REGULAR

フランクフルトはいわきを「非常に革新的」「タレントファクトリー」と評価。ブンデス名門と結んだ戦略的提携の舞台裏

2026.07.31

いわきグローイングストーリー第19回

Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を伝える。

第19回は、いわきFCが6月28日に公表したドイツ・ブンデスリーガの名門アイントラハト・フランクフルトとの「戦略的パートナーシップ」締結について。大倉智社長の言葉から提携の背景と狙いを探ってみたい。

 2026年6月28日、いわき芸術文化交流館アリオスで行われた新シーズンに向けたキックオフイベント。いわきFCの大倉智代表取締役がステージ上で発表したのは、ドイツ・ブンデスリーガの名門アイントラハト・フランクフルトとの「戦略的パートナーシップ」締結だった。

 J2クラブとブンデスリーガの1部クラブ。規模だけを見れば『なぜ?』と映るこの提携は、単なる話題作りのための業務提携ではない。契約は2026年5月1日付で正式発効し、期間は4年間。スカウティングと選手育成における共同アプローチ、活発なスポーツ面での交流、そしてクラブ組織のさらなる発展という、実務に踏み込んだテーマが並ぶ。発表後の大倉社長への取材をもとに、この提携の背景と狙いを掘り下げたい。

注目されたのは若手が育つメカニズム

 大倉社長がまず口にしたのは、発表に至るまでの率直な驚きだった。フランクフルト側からいわきの取り組みは『非常に革新的』で、いわきは『タレントファクトリー』だという評価を受けたという。

 タレントファクトリーという言葉が指すのは、単に若い選手が多いということではない。大倉社長はこう説明する。フィジカル強化を中心とした独自の育成の仕組みそのものが選手を成長させている構造——その「仕組み」を彼らが評価したのだと言う。平均年齢の低さはあくまで結果であり、フランクフルト側が注目したのは若手が育つメカニズムの再現性だったということになる。

 交渉が始まったのは2025年6月ごろだったという。フランクフルトには元日本代表の長谷部誠が長く在籍し、現在も堂安律、小杉啓太、神代慶人の3人が所属するなど日本との縁が深いクラブだが、今回の接触はそうした日本人人脈経由ではなく、詳細については回答がなかったが、ヨーロッパ側の人物からの働きかけだったと大倉社長は明かす。

 そこから1年以上の時間をかけて、大倉社長自身が数回フランクフルトを訪れ、クラブの理念を伝え続けた。ブランドムービーをドイツ語化して持参し、いわきというクラブがどういう存在なのかを言葉を尽くして説明する——地道な信頼構築のプロセスがあったからこそ、今回の締結にたどり着いたという。

大倉智代表取締役(Photo: ©IWAKI FC)

得られる恩恵は「スカウティングの仕組み」と「世界基準の身体づくり」

 具体的にいわき側が得るメリットとして大倉社長が挙げたのは、大きく二つ。ひとつは、世界的なネットワークを持つフランクフルトのスカウティングシステムへのアクセスだ。「僕らが今まで届かなかったような情報が届くようになる」と、情報網の拡大への期待を語る。

 もうひとつがスポーツサイエンス領域での連携だ。フランクフルト側の先進的なコンディショニング手法やデータとの接続によって、いわきが掲げる「世界基準の身体づくり」の基準そのものが可視化されていくのではないか、と大倉社長は見ている。

Photo: ©IWAKI FC

 一方でフランクフルト側の狙いは、日本市場の正確な情報を得ることにある。

……

残り:2,644文字/全文:4,097文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

近藤 健多朗

1999年、愛知県生まれ。幼少期から高校卒業までプロサッカー選手を目指したものの、怪我により断念。大学卒業後は一般企業で勤務していたが、サッカーへの情熱を捨てきれず一念発起し、ライターに転身。現在は『エル・ゴラッソ』にて、いわきFCおよび福島ユナイテッドFCの担当記者を務める。

RANKING