REGULAR

シティライトスタジアムをファジレッドに染めろ!ファジアーノ岡山が期す「あの日のリベンジ」

2022.10.28

2022J1参入POスペシャルプレビュー~ファジアーノ岡山~

いよいよ30日に幕を開けるJ1参入プレーオフ。1チームだけが昇格を懸けて、J1クラブと対峙する権利を得られるこの痺れる舞台が、3年ぶりに帰ってきた。2022年シーズンのJ2リーグ3位はファジアーノ岡山。知将・木山隆之を監督に招聘し、ヨルディ・バイス、柳育崇といった新加入の実力者に加え、本山遥や田中雄大、佐野航大とルーキーたちも躍動し、過去最高順位へと躍進を遂げた。プレーオフ1回戦の相手は6位のモンテディオ山形。果たしてこの一戦はどういう展開を辿るのか。ファジアーノ岡山の番記者、山陽新聞社の亀井良平が注目の90分間をプレビューする。

ホーム・シティライトスタジアムで戦える絶対的なアドバンテージ

 確固たる自信を築いた42試合を経て、いざ勝負のステージに向かう。

 ファジアーノ岡山はJ2参戦14年目のリーグを過去最高の3位(勝ち点72、20勝12分け10敗)で終え、2016年シーズン以来6年ぶり2度目となるプレーオフ(PO)出場権を手にした。3位フィニッシュによりPO1、2回戦をホームで戦う権利を獲得。本拠地でPOに臨むのはクラブ史上初となる。

 悲願への一歩を踏み出す舞台となるのが、シティライトスタジアム(Cスタ)。中四国の交通の要所である岡山駅から徒歩圏内、陸上トラックを備える収容約2万人のスタジアムだ。県民憩いの場である都市公園・岡山県総合グラウンドの一角にあり、九州新幹線など数々の斬新な鉄道デザインを手掛けた水戸岡鋭治氏=岡山市出身=が総合デザインを監修したことでも知られる。

 澄み切った秋空の下、スタンドで大旗が悠然と揺らめき、一糸乱れぬ手拍子がピッチに降り注ぐ。サッカー専用スタジアムではないものの、いわゆるホーム感が強く出るのが大きな特長。今季のホーム1試合平均来場者数はJ2で3位となる7千人超、リーグ終盤は1万人以上の観客が何度も集結した。キックオフの笛が響くと、バックスタンドのコアサポーターが集うゲート「10」エリアを中心に、独特の一体感がスタジアムを包む。

 「サポーターの皆さんの熱を感じることができる大好きなスタジアム。体力的にきつい時もスタンドの応援で、まだまだ走ろうと思わせてくれる」。地元岡山出身の高卒ルーキーMF佐野航大は、Cスタのパワーを活力に好パフォーマンスを発揮している一人だ。

 ホームでの強さはデータに表れている。今シーズンは12勝5分け4敗と白星が大きく先行し、1試合の平均得点は1.76点(37得点)、失点は0.9点(19失点)と攻守に盤石。無類の強さを見せつけてきた。

 選手たちを力強く後押しするプラスのエネルギーは、果たしてどこから生まれるのか。

 「ファジアーノのサポーターは基本的に相手チームに罵声を浴びせない。自チームの応援に本当に力を入れ、素晴らしい雰囲気をつくり出してくれる」。こう語るのは就任1年目で昨季の11位から見事なジャンプアップに導いた木山隆之監督。スタンドに陣取る一人一人が雑念なく、純粋に愛するチームに持てる力を注ぐ。この脈々と伝わってきた独自の文化こそがその源泉なのだろう。

迎える相手はモンテディオ山形。今季“3戦3勝”と好相性を誇る!

 ホームで迎える歴史的なPO1回戦の相手は、6位モンテディオ山形に決まった。「これで今年4度目の対戦となり、少し因縁めいているなと。相手は死に物狂いで来ると思うので、それ以上の熱を持って戦うことが大事になる」。23日のリーグ最終節・東京ヴェルディ戦(●0-2)後、主力として貢献してきた大卒ルーキーのMF本山遥は表情を引き締めた。

 「死に物狂いで来る」という表現は決して大げさではないはずだ。今シーズンは4月にアウェーで1-0(審判員の競技規則適用ミスで取り消し)、8月のアウェーで2-0(4月の試合の再開試合)、9月のホームで2-1といずれもファジアーノが勝利を収めた。相当の覚悟を持って岡山の地に乗り込んでくるのは目に見えている。……

残り:1,702文字/全文:3,575文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

亀井 良平(山陽新聞社)

1986年、岡山県生まれ。玉野光南高から立命館大を経て、2010年に山陽新聞社に入社。本社運動部に所属し、これまで高校野球などを担当。2018年からファジアーノ岡山の担当記者となり、現地取材を続ける。過去に前監督・有馬賢二の1年間を追った「J指揮官の実像」などを連載。

RANKING