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ピオーリ≒ラングニック?5年目の限界?順調に見えるミランの「先」を考える

2024.04.05

CALCIOおもてうら#10

イタリア在住30年、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えるジャーナリスト・片野道郎が、ホットなニュースを題材に複雑怪奇なカルチョの背景を読み解く。

今回は、現地の評論家やファンの一部から「限界論」がささやかれているピオーリのミラン。功績が大きい指揮官の何が問題視されているのか、片野道郎氏に解説してもらおう。

 セリエAも残り8試合。今なお優勝争いが白熱しているプレミアリーグとは対照的に、こちらは順位表の序列が上から順番に固まってきつつある。

 インテルの「スクデット・デッラ・セコンダ・ステッラ(2つ目の星のスクデット)はもはや確定して久しく、1月前には接戦だった2位争いも、3月に4連勝したミランに対してユベントスは1勝もできずに(2分2敗)大きく後退、このまま決着がつきそうだ。とはいえそのユベントスも最低ノルマであるトップ4確保はほぼ確実。

 そこから下は、今なお躍進中のボローニャにローマ、アタランタが絡んだ4位争いなど、まだまだ順位的な見どころも残っているものの、ことインテル、ミラン、ユベントスの「ビッグ3」に関しては、マスコミとサポーターの興味はピッチ上よりもピッチ外、すなわち来シーズンに向けた構想の方に向かいつつある。

30節が終了したセリエAのリーグテーブル

5年目のピオーリに向けられる「限界論」

 そこで最初の焦点となるのはやはり監督人事。インテルはシモーネ・インザーギの続投が既定路線となっているが、ミラン、ユベントスに関しては、ステファノ・ピオーリ、マッシミリアーノ・アレグリ両監督がともに2025年まで契約を残しているにもかかわらず、今シーズン末での交代も取り沙汰されている。

 ミランは先週末のフィオレンティーナ戦の試合前、パオロ・スカローニ会長が『スカイ・スポルト』のインタビューで「私はずっと、このままピオーリで行くと言ってきた。それは変わらない」とコメントし、ピオーリ自身も試合後にそれに関する質問を受けて「ミランは自ら去るような場所ではない。私はここで仕事ができることを幸せに思っているし、フルラーニ(CEO)ともモンカーダ(強化責任者)ともイブラ(オーナー代行)ともうまく行っている」と語ったことから、続投が濃厚という見方が強まっている。

 しかし、19-20にジャンパオロ監督の下で深刻な不振に陥っていたチームを途中就任で立て直し、21-22には11年ぶり19回目のスクデットをもたらした就任5年目の指揮官に対しては、その手腕に疑問を投げかける声も、マスコミや「サポーター世論」はもちろん、戦術系サイト/ブログの間でも少なくないのが実情だ。SNS上ではここ2シーズン、ミランが不振に陥ったり重要な試合で結果を出せなかったりするたびに「#PioliOut」のハッシュタグがトレンドに顔を出すのだが(これはユベントスの「#AllegriOut」も同じ)、そこで語られている中には単なる感情任せの非難だけでなく、筋の通った指摘も少なからず含まれている。もちろん戦術系ブログの内容も同様だ。……

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Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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