カラバオ杯決勝の反省を生かすシティ対策も一歩及ばず。プレミア天王山を落としたアーセナルの誤算
せこの「アーセナル・レビュー」第19回
ミケル・アルテタ監督の下で一歩ずつ着実に再建を進めているアーセナル。その復活の軌跡をいち“グーナー”(アーセナルサポーターの愛称)でありながら、様々な試合を鋭い視点でわかりやすく振り返っているマッチレビュアーのせこ氏がたどる。第19回では、プレミアリーグ第33節で実現した優勝を争うマンチェスター・シティとの直接対決を振り返っていく。
右も左も。シティの多様なプレス回避
付かず離れずの優勝争いが続いているプレミアリーグは第33節に一つの山を迎えることとなった。首位を走るアーセナルは4冠の可能性を持って3月を迎えながらも、カラバオカップ決勝、FAカップ準々決勝と立て続けに敗戦。CLでは準決勝に駒を進めたがリーグ戦では負傷者の多発もあり、ややパフォーマンスは下降気味だ。
一方の2位マンチェスター・シティは苦しい前半戦を経ながらも、昨季に続き冬の補強も追い風となって立ち直りつつある。CLではラウンド16で敗退したものの、すでに手にしたカラバオカップを含めた国内3冠を狙っている最中だ。
順位表で優位に立つのは、1試合消化が多いながら勝ち点6を上回るアーセナル。だが、直近の戦いぶりではシティが上。カラバオカップで直接対決に敗れているということもあってか、注目の大一番の立ち上がりはまず敵地に乗り込んだアーセナルが仕掛けていく格好となった。ギミックを施したのはプレッシングのところ。もともとアーセナルは高い位置からのプレスを武器としているが、この試合ではより徹底。GKドンナルンマにプレッシャーをかけるCFハヴァーツを起点にハイプレスを敢行する。
ハヴァーツはドンナルンマの右足側からプレスに行き、シティのボール保持を左サイドに誘導していく。ドンナルンマは足下があまり得意ではないということもあり、寄せ自体は比較的ゆっくり。どちらかと言えば蹴らせて回収するイメージを持っていたと言えるだろう。
シティにとって一番効果的なのは、そのハヴァーツの背中を使える形。右CBフサノフまでパスをつなぐことができれば、左ウイングのエゼは右SBヌネスとの挟み撃ちにされる格好となる。早々に右サイドから前進したように、シティはボランチにボールを一度当てながらハヴァーツの背中にボールを送っていった(下図)。

誘導する左サイドに乗っかるケースもある。CBグエイ、SBオライリーなどが低い位置からボールを持ちつつ、相手のプレスを自陣側に誘導。特に狙い目にしたのは右ボランチのスビメンディ周辺で、右ウイングのマドゥエケや、トップ下のウーデゴールを手前に引き出しながら、左ウイングのドクやオライリーが左のハーフスペースに入ることで、アーセナルのプレスの切れ目を作っていった(下図)。

オールコートマンツーマンを支える2つの強み
とはいえ、ドンナルンマは毎回このパスを敢行できるわけではない。下手にリスクと隣り合わせになるくらいなら、とっととCFのハーランドに当ててしまうこともできるシティだが、このような多様なプレス回避のプランを持っているのはアーセナルにとっても織り込み済み。単純なスライドの速さでサイドに追い込むことで、いつものシティならばつなげているような場面でも捕まえることができる。
実質オールコートマンツーマンに近いような守備で腹を括ることで、敵陣でボールを奪ったアーセナルは素早く縦にボールをつなぎ、2つ3つのパスから一気にゴールを狙う。特にハヴァーツはかなり背後へのランの意識が強く、手数を少なく完結させにいった。
特にカラバオカップではシティ相手に無得点で終わったため、アーセナルはどう点を取るかという答えの提示が必要だったが、その回答となるのだろう。もちろん、シティ相手にこの戦い方はリスクがある。掻い潜られてしまう危険性はかなり高い。だが、アーセナルにとってはこの戦い方を選ぶ上で他のチームよりも不安要素を低減できる強みがあった。
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Profile
せこ
野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。
