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見えそうで見えない光。レノファ山口の艱難辛苦

2019.05.24

J2のシーズン3分の1を終えて……

 今季を象徴するかのような、切ない終わり方だった。

 1点ビハインド、これがラストプレーかという後半49分。前線には5人が殺到している。

 誰もが放り込むしかないと思っていたシーンだったが、右センターバックのドストンはショートパスを選択。あえなくカットされた直後に終了の笛が鳴り、シーズンの3分の1が終わった。

 レノファ山口がもがき続けている。第14節を終えて3勝3分け8敗の20位。浮上できないまま3分の1が終わってしまったが、まだ3分の1でもある。J2リーグ全体の勝ち点差は詰まっており、まだまだ上位進出を諦めるような状況ではない。

 ピッチ上のプレーを切り取ってみても、そこまで悲観するような内容とは思えない。同じく残留争いに巻き込まれた一昨年、シーズン当初から迷走を重ね、監督交代によりさらなる泥沼にはまり込んだ2017シーズンに比べれば、はるかに希望のあるサッカーをしているように見える。

 しかし、結果がついてこない。アグレッシブで心躍らせるようなサッカーを披露しつつも、良い時間帯が続かず、悪い時間帯をしのぎきれず、単純なミスからの失点を繰り返し、気付けば失点数はリーグ最多だ。

 筆者は今季のタイキャンプ、プレシーズンマッチ、開幕戦をスポット記者として取材させていただき「今年のレノファは守備が違う!」という記事を書いたわけだが、この有様。早くも記者生命の危機である。石を投げるならチームではなくわたしに投げていただきたい……。

 責任を取るべく(?)、区切りとなる第14節・東京ヴェルディ戦を取材させていただいたが、この試合には今季のレノファを象徴するシーンが凝縮されていた。

最高の入り方をしながらも勝ちを拾えない現状

 この試合のレノファ山口は、ここ最近用いてきた[4-2-1-3]システムではなく[4-3-3]の布陣。プレス時にはMF池上丈二が前に出て[4-4-2]気味になる場合もあるが、中盤3枚は限りなくフラットに近い守り方をしていた。

 対する東京ヴェルディは[4-1-4-1]。レノファはこのシステムを想定し対策を練っており、センターフォワードの岸田和人がファーストディフェンダーとしてコースを制限しつつ、ウイング、インサイドMF、サイドバックが連携して相手をワイドレーンに閉じ込めていく。序盤はこの守備がはまり、主導権を握った。練習で狙っていたとおりの、懸命な縦横スライドによる積極的な守備で相手に攻撃をさせずに、勢いに乗ったまま前半13分に高木大輔のゴールで先制する。ここまでは完全にレノファの試合だった。

 しかしヴェルディも徐々に対応。25分あたりから、左インサイドMFの佐藤優平がかなり外寄りの低い位置へポジションを変え、守備の基準をずらしにかかる。このことが影響したのか、前線のプレスが少し空転し始めたレノファは徐々にラインが下がり始め、ヴェルディにペースを握り返されてしまった。ミスも増えはじめて、落ち着かない、押し返せない時間帯が続く。何度かチャンスをつくられながらも、GK山田元気のビッグセーブや維新みらスタが誇るゴールポストの活躍もあり、前半をなんとか1-0で折り返した。

 後半は再び体勢を立て直し、入りは悪くないように見えた。が、しかし、小池純輝のドリブルに対して、ここまで好プレーをみせていたCBドストンが不用意にアタック。これを交わされてフリーでラストパスを送られ、ネマニャ・コイッチのゴールにより同点に追いつかれてしまった。

 スローインからの、それほどピンチと言えない場面からの唐突な失点。士気への影響が大きそうな失点だったが、チームはくじけておらず反撃に出る。しかし55分に立て続けに決定機をつくりながら決め切れずに、再びパスミスによる被カウンターが増え始める。そしてパスミスによるカウンターからの、コーナーキックにて失点。今季のレノファは高さとCKの守備が改善されており、「セットプレー崩れ」からの失点は多かったものの、直接叩き込まれての失点は今季初だった。

