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リーガ終盤、相次ぐ更迭劇。監督交代の効果は得られるのか

2020.07.05

 終盤を迎えたリーガで、監督の更迭が相次いでいる。

不振が招く解任劇

 まず6月21日、ベティスがルビを解任した。再開後の初戦でセビージャに敗れ、グラナダと引き分け、アスレティックに敗れてUEFAヨーロッパリーグ出場権が遠のいたことが原因だ。

 我慢がきかないのはこのクラブの常であり、昨季セティエンを切った時と同じである。後任はクラブの生え抜きで、スポーツディレクター(SD)を務めていたアレクシス。就任直後のエスパニョール戦に勝利したが、その後レバンテ、ビジャレアルには一方的に敗れた。

 7月3日現在、13位で勝ち点37、今季は降格圏のラインが40を切りそうなので降格はないだろうが、悲しいシーズン終了になりそうだ。

 6月27日にはエスパニョールがアベラルドを解任。最下位を抜け出せなかったものの、再開後は1勝1分2敗で、契約更新のオファーを出した2日後の電撃解任だった。理由は7試合を残して(解任時)、残留に最後の望みを繋ぎたい、というものだろう。

 だが、こちらも後を継いだSDルフェテがカンフル剤となることはなく、レアル・マドリーとソシエダに連敗。残り5試合で残留圏まで10ポイント差と後がない状況だ。

バレンシアの解任は“日常茶飯事”

 6月29日にはバレンシアがセラーデスを解任した。再開後にレバンテと引き分け、Rマドリーに敗れ、オサスナには勝ったがエイバル、ビジャレアルに連敗すると、気が短いことで知られるオーナー、ピーター・リムの堪忍袋の緒が切れた。

 後任は、なんと6度目のリリーフ登板となるチームマネージャーのボロ。これまで何度も前任者以上の成績を挙げてきたが、就任初戦はアスレティックに敗れた。主力のロドリゴ、ガヤがケガで今季絶望となるなど、本来の目標であるUEFAチャンピオンズリーグ出場権どころか、EL出場権も危うくなってきた。

 とはいえ、この解任はそんな成績以上の亀裂をクラブに生みそうだ。セラーデス解任直後、セサルSDが辞任した。これは前監督の留任をチームに伝えた数時間後に頭越しで解任されたことに対する抗議だった。

 監督の人事は本来SDの管轄だが、このクラブに関してはオーナーがトップダウンで決定する、ということが改めて明らかになった格好だ。

 2014年7月にオーナーに就任して以来、ピーター・リムが解任した監督は7人に及ぶ。まず、続投が決まっていたピッツィを解任してヌーノを就任させた。そのシーズンはCL出場権を獲得したものの、翌シーズン途中にヌーノが解任される。

 後任は驚きのガリー・ネビル。マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドも監督未経験では急場しのぎにもならず、やはり途中解任。後任のパコ・アジェスタランは翌シーズン早々に解任され、後任プランデッリも途中解任となり、ボロがシーズンを終える。

 2017-18シーズンはマルセリーノが就任し、CL出場権を獲得。2年目の昨季はCL出場権とコパ・デルレイ優勝を成し遂げ、やっと理想の監督を見付けたかに思えたが、今季開幕後にフロントと対立すると電撃解任され、後任のセラーデスの手でここまで来ていた。

 当然上がったオーナーへの批判に対し、娘のキム・リムが「クラブは私たちのものだから、何をしても構わない」と反論して火に油を注ぐなど、クラブ周辺には不穏な空気が漂っている。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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