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外様の登用で成功したAZやPSV。フェイエノールトはどうする?

2019.07.20

どうなる、フェイエノールトの人事

 フェイエノールトのヤン・デ・ヨング社長が7月17日、退任した。2016-17シーズンのオランダリーグで18年ぶりに優勝したフェイエノールトは一気にアヤックス、PSVとの差を縮めようとしたが補強に失敗し、戦力的にも財政的にも差は開くばかり。ジオバンニ・ファン・ブロンクホルストの後任としてヤープ・スタムが監督に就いたばかりの中、クラブ一丸となって再建を期すべき時期だが、強化責任者シャーク・トローストの肩書きも“暫定テクニカル・ダイレクター”に過ぎず、組織が心もとない。

 デ・ヨング社長が突然、フェイエノールトを去ることになり、オランダで一斉に湧き出したのが「ロバート・エーンホールン待望論」だ。2017年11月、エリック・フッデ(現オランダサッカー協会プロッサッカー部門ダイレクター)が社長を辞めたときも、今年4月、デ・ヨングに厳しい批判が浴びせられたときにも、エーンホールンは「次期フェイエノールトの社長候補」として名前が挙がっていた。

「次期フェイエノールトの社長候補」として名前が挙がる現AZのエーンホールン

 エーンホールンはロッテルダムのネプチューヌスでデビューし、ニューヨーク・ヤンキース、アナハイム・エンゼルス、ニューヨーク・メッツで大リーガーとして活躍したショートだった。オリンピックは1988年ソウル大会(ただし野球はデモンストレーション競技だった)、2000年シドニー大会に出場している。

 野球のオランダ代表監督に就いたのは2001年のこと。アメリカで活躍する元オランダ領出身の野球選手に国籍を取得してもらい、代表チームを強化する方針を定めた。年齢こそ離れているが親友のデーブ・ジョンソン(かつて巨人の三塁を守った大リーガー)をコーチに招いたのもエーンホールンだった。オランダ野球協会のダイレクターとして2011年にはワールドカップで優勝を果たし、オランダ国民を大いに驚かせた。

MLBアナハイム・エンゼルスでショートを守るエーンホールン

 エーンホールンはフェイエノールトを応援しており、サッカーが得意であることから同クラブのベテランチームでプレーしていた。フェイエノールトは彼の知名度を活かし、アンバサダーとして任命し、欧州カップ戦のアウェーゲームなどに帯同させ、スポンサーたちの応対を任せた。このように、エーンホールンとフェイエノールトとの結びつきはかねてからあった。

「サッカー以外」の血を積極的に入れたAZ

 そんなエーンホールンを社長としてスカウトしたのがAZだった。サッカー界の外から優秀な人材を呼んで成長しようとする意欲を持つAZは、2002年から14年まで男子バレーボールのオランダ代表監督を務めていたトーン・ヘルブランツが社長だった。この12年間、AZはオランダリーグ優勝を果たしたかと思えば、オーナー所有の銀行が潰れたことで破産の危機を迎えるなど激動の時代を過ごしたが、ヘルブランツの手腕もあって何とか安定期を迎えた。この成果が認められ、ヘルブランツは14年、PSVの社長に転身し、今も辣腕を振るっている。

 AZがエーンホールンに求めたのは、大リーグで育んだトップスポーツ・メンタリティーの還元、オランダ野球協会で発揮したマネージメント能力、アメリカで学んだ知識の発揮、アメリカで構築したネットワークの活用などだった。このネットワークに関しては『マネーボール』で知られるビリー・ビーンをアドバイザーとして招き、さらにアメリカで投資家を探すべくクラブをあげて営業するなど実行に移している。

 経営に関しては黒字決算を続けており、内部留保は年間予算と同等までなった。選手の売買で成功を収めているAZだが、「経営を移籍収入に依存しすぎていては危ない」と移籍市場で失敗しても大丈夫なようにうまく体力を蓄えている。

 とりわけユース育成には年間3億6000万円を投資するなど力を入れており、次々にトップチームにタレントが昇格している。2016年には最新設備の整ったトレーニングコンプレックスが開場し、さらに今年に入って室内サッカー場も完成した。

 昨季いっぱいで袂をわかったが、ジョン・ファン・デン・ブロム監督(現ユトレヒト)に5シーズンという長期に渡って指揮を任せて、スポーツ面での安定を実現させたのも功績だろう。この間、リーグ戦では3位1回、4位3回、6位1回、カップ戦では準優勝2回と好成績を残した。

 AZにはバレーボールや野球の世界で活躍した者をトップとして受け入れる度量があった。PSVはAZからヘルブランツを招いて成功した。さて、フェイエノールトは……。今後のエーンホールンの去就に注目したい。


Photos: Getty Images

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。