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日本も参戦、ビーチサッカーW杯開幕。ルール改正が競技を根本から変えた

2021.08.22

 2年に一度の“砂上の祭典”が帰ってきた。8月19日、ロシアのモスクワで第11回FIFAビーチサッカー・ワールドカップが開幕したのだ。

 もちろん日本代表も出場している。2005年の第1回大会から全11大会に出場しているのは日本とブラジルの2カ国だけ。前回の2019年大会は日本の大躍進が話題になった。無傷の3連勝でグループステージを突破すると、14年ぶりに準決勝へと進出。3位決定戦でロシアに敗れはしたものの、2005年以来2度目の4位に輝いたのだ。

 チームの中心にいたのは絶対的リーダーの茂怜羅オズである。7ゴールを決める活躍で、日本の選手として初めて大会MVPに選出された。ブラジル代表の中心選手であるDFカタリーノも『FIFA.com』のインタビューで自分が世界一のDFかと聞かれ、「そうだと思う」と答えた後で「茂怜羅オズも凄い選手だ。彼は常にチームのためにすべてを捧げるので、評価されて当然だ」と一目を置いていた。

 その茂怜羅オズは今大会も健在だ。昨年からは監督も任されており、今大会では選手兼監督として日本代表を引っ張っている。8月19日のパラグアイとの開幕戦ではゴールこそなかったが、0-3の苦しい状況から見事にチームを逆転勝利に導いた。幸先良いスタートを切った日本には、今大会も期待が持てそうだ。

「GKの4秒ルール」とは

 だからこそ無事に開催されて良かったと心から思う。今大会はコロナ禍の影響が心配されたが、登録選手枠を12名から14名に拡大し、3日に1回のPCR検査を義務付けるなど対策を講じて開幕を迎えた。ここ2年で日常が変わってしまったのだから仕方ないことだが、変わったのは世の中だけではない。“砂の上”にも大幅な変更があった。そして、その変化が今大会を一段と面白くしている。

 11人制のサッカーは毎年のようにルール変更(一部は改悪)を繰り返しているが、ビーチサッカーも今年は大きなルール改正があった。それが「GKの4秒ルール」である。

 これまでGK(ゴレイロ)は、自陣ペナルティエリア内で4秒以上ボールを保持(手でも足でも)することができなかった。そのためペナルティエリアを少し出てから足でボールをキープして攻撃の起点になっていたのだ。しかし今年7月からのルール改正で「GKは自陣ハーフ内で4秒以上ボールを保持できない」となったのだ。

 4秒以上キープできないエリアが8~9mほど広がったことで何が変わるのか。

 このスポーツ自体が変わった(少し言い過ぎか)。5人制のビーチサッカーでは、GKもビルドアップに参加する。これまでは、GKがペナルティエリアを出た位置でボールを保持して敵のプレスを誘ってからサイドに展開する“定型パターン”があった。

 しかし、今回のルール改正でそれが封じられることになったのだ。GKは常に4秒ルールを意識することになり、ほとんどボールを保持できず、これまでのようなGKにパスを戻して落ち着くという戦術が取れない。おかげで、瞬時に攻守が入れ替わるノンストップの攻防が見られるようになったのだ。

 息つく暇もない目まぐるしい展開だ。やっている選手には少し気の毒だが、見ているファンにとっては「改善」と呼べるルール変更となった。

従来のルールではGKのボールキープが可能だったが、ルール改正で4秒以上保持できないことになった

ルール改正で戦い方に変化が

 その影響でシュート数も大幅に増加した……と結論付けたいのだが、2019年大会と今大会の日本vsパラグアイのシュート数を見ると、前回大会が両チーム合わせて98本で、今回は103本。あまり大差はなかったが、試合内容を見ると明らかにトランジションのスピードが変わった。ビーチサッカーの体験レッスンしか受けたことのない筆者が見ても違いは明白である。

 そうなると戦い方も変わってくる。開催国にして優勝候補のロシア代表(ドーピング問題でロシアサッカー連合として出場)は、アメリカとの開幕戦で第2ピリオド(編注:試合は12分3ピリオド制で行われる)から守護神を代えた。対戦相手がGKにプレスをかけないと分かり、シュート力に定評があるGKを入れて直接ゴールを狙い始めたのだ。

 延長戦の末に何とか勝利したロシアだが、同チームのDFは今大会のライバルについて聞かれると「新しいチームもいるし、ルールが変わってゲームスピードが増すので優勝候補はわからない」と答えていた。現に、優勝候補筆頭と見られていたブラジルは初戦を落としているのだ。

 今回の「GKの4秒ルール」の改正は、サッカーでいえば「バックパス禁止」の時のような、いや、それ以上の影響を与えていると思う。そんな“新ビーチサッカー”に注目したい。

 なにせ日本代表は、今大会も上位進出が期待できるのだ。そして順当に勝ち上がったら、今度こそは準決勝の壁を突破してくれるはずだ。ビーチサッカーだけに“サンド”目の正直というやつだ。


Photo: Getty Images

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戦術茂怜羅オズ

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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