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ウーデゴール、そしてオスカー・ボブ。ノルウェーの黄金世代を支える育成年代での「個人トレーニング」

2024.03.24

TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論#2

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第2回は、ウーデゴールやオスカー・ボブを筆頭に近年ノルウェーで急増しているテクニカルなアタッカーを生む背景について考察してみたい。

 隣国スウェーデンの王として君臨するズラタン・イブラヒモビッチの活躍を目撃しながら、ノルウェーは長い間ヨーロッパのレベルに苦しめられてきた。

 一時期はエギル・オルセン監督の指揮下でヨーロッパのダークホースとして名を馳せ、長身のヨスティン・フローを対角のロングボールで相手のSBと競り合わせる「フロー・パス」という戦術を発明したノルウェー代表も、長くW杯の舞台にたどり着くことを阻まれてきた。オルセン監督のチームは長身でフィジカルの強い選手を揃え、堅実なスタイルで知られていた。

 しかし、今のノルウェーが輩出する選手たちは過去と大きく異なっている。

 もともと守備の名手を数多く育ててきたノルウェーは、一躍テクニカルな選手の宝庫へと変貌した。世界一のストライカーに近づいているマンチェスター・シティのアーリング・ホーランドや、女子サッカーでバロンドールを獲得したアーダ・ヘーゲルベルグのように、彼らはトップレベルのCFを育ててきた。

ノルウェー代表では29試合で27ゴールを決めているホーランド

「スペイン化する育成」と「人工芝」が生み出した特異な才能

 とはいえ、真に彼らが世界に誇れる分野はテクニカルなアタッカーだろう。

 アントニオ・ヌサ(クラブ・ブルッヘ)、クリスティアン・アルンスタッド(アンデルレヒト)、オスカー・ボブ(マンチェスター・シティ)、イサク・ハンセン=アーロン(マンチェスター・ユナイテッドU-21)、アンドレアス・シェルデルップ(ベンフィカ)ら、次世代を担うタレントが次々と出てきている。

 彼らの多くが180cm以下の小柄なアタッカーで、主にMFやFWでプレーしている。彼らのようなテクニシャンへの傾倒において、おそらくロールモデルになったのがマルティン・ウーデゴールだ。アーセナルで主将として活躍するMFは「ノルウェーの神童」としてレアル・マドリーに引き抜かれると、ヨーロッパで着実にステップアップに成功してきた。今や復権したアーセナルの攻撃をコントロールする存在として、チームを牽引している。彼の強みはテクニックと献身性で、フィジカルの差を見事に埋めている。伝統的にフィジカルを重視するスタイルから脱却し、スペイン的な要素を取り入れようとしてきたノルウェーサッカー協会の狙いは、この視点で見事に成功している。……

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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