アルゼンチンではサンロレンソ、リーベル・プレートを率いて優勝、ビジャレアルをCLベスト4へ導き、レアル・マドリーで勝ち点96を稼ぎながらグアルディオラ監督のバルセロナに及ばず1シーズンで解任。マラガを降格候補から上位に押し上げ、マンチェスター・シティでプレミアリーグ優勝。ベティスの監督に就任したのは2020年です。
大ベテラン監督の戦術は不動の[4-4-2]。目新しさは皆無です。記憶にある限り、ずっと変わっていないので少なくとも20年は同じですね。ハイプレス? やりません。古典的な10番がいます。ラインは高めですがハイラインまではいきません。昔、南米でよく言われていた3分の2プレス。凄く普通です。というより、このレベルのチームとしては古いといっていいでしょう。けれども強い。
主力メンバーの多くはビッグクラブでプレーしたベテランが多いですね。
かつてバルセロナで活躍したマルク・バルトラが35歳。アーセナルの快足SBだったエクトル・ベジェリン31歳。パリ・サンジェルマンにいたジオバンニ・ロチェルソ30歳。バイエルン、リーズでプレーしたマルク・ロカ29歳。
アヤックスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍したアントニー(26歳)もいます。年齢的にベテランまでいかないアブデ・エザルズリ(24歳)はバルセロナの印象が強いですね。ロドリゴ・リケルメ(26歳)は昨季までアトレティコ・マドリーでした。
そんなに若い選手がいない。かつて将来を嘱望され、それなりに活躍はしたけれども、いわば青雲を踏み外した実力者たちが集められています。そんなにお金もなさそうなのに、よくこれだけのメンツを揃えられたものだと思います。
監督も選手も戦術も渋い。何も特別でないところに、かえって特別感があります。
「イスコ2/3」による2つの顔
ビンテージ級の芳醇な香りを漂わせるのが、このチームの10番(背番号は22)のイスコです。34歳のベテランです。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