 再び攻めるしかなくなったレノファは、落ち込む暇もなく再度攻勢に。75分には途中出場の吉濱遼平のクロスに岸田が飛び込み、再び同点とする。怪我から復帰したばかりの、チームの象徴である岸田の今季初得点。「逆転まである」と思わせるような展開だった。

 しかししかし、83分にはカウンターを浴びて、カウンターながら同数の状況ではあったが、PKを献上。これが決勝点となった……。

 良い形で試合に入り先制点まで挙げながら、流れを手放してしまう。耐えきったかと思えば、なんでもない場面で失点してしまう。「勝てる!」と確信するような展開に持ち込みながら、再びリードを許してしまう。最後の攻勢に出ながら、ラストプレーはどっちらけで終わってしまう……。内容はあるのに、勝てない、粘り切れない。今季を凝縮したような試合により、そして敗戦という結果によりシーズン3分の1が終わった。

 試合後会見での霜田正浩監督の第一声には、さすがに力がなかった。

 ただ質問に答えていくうちに、かなり語気を取り戻していたようにも見えた。次の試合と、残りのシーズンに向けての戦いはすでに始まっている。

水面から顔を出しつつも、なかなか飛び立てないレノファ

 しかしながら、随所に素晴らしいプレーを見せつつも、ここまで結果がついてこない要因は一体なんだろうか?

 細かい要因を挙げていけばキリがないが、個人的に一番大きな原因と思えるのがメンタル面、特に「自信」の部分だ。プレシーズンマッチや開幕戦までは、結果はともかく「こういうサッカーをやる」という決意が感じられた。ただ第2節にミスから大量失点を招いてしまったことからか、連鎖的に自信が影を潜めていったように感じる。

 例を挙げると、今季はキャンプから「リスクを負って後方からしっかりパスをつなぐ」「しかしながら難しいパスを狙うのではなく、ポジショニングとタイミングによりノーリスクでビルドアップを行う」という攻撃を志向していたはずだった。しかしながら、だんだんとGKへのバックパスを恐れ、ショートパスをつなぐことを恐れ、焦りから爆弾のようなパスを供給する。後方で余裕が作れないため、決して屈強なタイプではないFW陣に余裕のないパスを送り、無理を強いるという悪循環が見て取れた。

 縦に早い攻撃と余裕のない攻撃は違う。攻守両面において、様々な要因から様々な場所で余裕がなくなり、ミスを頻発しているのが現状ではないかと思う。会見コメントでも「やられていないのに、うまく自分たちのリズムでボールが取れないときに、メンタル的にやられているかのようなダメージを受けてしまう」というメンタル面への言及があった。

 この問題は一気に解決するというのが難しい。ボール保持については改善されつつあるので、少しずつ局面ごとの、試合結果の成功体験を積み上げていくしかないだろう。もちろん、それ以外の細かな整備も必要だ。戦術面、技術面に加えて各選手の疲労やコンディションも再確認する必要があるだろう。

悩めるチームと、悩める主将

 もうひとつ、現状を語るのに避けて通れないのがチームの心臓である主将・三幸秀稔のパフォーマンスだ。昨季はJ2屈指のアンカーとして開花し、リーグベストイレブンに推すファンや識者も多かった三幸だが、今季はミスも目立ち、なかなか観衆を満足させるプレーを見せられないでいる。

 チームと自身の現状について何を思うのか。試合後にコメントを取ることができたので、少し長くなるがほぼ全文で掲載したい。長い記事で本当に申し訳ない。

──シーズンの3分の1が終わりましたが、当然今の状況は納得いくものではないと思います。シーズン前の手応えと現状にどういったギャップを感じていますか?

