REGULAR

ファン・ダイクは世界3位。新しい統計指標HOPSから「空中戦」を再考する

2024.06.21

TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論#5

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第5回は、OPTAが発明した新しい統計指標HOPSを用いて、いまだ解明されていない部分が多い空中戦を統計データの観点から再考してみたい。

 人気解説者で、現役時代はCBとして活躍していたジェイミー・キャラガー。彼は185cmとCBの中では大柄な部類ではなかったが、激しく身体をぶつけ合うような空中戦を得意としていた。彼は統計データでブレントフォードのベン・ミー(180cm)がヘディングでの競り合いで勝利した回数が最も多いことを知り、空中戦で鍵になるのは身長だけではないと指摘。ジャンプするタイミングやポジショニング、積極性などが空中戦の成否を決定するというのが、キャラガーの主張だ。そのため彼は、「(シュート期待値と同じように)ヘディング期待値という指標が必要なのでは?」と提案している。

23-24シーズンのプレミアリーグ第21節ブレントフォード対ノッティンガム・フォレストの一戦で、左サイドのコーナーキックから得意のヘディングでゴールを挙げたベン・ミー(右)

 確かに大型ストライカーがヘディングよりも足下でのボールコントロールを好むケースも珍しくないように、空中戦の得意・不得意には「身長以外の要素」が重要になることに疑いの余地はない。しかし、空中戦の能力を測定する統計データには限界がある。今回はその限界に挑もうとするOPTAの新指標と、いまだに定量的に測定することが難しい理由を考察していこう。

OPTAが発明したHOPS

 最もオーソドックスな空中戦の指標が「90分間の空中戦勝率」と「空中戦勝率」だろう。しかし、その両方の指標はそれぞれ課題を抱えている。……

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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