消えた「3人目の動き」。シティ対アーセナルが映した“コンビネーションの魔法”を失いつつある現代サッカー
新・戦術リストランテ VOL.129
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第129回は、コミュニティシールドでアーセナルに完敗したマンチェスター・シティの分析。マレスカ新体制のシティはグアルディオラ時代を継承する可変[3-4-3]を採用していたが、アーセナル相手にその優位性は限定的だった。それ以上に気になったのは、攻撃における3人の連係がほとんど見られなかったこと。現代サッカーはなぜ個の突破へ傾いているのか。戦術的な視点からその背景を探る。
可変[3-4-3]が生み出せなかった優位性
コミュニティシールドでライバルのアーセナルに0-3の完敗を喫したマンチェスター・シティ。30秒経たないうちに先制点を決められ、追加点も取られて前半で2点のビハインドとなり、後半はチャンスも作りますが3点目を入れられてしまいます。
マレスカ新監督になっての大きな変化は今のところなさそうで、前任のグアルディオラ路線をそのまま引き継いでいる印象です。もともとシティのコーチでもありますし。
守備はマンマークのハイプレス、攻撃では可変しての[3-4-3]が特徴です。攻撃の可変は左SB(オライリー)が左MFになる形で中盤の構成は菱形です。バルセロナ由来のペップ方式は[4-3-3]と[3-4-3]が基調。その2つを併用しています。
中盤ダイヤモンドの[3-4-3]は攻撃力が高く、特にゾーンの[4-4-2]に対しては強い組み方になります(下図)。

アンカー(コバチッチ)とトップ下(フォーデン)が、それぞれ相手の2トップの背後、2ボランチの背後にポジションを取れますし、左右のMFが相手CBとSBの間のスペースに侵入することもできます。
クライフ監督時代のバルセロナがこれで、当時はマッチアップの優位性がありましたが、現在はそうでもありません。相手がずれを修正してきた時点で噛み合わせの優位性はなくなります。近年はマンマーク気味に人を抑える守備傾向にあるので、システムそのものの優位性はあまりないと思います(下図)。

アーセナルはホーランドとCBの1対1にしたくないので、フォーデンがフリーになっているケースはありましたが、それもずっとではない。相手がマッチアップを合わせてくるなら1対1を制してしまえば優位性を作れますが、アーセナル相手だとそれもなかなか難しそうでした。
新加入のアンダーソンはポジション的にフィットしていない感じで、単にコンディションの問題もあるかもしれませんが、攻撃面であまり冴えがなかったですね。コバチッチも悪くなかったけれども、このポジションならロドリなのだろうなと。トップ下のフォーデンも無難に捌いていましたが大きな脅威にはなっていませんでした。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