「去年のようなスタートダッシュを決められれば理想的でしたがそううまくはいかなくて、負けた試合で反省をしようにも自分たちのスタイルを出せないまま負ける試合が多かったので、なかなか立ち返るところがありませんでした。

 ただ、ここ2、3戦は得点も取れているし、だいぶ自分たちのやりたいことができていました。まだまだ(プレスに)行くところや行かないところだったり、個人の戦術だったり、細かいところで詰めていかなければいけないところはたくさんあると思いますが、結果が出なくても、こうして見ている人が退屈しない、ベタ引きではない、仕掛けていくサッカーができているのは監督やスタッフ陣のおかげだと思っているので、自分たちがピッチで結果として表さないと、やっていることがすべて正しくないと取られてしまう。『もっとこうすればいい(守備的に戦えばいい?)』と思っている人もたくさんいると思うんですけど、実際に(ピッチの)中で起こっていることは違っていたりもして、自分たちがもっと修正していける部分がある。

 ただもっと自分たちが成長して、90分戦えるようにならないと結果はついてこないと思うので、そういう意味では辛い3分の1でしたけど、次に上がっていくためには必要な3分の1だったと思います」

──今日も立ち上がりは本当にいい内容だったと思いますが、それがなかなか続かないのはどういった問題があるのでしょうか?

自分たちが同じことを続けたくても、相手が変えてくればこちらも変えなければいけないですし、90分間通して自分たちの流れでいくことは絶対にできないので、そういう意味では相手に流れを持っていかれながらも(失点)ゼロで終われて、前半はうまく耐え凌げたと思います。ただ、結局後半すぐに失点しまったのは自分たちの甘さだと思うので、もう一回そこでギアを上げられるチームにならなければいけないと思います」

──失礼な質問になりますが、昨年見せたパフォーマンスと比べて、今年は自身でも納得できるプレーがなかなかできていないと思います。例えば研究されているなど、どういった要因を感じていますか?

「昨年と比べてマークも厳しくなっていますし、ピッチ内でも『29番、29番』と言われながら、常に誰かに見られながらプレーしている状態なので、自分の課題がたくさん見える試合が続いていると思います。そこを跳ね返せないとチームとしても個人としても上に行けないと思うし、自分が崩れてしまってゲームを崩してしまうような場面も多くあるので、そこをどう変えていくかが自分の課題だと思います」

──ありがとうございました。今後の巻き返しに期待しています。

 最後には失礼な質問もぶつけてしまったが、自分たちの目指すサッカーが正しいことを証明したいという強い気持ちが感じられた。チームとして、個人としてのここからの巻き返しに本当に期待したい。

最後に、今後の戦い方をどうするべきなのか?

 本当にたいへん長くなってしまって申し訳ないが、この項で終わるのでもうちょっとだけお付き合いいただきたい。

 内容はありつつも、結果としては厳しい現状を突き付けられているわけだが、それでは戦い方を修正するべきだろうか?

 3バックに変更することで泥沼の未勝利から脱出した、昨シーズンの故事に習うのもひとつの手だろう。ただ個人的には、現在のスタイルを貫いてほしい想いがある。見直すべきは方向性ではなく、ディテールではないか。今節と前節の大宮アルディージャ戦を比べてみても、後方のビルドアップ、前線の連携、プレスに行くべきところと構えるべきところなど、改善が見られた点は多くあった。結果にはまだ表れていないが、確実に積み上がってはいる。

 想いとは別の現実問題としても、この状況で守備的な方向へ舵を切れば必要以上に重心が下がってしまい、失点は減ったが得点もそれ以上に減るというジリ貧状態に陥る恐れがある。どれだけスタッフや選手が変わっても、レノファの生命線はやはり攻撃だ。どだいレノファ山口の歴史において「堅守を誇った」時代など存在しないのである。いや本当に存在しないんだ。歴代記録を見直してみて、自分でも本当にびっくりしている。

 4バックのままなのか、3バックにして一定の安心を得るのか。中盤をダブルボランチにするのか逆三角形なのか。システムの変更は些末な問題であり、結局はそれをどう用いるかだ。願わくば攻撃マインドはそのままに、細部を修正する方向へ動いてほしいが、はてさて。

 とにもかくにもシーズンの3分の1が終わった。次の3分の1と、最後の3分の1がどういう結果になるかはわからないが、退屈しない試合が続くことだけは確かではないかと思う。霜田体制2年目の挑戦は大きく躓いたスタートになってしまったが、残り試合はまだたっぷりある。今後も推移を見守り、次の3分の1が終わった頃にもう一度総括をさせていただければと思う。

 それではみなさん、Até breve, obrigado.

Photos: Jay

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レノファ山口戦術

Profile

ジェイ

1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。