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女子チーム所有か、資金提供か。ブンデスクラブと女子サッカー界の関係

2020.08.01

 2020年6月、ドイツ女子サッカーの名門クラブ、1.FFCフランクフルトがアイントラハト・フランクフルトと統合し、長谷部誠や鎌田大地が所属するアイントラハト・フランクフルトの女子部門として活動していくことが発表された。

 1.FFCフランクフルトはかつて熊谷紗希や安藤梢、田中明日菜、大儀見(永里)優季、そして横山久美ら、なでしこジャパンに名を連ねた選手たちが所属し、2015年にはUEFA女子チャンピオンズリーグで優勝するなど、1998年の創立からドイツサッカー界を牽引してきたクラブの1つだった。

 この数年、フランスやイングランドのクラブが本格的に女子サッカー部門に資金を投じ始めた。ドイツ国内のクラブも、競争力を確保するためにそれなりの資金が必要になった。女子サッカー単体のクラブで欧州トップレベルを維持し続けるのは困難になったのだ。

女子CLで戦うにはどれほどの資金が必要か

 では、欧州でトップを戦うためにはどれぐらいの資金が必要になるのだろうか。7月15日の『シュポルトビルト』は、ブンデスリーガ各クラブが女子部門に割いている予算を紹介した。

 現在ドイツ女子サッカー界で先頭をひた走るボルフスブルクの予算は、約700万ユーロ(8億7000万円)と見積もられている。親会社がフォルクスワーゲンということもあり、欧州でのプレゼンスを高める投資として潤沢な支援を受けている。

 続くバイエルンは350万ユーロ(約4億3000万円)と半分の規模だ。いずれも今季の女子CLではベスト8に進出しており、日本円換算で4億円程度が目安になりそうだ。

 女子ブンデスリーガで戦うレバークーゼンとフライブルクは150万ユーロ(約1億9000万円)、ホッフェンハイムは100万ユーロ(約1億2500万円)。今季1部に昇格を果たしたブレーメンは80万ユーロ(約1億円)、2部に降格したケルンは約60万ユーロ(7500万円)と、ドイツ女子1部で安定して戦うためには、毎年およそ1億円前後の予算を組むことが目安となる。

 今季から参入するアイントラハト・フランクフルトは、300万ユーロ(3億7500万円)と優勝争いを狙えるだけの予算を組んでいる。名門復活に向けて、ドイツをはじめ各国の代表選手を獲得し、虎視眈々と準備を進めている。

ブンデスのクラブにも様々な動きが

 2部に目を向ければ、ボルシアMGは30~40万ユーロ(約4000万~5000万円)、ビーレフェルトが30万ユーロ(約3750万円)、今季から2部に昇格し、本格的にプロ化に向けて動き出す予定のRBライプツィヒは60万~80万ユーロ(約7500万~1億円)程度の予定を組むと見られている。

 女子3部のレギオナルリーガを4位で終えたウニオン・ベルリンは約20万ユーロ(約2500万円)となっており、2部で戦える予算は5000万円程度が目安となりそうだ。

 シャルケとアウクスブルクはアマチュアレベルのチームを運営しており、毎年数百万円程度の支援を行っている。ドルトムント、マインツ、シュトゥットガルト、ヘルタにいたっては女子部門を持っていない。

 ヘルタは2009年から2016年にかけてベルリン女子サッカー界の古豪である1.FCリュバースとパートナーシップを結び、ブンデスリーガ2部昇格まで支援したものの、2016年に契約を解消してしまった。資金難に陥っていた女子部門は、紆余曲折を経て解散する憂き目に遭っている。

 そのヘルタは、今年から隣町のトゥルビネ・ポツダムへの3年に渡る資金的支援を発表。金額は数千万円程度と見られている。ポツダムはかつて永里姉妹(永里優季・永里亜紗乃)が所属し、女子CLにも2度優勝している旧東ドイツの古豪クラブだ。

 ヘルタのマネージャーであるインゴ・シラーは「我われは女子サッカーのために何か支援をしたかった。その際に、隣町のトゥルビネ・ポツダムへの支援のことが頭にあった。もしヘルタが女子チームを作るようなことがあれば、地域の女子サッカー界の均衡を壊してしまうことも考えられたからだ。このパートナーシップによって、女子ブンデスリーガ唯一のドイツ東部のクラブの上位進出を支援することになる」とコメントを寄せた。

 3年という区切りを決め、資金援助やマーケティングの支援という間接的なサポートに回ったのは、おそらくリュバースとのパートナーシップでの失敗が頭にあったからだろう。

 このヘルタのように、ブンデスリーガのクラブが女子サッカークラブの“スポンサー”に回るアイディアなど、資金が回る仕組みが整えば、閉塞感が漂いつつある女子サッカー界に弾みをもたらすかもしれない。


Photo: Getty Images

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。