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2部降格に消滅危機も…年間チケット販売数は2500枚増!総力戦のフィテッセが秘める復活の可能性

2024.08.16

VIER-DRIE-DRIE~現場で感じるオランダサッカー~#7

エールディビジの3強から中小クラブに下部リーグ、育成年代、さらには“オランイェ”まで。どんな試合でも楽しむ現地ファンの姿に感銘を受け、25年以上にわたって精力的に取材を続ける現場から中田徹氏がオランダサッカーの旬をお届けする。

第7回では勝ち点18とプロライセンスを剥奪され、2部降格どころかクラブ消滅の危機にさえ陥っていたフィテッセ・アーネムの今を、現地からレポートする。

 2024-25シーズンのエールステ・ディビジは8月9日に開幕した。35年ぶりに2部リーグを戦うフィテッセはホームにテルスターを迎えている。

 キックオフ2時間前に試合会場のヘルレドームに着くと、ファンショップの前に長蛇の列ができていた。新ユニホームのお披露目はわずか4日前。1977-78シーズンから3年間着用したシャツと似たデザインで、黄色と黒のストライプが昨季のものより太い。左袖には82年まで使った古いロゴ、首周りには最新のロゴがプリントされている。そのデザインからは過去を慈しみ、今を生きるというメッセージが伝わってくる。

 フィテッセは不死鳥のように蘇ったばかりのチームだ。6月25日、KNVB(オランダサッカー協会)は「7月9日付けでフィテッセのプロライセンスを剥奪する」と発表した。プロライセンスを失うと、この多額の負債を抱えているクラブは破産して1892年以来の歴史に幕を閉じることになる。しかし、彼らはKNVBと訴追委員会で戦うことを決意。そして8月2日にやっと、つまり開幕のわずか1週間前にプロライセンスを取り戻したのだ。

 果たして、フィテッセは存続できるのかどうか。ギリギリまでわからなかっただけに、新ユニホームの発表が遅れたのは仕方のないことだった。

フィテッセの新ユニフォームを身に纏うサポーター

新オーナー候補の出資も裏目に。春先から囁かれた破産の噂

 「流動資産が足りないフィテッセは2023-24シーズンを完走できず、破産するかもしれない」という噂は春先からずっとあった。また、彼らには「ロシアからの疑わしい資金が流入しているのでは」と懸念する声も上がっていた。特に2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻によってオランダ政府もフィテッセの資金の出どころを注視するようになり、翌月には当時のロシア人会長バレリ・オイフが辞任に追い込まれる。チェルシーの元オーナー、ロマン・アブラモビッチとの関係が深く、資金提供も受けているオイフが西側諸国の制裁リストに載った場合、トラブルに巻き込まれる可能性があることをフィテッセが嫌ったらしい。

 さらにメインバンクのINGも、フィテッセとの取引を止める方向で動き出す。その言い分は、「フィテッセの口座はロシア関連と疑われる資金が入ってくるから」というもの。オイフ自身はKNVBに対して「アブラモビッチから資金供与を受けていない」と説明していたが、オランダメディアの追求によってその存在を認めていた。クラブの口座や経理にロシアの闇が見え隠れすることから、監査法人も決算書へのサインを拒み、やはり取引をやめようとしていた。

 こうしたことが積み重なって、KNVBから10万ユーロの罰金を課せられたのが今年の2月。翌々月には勝ち点18の剥奪処分を受け、しまいには6月、プロライセンスを失ってしまった。……

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Profile

中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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