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アンダルシアにまたオイルマネー。アルメリアにサウジのオーナーが

2019.08.10

国外の富豪がアンダルシアに目をつける理由

 岡崎慎司が加入したマラガに次いで、アンダルシアのクラブがまたオイルマネーの支配下に入った。2日、サウジアラビアの富豪トゥルキ・アル・シェイクが、2部に所属するアルメリアの株を買収し筆頭株主に就任したのだ。これで中国人オーナーのグラナダ、カタール人オーナーのマラガに続き、外国人がスペイン南部アンダルシア州のクラブのオーナーになるのは3人目となる。

 なぜアンダルシアなのか?

 マラガ、グラナダ、アルメリアに共通するのは、太陽、フラメンコ、闘牛、オリーブ、情熱的な風土でいかにも外国人がイメージするスペインにぴったりであること、ビーチや旧市街など観光資源が豊富で大勢の外国人ツーリストが訪れる街であることだ。アルメリアの新オーナーは、この1月には、パンプローナの牛追い祭り(「牛追い」と呼ぶが、実際には人が牛に追いかけられるのである)をサウジアラビアで開催する、とぶち上げたことで有名になったほどのスペイン好き。サッカークラブを持つのならスペイン情緒あふれるアンダルシアで、となったのだろうし、リゾート地として開発できるというビジネス的な野心もあったのかもしれない。

 サッカークラブ単体では、1部リーグ生活がわずか6シーズンと伝統がなくホームタウンも人口20万人ほどのアルメリアに、投資するほどの魅力があるとは思えないが、気候が温暖で長い海岸線が続くアルメリア県のリゾート地としてのポテンシャルは非常に大きい。こうしてみると、暑さと寒さが厳しい内陸の観光資源も乏しいバジャドリーのオーナーにロナウドが就任したのは、やはり純粋なサッカー愛ゆえ、ということになるのだろう。さすがである。

外国人オーナーが失敗するパターンは……

 リーガとの関連で言えば、このサウジアラビア人オーナーは、あの、昨年冬にサウジアラビアの選手がスペイン1部、2部のクラブに大量移籍した際のキーマンであり、過去にはエジプトのサッカークラブを経営した経験もある。もっとも「過去」と言っても、ほんの数日前までのことで、アルメリア買収と同時にエジプトのクラブの方は手放している。そして直ちに自らが会長に就任すると、GM、スポーツディレクター、監督を解任し、それぞれ息のかかった人物に入れ替えた。

 決断と実行の速さは、しばしば独断的であることを意味する。この点、契約書にサインをしないで岡崎を数日間待たせたマラガのオーナーと似たものを感じる(もっとも、資金繰りに四苦八苦のアル・タニと、トゥルキ・アル・シェイクでは財布の大きさが桁違いなのだが)。

 札束に物を言わせた剛腕ぶりで、地元のファン感情を無視――というのは、スペインで外国人オーナーが失敗するパターンなのだが、どうなるだろうか。


Photo: Getty Images

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アルメリアビジネスマラガ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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