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「怖いくらい順調」だった長崎に何が起きたのか。誤算の連鎖と、反撃の輪郭

2026.09.15

V・ファーレン長崎、西果ての野望#7

2018年に「長崎スタジアムシティプロジェクト」を立ち上げた時、遠い夢物語に過ぎなかった。それから6年でJリーグの1つのモデルケースになるような大型複合施設は完成し、チームは2度目のJ1昇格を果たした。しかし、まだ夢の途中。長崎という地方都市を舞台に、J1での躍進、そしてその先にあるACL出場を想い描く――番記者・藤原裕久が西の果ての野望を現在進行形で伝える。

第8回は、「怖いくらい順調」だった開幕前から一転、故障者の続出、コンパクトな編成、過密日程、夏の暑さが重なって苦戦を強いられたチームの現在地に迫る。個々の判断は間違っていなかったはずなのに、なぜ綻びは連鎖したのか。そして、主力の復帰と補強を追い風に、長崎はいかにして反撃の糸口をつかもうとしているのか。

「怖いくらい順調」も、開幕1週前に狂い始めた歯車

 「これだけケガ人が少ないのは初めてじゃないかな。怖いくらい順調だと思います」

 リーグ開幕を前に、チーム関係者は目を細めてそう言った。事実、そこまでのチーム作りは実に順調だった。例年より早く、始動直後から戦術やフォーメーションの練習に入り、1次キャンプでは涼しい気候のオランダでレベルの高いチームと対戦。選手もスタッフも大いに刺激を受け、チームスローガンの1つである「長崎から世界へ」という意識も大いに高まっていった。

 1次キャンプ後、チームは8月開幕の暑さ対策として沖縄へ移動し、Jクラブとのトレーニングマッチで調整し、長崎へと帰還する。この時点でマテウス・ジェズスのケガこそあったが、それ以外に大きな負傷者はほぼなし。マテウスの離脱も、彼への依存度を軽減することに取り組んでいたチームにとって、深刻な問題とまではなっていなかった。

 ACL出場を目指してJ1に乗り込んだ長崎の船出は、誰の目にも穏やかなものに映っていた。だが、怖さが顔をのぞかせたのは、その直後である。

Photo: Hirohisa Fujihara

 開幕1週間前、非公開のトレーニングマッチで、開幕スタメン候補が並んだチームがスコア面でも内容面でも完敗を喫してしまう。「良いところもあったけど、走れていないように見えた」とは、その試合を見ていた関係者の評である。さらに、この一戦でケガ人が続出してしまった。

 それでも、この時点ではまだ対応は可能だと思われていた。開幕直前に一度調子が落ちるのは、元から想定済みである。ケガ人が直前に相次いだのは懸念だったが、症状が重くない選手も多く、序盤さえ乗り切れれば徐々に選手が復帰してくるという読みもあった。開幕を直前に控えた選手たちの心境も同様である。

 「キャンプでうまくいっていない方が危機感を持って臨めますし、うまくいっていれば、それが自信になる時もあるので難しいところです。ただ、僕たちがチャレンジャーであることに変わりはない。僕は毎年、いろいろなチームでリーグ開幕戦を戦ってきた経験がありますが、どこであっても一戦一戦に懸ける思いがあってこその上位だと思います。なので、上を見過ぎずに、それでいて目標は高いところに置いて、上を目指していきたい」(山﨑凌吾)

 まず開幕戦を乗り切り、その流れも生かしながらプレーできる選手で序盤をしのぎ、チーム状態が整うのを待つ。この時点では、誰もがそう考えていた。そして実際に、マテウス・ジェズス、保田堅心、中村慶太、鍋島暖歩、ノーマン・キャンベルといった選手を故障で欠きながらも、チームは開幕となった京都戦を勝利でスタートする。狙い通りの攻撃でリードを奪い、後半にやや反撃されたものの、反撃を1点に抑えての白星発進だ。

故障者、コンパクトな編成、過密日程。綻びが連鎖した理由

 だが、苦戦につながるドミノが倒れ始めたのは、そこからだった。

 京都戦で、半年ぶりに長期故障による離脱から復帰し途中出場したエメルソンがこの試合で再び負傷。続く岡山戦では、体調不良で新戦力の土肥幹太が欠場し、腰を痛めたチアゴ・サンタナがベンチスタート。さらに開始23分でCBのエドゥアルドが負傷交代となってしまう。その影響もあり、戦力的に優位と見られていた岡山戦では球際、強度、走力で相手に上回られ0-1で今季初黒星を喫してしまう。チアゴは第3節の柏戦でスタメンへ復帰したものの、この試合でも後半に大南拓磨が負傷交代。ゲームもカウンターとセットプレーで一矢報いるシーンはあったが、攻守で相手に主導権を握られて2-4で敗れてしまった。主軸も新戦力も欠く状況の中で、チームは各ポジションをギリギリでやり繰りする状態へと陥ってしまう。

Photo: Hirohisa Fujihara

 ホームでの立て直しを狙った第4節のFC東京戦でも相手ペースを打開できぬまま3連敗。続くG大阪戦を2-2として立て直しを感じさせたものの、第6節の神戸戦で再び完敗となり、リーグ6試合で1勝1分4敗。開幕時の高い目標とは裏腹に、苦しい戦いに陥ってしまった。

 ここまで苦戦した最大の原因は、やはり開幕直前からのケガ人続出に尽きるだろう。チームは、今季から新たなフィジカルコーチを迎え、チーム内を3つのグループに分けてコンディション調整を図り、それがうまくいっていた中でのアクシデントである。だが、その前からアクシデントへの伏線はいくつか存在した。

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Profile

藤原 裕久

カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。

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