ノルウェー新王者の完成形。ボデ・グリムトがCLで証明した“北欧型ポジショナル”
新・戦術リストランテ VOL.107
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第107回は、昨季ELベスト4、そして今季CLベスト16へと躍進したノルウェー王者ボデ・グリムト。代表だけでなく、クラブもまた進化を遂げる北欧フットボール。その象徴的存在を戦術面から読み解く。
強豪4連破。覚醒ではなく、必然
CLリーグフェーズでは2勝3分3敗の23位。下から2番目でプレーオフへ。そこで昨季準優勝のインテルにホームで3-1、アウェイ1-2と連勝してラウンド16へ進出しております。ノルウェーのクラブとしては史上初です。
リーグフェーズでは6試合勝利なしから第7節マンチェスター・シティ、第8節アトレティコ・マドリー、そしてインテルの2戦と強豪相手に4連勝。突然覚醒した感があります。
ノルウェーといえば堅守速攻のイメージですが、ボデはいわば「北欧のバルセロナ」です。
守備組織も洗練されていますが、強みはパスワーク。派手なテクニシャンはいませんが止める、蹴る、キープする、といったスキルが高い。連係も素晴らしく、素早いパスワークから崩し切って得点する力があります。
メンバーはほぼ固定されていて、システムは[4-3-3]をベースに守備時には[4-4-2]に調整します。3トップは右にブロンベリ、左がミランやフランクフルトでプレーしたハウゲ、CFはホグ。MFはキャプテンのベリがアンカーで右にエブイェン、左フェット。4バックとGKも不動です。右SBショボル、左SBピュルカンもスキルが高く、プレスされてもキープする力があるのは何気に効いています。
この中で外国籍選手はGKハイキン(ロシア)、CFホグ(デンマーク)の2人だけ。編成もほぼノルウェー人で占められています。攻撃の中心になっているハウゲはアカデミー出身。ベリは父、祖父、叔父(2人)、大叔父がボデの選手という筋金入りでもちろんアカデミー育ち。エブイェン、ピュルカンもボデの育成を経ています。
ノルウェーは育成改革で成果をあげています。「人工芝革命」と呼ばれているように人工芝の導入はポイントだったようです。ボデのホーム、アスプミラシュタディオンも人工芝。天然芝に慣れていると人工芝は独特の癖があってプレーしにくい部分もありますが、イレギュラーはほぼないですし、テクニカルなプレースタイルとの相性が良いと思います。かつては武骨なタイプが多かったノルウェーが変貌した要因の1つでしょう。
[4-3-3]から[4-4-2]へ。シームレスな可変守備の完成度
パスワークが看板のボデですが、守備も洗練されています。[4-3-3]と[4-4-2]の使い分けがスムーズで、FWの守備意識が高く、全体に賢い守り方をしています。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
