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風間八宏がナーゲルスマンを語る。両者のサッカーに共通する「時間の貯金」とは?

2022.08.05

『ナーゲルスマン流52の原則』発売記念企画#4

6月30日に全国発売となった、小社刊『ナーゲルスマン流52の原則』。史上最年少28歳でのブンデスリーガ監督デビューから6年、当代屈指の名将の一人に数えられるところまで上り詰めた指揮官の「 “6番”の場所で横パスしてはいけない 」「ドリブル後のパスは、ドリブルで移動した距離より長くする」といったピッチ内でのプレー原則はもちろん、組織マネジメントの方法論や価値観に至るまで彼が実践している52の“原則”に迫った一冊だ。その発売記念として、本作の著者・木崎伸也がブンデスリーガ中継の解説を務める風間八宏を直撃果たして、風間の目にナーゲルスマンのサッカーはどう映っているのだろうか。今回は、2022-23シーズンのブンデスリーガ開幕に合わせて3日間無料公開! 試合とともにご覧になってほしい。

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 また新たな風間語録が生まれようとしている。

 それは「時間の貯金」。

 1人ひとりがプレー時間をできる限り短くし、その連続によって最短で敵ゴールに到達し、最後に貯金した時間を使ってシュートを打つ――。

 「速くて無駄のないポゼッション」をやるために全員が意識すべき、風間サッカーの新しい原則である。

 風間八宏と言えば、「止める、蹴る、運ぶ、受ける、外す、見る・見ない」の6項目にこだわっていることは有名だが、今、自身が技術委員長を務めるセレッソ大阪アカデミーではさらに「時間の貯金」に取り組み、セレッソ大阪U-18は今季のプレミアリーグで7-0(対東福岡高校)や7-1(対清水エスパルスユース)などゴールを量産している。 そして7月24日から8月3日に開催された日本クラブユースサッカー選手権(U-18)では、決勝で横浜F・マリノスユースに延長戦の末に3-1で勝利し、13年ぶりの優勝を果たした。

 風間によると、ヨーロッパのトップのレベルでも「速くて無駄のないポゼッション」に挑戦しているチームがあるという。ユリアン・ナーゲルスマン率いるバイエルンだ。

 著書『風間八宏の戦術バイブル』(幻冬舎)で、バイエルンをこう称えた。

 「バイエルン・ミュンヘンは、2021年夏にユリアン・ナーゲルスマンが新監督に就任して、ゴールを目指す速度が一気に上がりました」

 「以前までバイエルンはクロスも得意にしており、中央にパスコースがなかったらサイドにいる選手へパスをしていた。ところがナーゲルスマンになってから、選手があまりサイドに広がらず、ペナルティエリアの幅の範囲で選手が前向きのままボールを受けに来る。その連続によって最短距離でゴールに迫るシーンが多く見られるようになりました」

 「クロスには『前向きに走り出すタイミングを合わせやすい』というメリットがありますが、『ボールがサイドに動いている間に、相手DFに陣形を整える時間を与えてしまう』というデメリットもあります」

 「ナーゲルスマンのバイエルンはサイドを第一優先とせず、中央を取りにくるので、DFに体勢を整える時間も、周囲を確認する余裕も与えません。相手DFラインはバラバラのまま戻らざるをえない。すなわちレバンドフスキやトーマス・ミュラーが使える『背中』がたくさんできる。今、世界で最も『センターバックを攻撃する』という原則を徹底しているのはバイエルンだと思います」

 ボールを大事にするポゼッションサッカーでありながら、ゴールへ最短距離で迫ろうとするサッカーとはいったいどんなものなのか? 風間にナーゲルスマン率いるバイエルンの可能性と課題について、話を聞いた。

「グラウンドのサイズは自分たちで決める」

――拙著『ナーゲルスマン流52の原則』では、ナーゲルスマンの発言をもとに「最小限の幅」の原則を紐解きました。風間さんはブンデスリーガの中継で早い段階から「ナーゲルスマン率いるバイエルンはペナ幅で攻める」と指摘していましたね。試合を見ていて、すぐにこの原則がわかったのでしょうか?

 「見ればわかりますよね(笑)。まあ、目がシステム論に振り回されていると、見えづらいかもしれません。結局、今のサッカーは何を争っているかというと『時間』なんですよ。……

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Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。