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スタートダッシュ成功のはずが――堅守・四方田トリニータはなぜ崩れたのか?

2026.04.02

トリニータ流離譚 第35回

J3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第35回は、開幕3連勝から一転して訪れた急失速を追う。完璧なスタートに見えた3連勝は、本当に順調だったのか。堅守を支えていた構造はなぜ崩れたのか。負傷者の影響か、それとも戦術の未成熟か。四方田体制に起きている“歪み”を読み解く。

「後出しの優位」――清武投入が成立させたゲーム運び

 開幕からホーム3連戦をいずれも2-0で3連勝と、好調なスタートを切った大分トリニータ。今季スタートした四方田修平監督が率いる新体制の下、吉岡宗重SDの掲げる「湧き上がるフットボール」をピッチで体現すべく、チーム始動から一貫してスタイル浸透を進めてきた。

 だが、快調だったのはそこまでで、今季初のアウェイゲームだった第4節のロアッソ熊本戦に1-3で敗れると、そこからは急激に失速。第5節の鹿児島ユナイテッドFC戦は0-0でPK戦にもつれ込んだ末に辛勝したが、第6節のテゲバジャーロ宮崎戦、第7節のFC琉球戦、第8節のレノファ山口戦で3連敗を喫する。特に琉球戦と山口戦では立て続けに3失点し、熊本戦と合わせるとここまで8戦中3試合で守備の課題が露呈した。

 第3節までクリーンシートを継続していた守備が、現在はどうして崩壊しているのか。

 開幕3連勝の内容も、決して盤石とは言い難かった。始動から通常よりも短いプレシーズンで準備した新体制のチームが最初から完璧なゲームを披露できるわけがない。それでも結果が出ていたことは、戦術浸透の追い風となっていた。

 期待に胸を躍らせながら迎えるはずだった第1節が、10年ぶりの大雪に見舞われ、試合当日の朝に急遽開催中止に。そのため第2節のギラヴァンツ北九州戦が、四方田トリニータの初陣となった。

 北九州は今季、最終ラインを中心に大幅に戦力が入れ替わり、増本浩平監督体制で昨季まで積み上げてきたスタイルの土台を再構築しなくてはならない状態。その後、第6節まで6連敗となったことが物語る通り、この時点ではチームが未成熟で、まだ思い描くようには戦術を遂行できなかった。その差もあり、迷いなく戦える大分の方が球際やスピードで上回る。中央突破を狙う北九州のトップ下や縦関係になるボランチをケアして攻撃のスイッチを入れさせず、ショートカウンターで好機を量産した。

 第3節はJ3から復帰してきたガイナーレ鳥取とのミラーゲーム。最初は大分が鳥取を押し込んでいたが、徐々に鳥取の選手たちが大分のスピードや勢いに慣れてくると、逆にペースを握られる時間が増えた。フィニッシュにまで持ち込まれるシーンも複数作られたが、CBペレイラとGKムン・キョンゴンが体を張ってピンチを潰し無失点で切り抜けたかたちだ。

 鳥取戦から中2日、第4節の前に先発4人を入れ替えて臨んだ、仕切り直しの第1節・レイラック滋賀戦。遠方からの移動を伴う相手は11人全員をターンオーバーしていたが、前半はほとんどの時間帯が滋賀ペースで進む。鳥取戦の課題を踏まえ、5バックのミドルブロックを構える相手を攻略しようと準備していた大分だが、逆に相手にボールを握られる展開に。それでもシュートは打たせずに粘り強く耐えながら攻撃の糸口を探り、41分にクロスから先制してようやく流れを覆した。

 勝ちながらも、攻撃面の課題が残る3試合だった。北九州戦では主導権を握って進めた前半に得点できず、相手が修正して流れを持っていかれそうになっていた62分にショートカウンターからようやく先制。鳥取戦では5バックで構える相手をなかなか攻略できず、70分に右CKから仕留めた。滋賀戦では中盤でボールを奪ってもその先がつながらずにカウンターを発動できない場面が多発した。

 さらに、すべての試合を勝ち切る流れに持っていけたのは、後半途中からの清武弘嗣の投入があってこそだった。

……

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Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg

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