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経済的損失はおよそ13億ユーロ…リーグ1各クラブのサラリー事情とは

2021.02.11

 今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で、リーグ1が被った経済的な損失は、およそ13億ユーロ(約1650億円)に上るという。

選手が減給を申し込んだ各クラブ

 無観客試合となったことで失ったチケット売上に加え、今季から3年間のテレビ放映権を獲得していた『Mediapro』 が、約束していた金額を支払えなくなって撤退する、という「泣きっ面に蜂」的な事態も重なった。

 そもそも、昨季が打ち切りになった際の経済的な損失について、学者たちは「『Mediapro』の放映権料はこれまでの約2倍の金額であるから、2019-20 シーズンのロスはそれで埋め合わせられる」と試算していた。それがご破産になってしまい、今シーズンの放映権からの収入は、リーグ1のクラブで約49%、リーグ2で40%も減少するというから相当厳しい。

 そんな中、各クラブでは選手たちが給料減額に合意する動きが出ている。RCランスは選手を含めた従業員一同がサラリーの減額に合意し、計250万ユーロ(約3億1800万円)の経費削減を実現した。

 サラリーの高い者ほど減額の割合は大きく、5~20%の減額に応じたとのこと。さらに、これは経営者側からの要請ではなく、雇われている側の自発的な申し出だったというのがまた泣ける。このニュースを報じた記事には「自分はRCランスのサポーターではないが、思わず応援したくなる」といった好意的な書き込みも見られた。

 今季の昇格組であるRCランスは、パリ・サンジェルマンやモナコからも勝ち星を奪って現在6位と、サッカー面でも大奮闘している。ちなみに今季のメンバーには、元チェルシーのガエル・カクタやPSG から期限付き移籍している19歳の期待のストライカー、アルノー・カリムエンドらがいる。

 モンペリエも選手一同が役員室に集合し、6月までのサラリー減額に応じると申し入れた。選手の1人は次のようにコメントしている。

 「自分たちは、会長を筆頭としたこのクラブに恩義を感じている。このような厳しい時に、クラブを助けるための力になれるなら、喜んでそうしたい。モンペリエは全員が同じ方向に向かっている家族的なクラブだ」

 一代で興したゴミ清掃業で得た資金を注ぎ込み、2011-12シーズンにはリーグ優勝も果たした前ニコラン会長。亡き先代の息子が現会長を務めるモンペリエは、その言葉通りの家族的なクラブだ。

経営陣と個々に話し合うクラブも

 やはり減額を申し出たスタッド・ランスの選手たちも、選手一同で声明を発表したが、文面がなかなか興味深かったので、要約してお伝えしたい。

 「現在、フランスのサッカー界は未曾有の経済危機にある。皆さんと同じように、日々ニュースを読んでいる我われ選手たちも、この状況を憂慮している。これはクラブ関係者全員に影響が及ぶ危機的な状況だ」

 「フットボールはチームワークの象徴でもある。そこでスタッフを含めた我われ選手全員は、2021年1月から6月までの給料減額を自発的に申し出た。『サッカー選手は元から給料が多いだろう?』と思われるかもしれないが、このクラブの場合は人々が想像するよりずっと少ない」

 「僕たちはよく言われるところの『ボールを追いかける億万長者』ではないんだ。ただ、この家族のようなクラブのために一致団結し、人として責任ある行動を取るにはどうしたらいいかを模索できる特権を得られるくらいの額ではある」

 川島永嗣のいるストラスブールでは、マルク・ケラー会長が選手たちと話をした後で個々に交渉する、というスタイルを取っている。

 複数年契約をしている選手や契約が今年で切れる選手など、それぞれ置かれた状況が違うため、というのがその理由で、減額に応じた1人であるMFアドリアン・トマソンは「自分は会長やこのクラブのことが好きだから応じることにした。状況はクラブや選手によって異なるのだから、自分だけが……というやっかみのような気持ちはない」と話している。

 ただ、「大きな負債の要因を作った『Mediapro』のような他者の失態の尻拭いをなぜ自分たちが?」という思いが最初はあった、と正直に吐露している。

 この他、ロリアンやボルドー、アンジェでも、経営陣と選手の話し合いが行われているそうだ。

 また、ニームのように、勝利給を一時凍結し、状況が改善した時に支払う、という策を取っているクラブもある。今季はまだ4勝しかしていないが、このせいでモチベーションが下がっているためでないことを祈りたい。

上位クラブはタイトルを最優先に

 ビッグクラブはというと、PSGは選手の減給は行っていないが、職員を一時的失業扱いにすることで経費を節約している。

 選手たちも、昨年3月の最初のロックダウンの時は一時失業扱いとなり、額面的には30%ほどの減給になった。ケイラー・ナバスは「昨年はリーグが打ち切りになったので必要な処置だったと思うが、今は試合が行われていて、そのためのサラリーを自分たちで稼いでいる。それに、今のところ何も言われていない」とコメントしている。

 ただ、台所状況が苦しいのはPSGも同じで、このコロナ禍で2億400万ユーロ(約260億円)もの損失を計上しているとのことで、レキップ紙によれば、2019-20シーズンの成果に応じて出されるボーナス、総額2000万ユーロ(約25億4000万円)はまだ支払われていないそうだ。

ケイラー・ナバスによると、PSGでは選手の減給は行われていないようだ

 リーグ上位のリールとリヨンは似たようなスタンスを取っている。「選手からの歩み寄りはありがたい」という話は選手たちにしたようだが、現時点で最優先にすべきはリーグタイトルに向けて全力を尽くしてもらうことで、減給することでその意欲が削がれるようなことは望んでいない、という意向のようだ。

 テレビ放映権については、昨年まで放映していた『カナル・プリュス』が、ひとまず今季残りの試合の権利を買い取ることで落ち着いたが、プロリーグ協会(LFP)は政府に対して経済的な救済処置を要請すると発表している。


Photos: Getty Images

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Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。